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就活は婚活?!会社の重要事項「採用」を担う人事の仕事と役割|元ラグジュアリーブランド人事責任者・青栁伸子

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このコラムでは、今まで接客販売に関することや私が受けた素晴らしい接客などについて書いてきましたが、今回は少し視点を変えて「人事部とは」「人事の仕事とは」について書きたいと思います。

今回のコラム執筆者

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合同会社NOBuコンサルティング|青栁 伸子さん

東京都生まれ。人事・総務・ITを専門分野とするコンサルタント。日系企業、日系ベンチャー企業での人事経験を経て、1999年にラグジュアリー・リテール業界へ転身。エルメスジャポン、ボッテガ・ヴェネタジャパン、フォリフォリジャパンの各社で人事・総務部門の責任者として、人材育成・組織開発・制度設計などにあたる。同時にビジネスパートナーとして、経営陣に対して人事的な側面からのサポートを行い、会社の業績向上にも寄与。特に接客販売職の「専門職」としての地位確立、処遇の改善、女性が無理なく永く働ける環境づくりなどに注力。2015年にコンサルタントとして独立。

人事部の役割とは?

皆さんの中では「人事」というと何をしている部署というイメージでしょうか?「給与を計算している」、とか「社員を採用している」と言ったところでしょうか。もちろん給与や賞与の計算、給与に関係する社会保険の諸手続きなどは、人事の大事な仕事の一つですが、実は皆さんの目に見えないところで、人事は色々な仕事をしているのです。


<1>  採用:一緒に働く仲間を探す

採用には新しい店舗がオープンする、新しいビジネスをスタートするというような「新規」採用と、様々な事情で会社を離れる社員の後任探し(リプレースと言います)があります。新規/リプレースに関わらず社員の採用が決まると、人事部が具体的に以下のようなアクションを取り始めます。

1. 採用する人のプロフィールの確定(どんなスキルや知識が必要か、年齢は?経験は?)

2. 採用を告知する媒体や採用手段の決定(Web広告、紙媒体、人材紹介会社、Direct Recruiting, Referral Recruiting(社員紹介制度)等)

3. 応募書類(情報)の受領と書類選考

4. 面接のアレンジと実施

5. 選考会議(内定・雇用条件確認)

6. 内定者への雇用条件提示と受諾

7. 入社準備

皆さんが転職を意識した時、2.で募集を目にしてから4.の面接までのプロセスがいわゆる“勝負どころ”と考えられると思いますが、会社にとっても書類選考や面接は同じように「緊張の伴う大事な場面」です。

書類選考では「本来は面接するべきだった人を見落としていないか?」と考えますし、短時間の面接で「本当にこの候補者を見極められたのだろうか?」と悩みます。埋もれている才能を見逃さずに発掘できただろうか、自分たちの会社の成長に必要な人材を見極められただろうか、と面接を受けている皆さん同様、面接担当者も緊張しつつも真剣に悩んでいるのです。

面接

新しく仲間になる社員一人一人は、会社の成長を担う大切なメンバーです。また、どんなに能力の高い人であっても、それだけでは採用内定とはできません。会社のカルチャーや方向性とあっているか、現時点で必要な人材のタイプか、他のメンバーとのチームワークは大丈夫か、などの要素も考慮して、仲間として迎え入れるかどうかを判断しなければならないのです。5. の選考会議で「とても優秀で採用したいけれど、この人は私たちの仲間には難しいね」という判断をすることもあるのです。

ですから、「履歴書と職務経歴書」は丁寧に書いてくださいね。就活は婚活でもあるのです。

この人に会ってみよう(面接に呼ぼう)と会社が判断する手段は「応募書類」しかありません。書類でNGになってしまったら、どんなにあなたにポテンシャル(可能性)があっても会社はそれを知ることができません。

今はWebからの応募が多くなり、以前のように履歴書や職務経歴書を手書きすることはなくなりましたが、応募の熱意の見えない書類はあっという間にNGボックス(会わない人ボックス)に入ってしまいます。ただ、熱意が空回りして長いだけの書類もちょっと困ります。どんな長くてもA4で3ページか4ページが適切な分量だと私は思っています。また応募書類を使い回す(複数の会社に応募する)場合には、取り扱いに十分注意してください。応募動機などに他社の社名が堂々と書かれた物を受け取ると、人事担当者のモチベーションは一気に下降線をたどり、書類はNGボックスに直行です。

また、最近は「社員紹介」による採用を積極的に行なう会社も増えてきました。例えば「今ではないけれど、いずれは……」と転職を考えていて、お目当ての会社(ブランド)がある場合には、その会社の社員と仲良くなっておくことも一つの転職活動と言えるかもしれません。もちろん「いずれは御社に入りたいのでよろしく!」ではなく、「この人と一緒に仕事をしてみたい。会社の貴重な戦力になれると思うので推薦しよう」と相手の方に思っていただけるだけの信頼関係を築き、仕事での実績をきちんとアピールしておくことが必要なことは言うまでもありません。

<2>  育成:仲間を育てて会社も成長する

社員は採用して終わり、ではありません。会社の貴重な戦力(キードライバー)として活躍してもらうために、持てる力を十分に発揮することに加えて、その「持てる力」を大きく・強くしてもらうための育成が大切です。

ほとんどの会社で行なわれている研修に「入社時研修」があります。これから働く会社のこと、組織のこと、会社で仕事をするルール、製品のこと、などの基礎知識を習得してもらいます。「入社オリエンテーション」と言っている会社もあり、「会社の歩き方」を知ってもらう会社への入口で行なわれる一番大事なトレーニングです。

その後の育成プラン(研修内容)は会社によって異なりますが、定期的にあるいはスポット的に研修を行ない、社員の成長を促します。例えば初めて管理職(マネージメント)になる社員には「マネージメントの意味や役割、必要となるマインド、必要なスキル」などを教える「マネージメント研修」を行ないます。この後述べる評価の結果「次世代の幹部候補」などに選出されたような場合には、会社の用意するプログラムでの育成が行なわれます。

会社は「社員の成長」が会社の成長と直結していることを理解していますので、育成に関わる費用は会社の将来への『投資』と考えています。同じような観点から最近では「人材」ではなく「人財」と書く企業も増えてきています。会社にとっての財産・貴重な資産と言う考えかたです。皆さんの中にはトレーニング(研修)は面倒くさい、煩わしい、と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そのトレーニング(研修)は会社にとっては投資ですので、真剣に参加してしっかりとスキルや技術を身につけ、業務で活用することで会社に貢献してください。

<3>  評価:活躍ぶりを正しく判断する、育成に繋げる

社員がどう働いているのか、会社にどんな貢献をしているのかを判断するのが「評価」です。「私、頑張っています!」とか「この社員はよく働くから」ではなく、どんな成果を出して会社に貢献したかで判断する「成果主義」評価が今は主流になっています。昔は社歴の長さで評価が決まったり、一つの部署でA評価がもらえる人は◯人と決まっていたり、どんなに実力を発揮して頑張っても昇給や賞与で一つ上の世代は絶対に抜けない、などという悲しい時代もあったのですが……。

評価

評価が適切に行なわれているか、上司が自分の好み?で評価をしていないか、他部署と比べて極端に評価が甘い(辛い)上司がいないかなど、会社全体を見渡して調整するのも人事の大事な仕事です。評価の結果は「昇給」や「昇格」、部署の異動、新しい仕事のアサインなどと直結していますので、評価される皆さんはもちろんのこと、人事でも非常に気を使って公正な評価がなされていることを確認しています。

また、評価制度自体も時代や情勢の変化、会社の成長などによって、見直しが必要になってくることもありますので、人事では今の評価制度が正しく社員の皆さんのパフォーマンスを測っているかどうかもチェックしています。また評価の結果は先ほど述べた物理的な処遇(昇給・昇格・賞与)などに結びつくだけでなく、それぞれの社員の育成プランのベースとなります。

<4>  給与計算や諸手続き 安心して働ける会社であるために

人事では、もちろん皆さんの勤怠管理や給与・賞与の支給(計算自体は外注化している会社が多くなりました)、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険など)の事務手続きも行なっています。例えば年に1回の全社員対象の健康診断は、会社に課せられた義務ですし、近年では「ストレスチェック」も一定の規模の会社では義務化されています。社員の健康管理も、社会保険関係の諸手続きも、皆さんが安心して働ける会社にするための環境整備の一環です。

また、「福利厚生」として子育ての支援をしたり、自己啓発(資格取得や語学学習)の補助を行なったり、オフィスにお惣菜やお菓子を置いたり、と様々な工夫をしています。素敵な制服があることも社員のモチベーションが上がる要因の一つと言われていますので、制服のある会社ではリニューアルの際には社内でプロジェクトチームを組んで、社員の意見を聞いたりしているそうです。こういった取り組みも人事の仕事の一つです。

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<5>  BPという役割 経営陣のパートナーとして

人事には「人事的な側面から会社を支えるビジネスパートナー(BP)」という役割もあります。普段皆さんの目には触れることのない業務ですが、今後人事の仕事で一番重要になると考えられています。

会社のビジネスを成長させるためには、社員が生き生きと、持てる力を十分に発揮して仕事に当たることが大切です。社員が能力を発揮する、社員が成長する、それによって会社の業績も伸びる。会社の成長を社員に還元(昇給や昇格、業績賞与など)して、モチベーションを高め、なお一層の成長を促す、と言うプラスのサイクルを回し続けることで、会社は順調に伸びていきます。

今まではそのための環境を整えることが人事の重要な仕事と考えられてきましたが、これからは「会社の将来を見据えた人事計画(人員・組織)をたて、そのために必要なアクションを想定して実行していくこと」、つまり攻めの人事が必要になると言われています。

例えば、

「3年後この会社がこうなっているのであれば(会社の事業計画によれば)、その時にはこんな人材が必要です。今いる社員の中で可能性がある人たちを、こんなプランで育成しましょう。」

「このビジネスプランを遂行するために、新たに人を採用するのであれば、給与制度や評価制度をもう少し競争力のある(魅力的な)ものにしておく必要があります。今からプランニングをして実行しましょう」

「今後5年間で、子育て世代に突入する社員が全体の1割になります。男女を問わず育児休業を取ってもらうために、また、育休後の復職を支援するために、こんな制度を導入しましょう」

と言うような提案を会社に行ない、将来のビジネスプランに沿って人事も戦略的に動いていく、それがBPとしての姿です。

終身雇用、年功序列で会社が運営されていた時代と今とは、企業の動きも大きく変わりました。当然人事の役割も「社員を守る」立場から「社員の成長を促して、会社の成長に寄与する」ことに変わっていきます。今までが後方支援的な手続き主体だったことを考えると、人事に求められるスキルも変わると思います。

売上を上げて利益を最大化することを目的に営業部隊は動いていますが、今後の人事は「社員の力を最大化することで、会社の利益に貢献する」ことが求められるのだと思います。

まとめ:人事の仕事は、「人と会社を育てること」

人事の仕事とは……?
私は人と会社を育てることだと思っています。コンサルタントとしての私の名刺には「人と組織と会社を伸ばす」と書いてあります。人事のコンサルタントとして、私はそうでありたいと思っています。

その会社に入社したことで、その人の人生は会社とともに変化をしていきます。そうであれば、その会社で過ごす人生がハッピーなものであって欲しいし、会社も伸びていって欲しいと思います。「この会社に入社した人は、ここで働くことで幸せになってほしいんだよね。」というのは、過去に仕事をしたブランドの社長が、ふっともらした一言です。会社のトップがこんな意識でいてくれれば、社員はまちがいなく幸せに過ごせると思います。私がこの思いを共有しながら、自分自身も幸せに過ごしたことは言うまでもありません。

給与を計算している人たち、から「社員の幸せを考える人たち」へと変わっていくこと、今、日本の人事部は大きな転換点にさしかかっているのかもしれません。

《青栁 伸子さんの著書》

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『人を幸せにするMétier お客さまを虜にする最強の接客サービス』
エルメスやボッテガ・ヴェネタなど、憧れのラグジュアリーブランド。それぞれのブランドでスタッフ育成を手がけた人事コンサルタントが、顧客の心をつかむコツを伝授する。人事のプロが贈る接客販売職への賛歌。

 

 

 

 

 

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