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㈱ユナイテッドアローズ執行役員 山崎万里子さんに聞く「仕事と育児の考え方 」|Fashion HR ワーキングママインタビュー【前編】

yamazakisama
㈱ユナイテッドアローズ(以下、UA社)最年少、女性初の執行役員で4月から新たにユナイテッドアローズ本部(以下、UA本部)副本部長に就任した山崎万里子さん。

コーポレートコミュニケーション部門や、社内アタッシュドプレスの立ち上げ、経営企画などを手掛けてこられた山崎さんは、現在一児のママでもあり、育児と両立させながら副本部長としての重責を担っています。現在の業務をふまえた山崎さんの仕事観、またキャリアと家庭を両立させるための方法論などをたっぷりと伺いました。

10年、20年、そして100年後もUAが輝く存在であるために

−この4月から新しくUA本部副本部長に就任されましたが、このUA本部とは御社の中でどんな位置付けなのでしょうか。

当社は6つの営業本部で、19あるストアブランドをそれぞれマネージメントしています。形やコンセプトは違いますが、一部のブランドビジネスを除き、多くのストアブランドはセレクトショップという業態の中でオリジナルと仕入れをミックスした商品をリテールやEC展開しています。各ストアブランドは仕入れ比率が9割のものもあれば、オリジナルが9割のものもあります。またマーケティングの視点では、ターゲット客層がハイエンドなところもあれば、ボリューム層向けのところもあります。ポジショニングはそれぞれ違いますが、基本的にビジネスモデルは同じです。

−山崎さんが在籍するのはUA本部となりますね。

はい。この本部は「UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)」(以下、「UA」)だけでなく、「UNITED ARROWS & SONS」、「THE AIRPORT STORE UNITED ARROWS LTD.」、「ASTRAET」「DRAWER」というストアブランドなどを管轄しています。ほかにBEAUTY&YOUTH本部の主力は「BEAUTY&YOUTH」で、以外に「STEVEN ALAN」などを管轄します。そして「united arrows green label relaxing」、小規模ビジネスユニットを束ねているSBU本部や、ブランドビジネスの「CHROME HEARTS」それぞれを管轄する他の本部があります。

UA (ユナイテッドアローズ 原宿本店 ウィメンズ館)

−では今山崎さんがいらっしゃるのはいわゆる会社の屋号を背負っている部署ですね。副本部長という立場ではどんなことをされるのですか?

基本的には本部長を支える役だと思います。私と本部長はこの4月に異動してきましたが、我々のミッションとは、UAというブランドが10年後、20年後、100年後もブランドとして存続し続け、輝きを増すために必要な改革を施すことといったところでしょうか。元々UAは会社を立ち上げた1989年からあり、もっとも歴史が長い事業で、長く携わる人も多いです。ブランドとして守り続ける要素も必要ですが、時代に適した変化も必要です。そこに対して、必要な改革を下すということです。例えばビジネスモデルを変えるとか、収益構造を変えるとか、事業を良くするために、「この組織はこの組み方がいいな」「ここの責任者にはこの人がいいのでは」など、どんどん変えていくということですね。

チャレンジを続ける中で感じる今の壁

−御社は1店舗で数十億円売り上げるというところもあるということですが、ほかのブランドではなかなかないことで、事例がない中で改革を進めることは難しくないでしょうか。

同じことを繰り返していくだけでは陳腐化してしまいます。どうやって変化をつけていきながら収益を上げていくのかが基本的な事業戦略ですね。

−今まで山崎さんの経歴としては、マーケティング、経営戦略などを経て、営業本部に4月から配属となったわけですが、今回就任された上で、今抱えているチャレンジ、または壁とは?

UAは当社の各事業の中でも一番知名度がありますが、収益で一番かというと、必ずしもそうではありません。やはりUAは会社の顔ですから、いい場所に店舗がなければなりませんし、高い接客レベルをキープするために教育コストもかかります。ベテランスタッフも多くいます。いいものを仕入れなければいけないので原価も高いです。ですからコストがかかる特性の事業なんです。その中でどうやってブランドをターンオーバしていくか、また競争戦略として、UAでお買い物をする方にどうやってロイヤリティを感じてもらえるかですね。

&SONS (UNITED ARROWS & SONS)

−営業の仕事と言うと、売り上げの数字や目標達成、スタッフのモチベーションのキープなどといったことを想像していましたが、それより一歩先を行く、事業戦略ということですね。

そうですね。今までは会社全体の経営戦略でしたが、それを一つの主力部門でやっていくということです。もちろん営業部門なので、売り上げも見ます。しかし、会社からは完全にスパイス要員と呼ばれているので(笑)、いい意味でみんなに混じりすぎず刺激を与えられる存在になれたらと思います。やはり改革する時って必ずしも自分たちにとって気持ちの良い決断ばかりではないはずです。あえて今やっていることを止めるとか、異質を受け入れるとか、そういうことなので、それを断行することが重要かと思います。

“時には痛みを伴う変革もしないと生き残れない”

−改革を進めるにあたって、UA本部のビジョンとは?

本部内には、ブランドとして輝きと収益性を取り戻すための内容は説明しています。簡単に言うと売り上げをどう上げていくかということと無駄をどうカットしていくか、この2つしかありません。会社からはスピード感も求められているので、月に1回言っていたことを毎週言うとか、リアクションをこれまで翌週にもらっていたものを、即座に用意してもらう、などの繰り返しだと思います。私たちがやっていることは決してウルトラC ではなく当たり前のこと。メンバーにとっては必ずしも気持ちの良いものではなくて、時には痛みを伴うものかもしれません。でも変わらない限り、生き残れません。私の希望としては、自分たちの力でここまで変われたら、あの人は出て行く、あの人に長くいてもらわないためにも、さっさと自分たちでやろうと思ってもらえればいいと思っています。

しかし、ただ単純にお金儲けしようというわけではありません。それは当社の理念に反しています。自分たちでしっかり稼いだ利益で自分たちがやりたいブランディングやお客様へのサービスに投資していくという体質に変えましょうというのが狙いです。

−これからの成長が楽しみですね。

今は小売と通販は部門が違うんですね。お客様に取って両販路使っていただいていますが、運営自体は別となります。そうすると意外と見えない壁ができてしまうんです。売り上げを取った、取られたということになってはいけないと思います。実際自分がお客様の立場だったら両方使いますよね。組織の壁でお客様が欲しいときに、欲しいものを、欲しい場所で購入できないのはナンセンス。そういうところから変革して、一番大切なお客様の立場になって小売でも通販でも気持ち良くお買い物していただけるための運営組織整備が必要なんです。

−著書の中でマーケティングの部署にいた頃、権限委譲が難しかったと書かれていますが、どうやって解決されてきたのか経験談を聞かせてください。

部下を育てるために権限委譲をするという、上から目線の考え方では絶対うまくいかないんです。自分がより成長するために、上司である自分が新しいステージに行くという強い意識が必要なんです。部下を成長させるためにこのチャンスをあげるんだぞという姿勢では、保険をかけながら、小さなチャンスを与えているだけになります。そうなるとやっぱり成長も小さい。それからもう一つ自身に言い聞かせてきたのは、自分の積み上げてきたものを手放して空っぽにして、新しいことを始めない限り、うまくいかないということです。覚悟を持って空になるからこそ次のことを頑張れると思うのです。

&SONS_ (UNITED ARROWS & SONS)

やってきたことを空にする勇気

−これまでのポジションや経験を一旦オフにして、空にするってとても勇気が必要かと思いますが。

私は産休に入る時、同じ部署に戻ってくる前提になっていましたが、すべて空にしたんです。メンバーにとっては大チャンス。その代わり私にとっては復職して何か新しいことを始めなければ、お荷物になるという状況を作ったんですね。私が決定権持ちながら、後ろから糸を引いてコントロールしているような状態ではメンバーが嫌だろうなと思って。ですから全部権限を渡してしまって、産休の間は仕事をしなくていいようにしたのです。手放さない限り次はないと思います。そういうことも既に経験してきているので、あまり怖いとは思いません。

−山崎さんのその姿勢が部下に伝わったのでしょうか。

一生懸命やってくれたんでしょうね。産休明けて戻ってきたら見事に会社が回っていたんですよ。私がいなくても仕事が回るよう産休前に手配はしていましたが、実は会社にお願いして、自宅に会社と同じネットワークを引いてもらいチェックしていました。でも家で見ていたものとは違うレベルのことをメンバーがやっていたんです。というのはあまり雑務的なものは私に連絡を入れないようにしてくれていて、それくらいメンバーが育っていたんです。それって私がいなかったからこその成長だと思うんです。

−それは社員にとっての成長でもあり、山崎さんにとっても新たな舞台での成長につなげられることになったんですね。

後編に続く>>

番外編はこちら>>

新たに始まったUA本部副本部長としての業務で、どんな改革を見せてくれるのでしょうか。成長するための山崎さんの強い思いをお聞きすることができました。後半では、UAの働きやすい環境づくりについてお話しいただきます。

(Interview : Fashion HR編集部)

今回お話を伺った山崎万里子さんの著書

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『仕事の不安を一つひとつツブしていくやり方〜五つの壁の乗り越え方』
(株)ユナイテッドアローズ最年少・女性初の執行役員の山崎万里子さんがクリエイティブ&マネジメントの極意を伝授する一冊。

 

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