みなさんは「ファッションテック」という言葉を聞いたことがありますか? 実はここ数年、ファッションテックは業界のキーワードになっています。ここでは、そんなファッションテックを推し進める企業がどんなサービスを提供し、業界に変革を起こしているのかをピックアップ。アパレル業界で働くなら知っておきたい、ファッションテックの”いま”についてご紹介します。
ファッションテックとは?
Fashion Tech(ファッションテック)とは、Fashion(ファッション)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。テクノロジーを利用したファッションアイテムの開発、物流システムの構築などを通し、ファッション界を活性化させる動き全体のことを指します。ファッションテックに関しては、すでに2013年頃から、一部で話題となっていました。
テクノロジーとは英語で「科学技術」「工業技術」などの意味です。ファッションテックにおいてのテクノロジーは、主に「IT技術」を利用しています。
具体的には、ウェアラブルデバイスとしても多くの人が利用するスマートウォッチもファッションテックの1つ。また、スマートフォンのアプリから衣服のレンタルができるサービスや、ECサイト、オークションアプリ、SNSなども含まれます。
まとめると、ファッション×IT技術を駆使したサービス、取り組みなら、それらすべてはファッションテックです。
ファッション界を大きく変えたIT技術
ファッションアイテムを購入する時、多くの人はアパレルブランドの店舗や衣料品店などで購入するしかありませんでした。しかし、最近ではオークションアプリなどを活用して商品を購入する人や、洋服を買うことなくレンタルする人などが増えてきています。
これらのファッションカルチャーの変化を可能にしたのが、IT技術です。ネットショップで時間限定のセールを実施したり、ポイント付与などで販売を促したりできるのも、ITの先端技術があってこそと言えます。
すでにITはファッションの世界になくてはならないものになっていますが、今後はもっと積極的に、IT技術をファッション界へ取り込んでいこうとするのが今の流れといってもいいでしょう。
ファッションテックで話題となった企業の一例
ここからは、話題となったファッションテック企業について、いくつかピックアップしていきます。
ZOZOTOWN|株式会社ZOZO
http://zozo.jp
ファッションテックで勢いを増すのが、ECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」で知られる旧スタートトゥディ改めて ZOZOです。ZOZOでは、着用することで自身の体型を計測できるという「ZOZOスーツ」を無料配布して話題となりました。
このゾゾスーツには特殊なセンサーが張り巡らされており、スーツを着た人は計測メジャーを使用することなく身体のあらゆる部位の採寸ができます。まさに、先端テクノロジーを活用したサービス。「サイズが合わないかもしれない…」という従来のネット通販にまつわる不安を打ち消す、画期的な改革を起こしました。
airCloset(エアークローゼット)|株式会社エアークローゼット
https://www.air-closet.com
月額で何度も洋服をレンタルすることができるエアークローゼットは、同様のレンタルサービスの中でも先駆け的存在です。レンタルサービスの概要としては、毎月低額の利用料を支払えば、一定の数の洋服を返却期限なくレンタルできるというもの。プロのスタイリストが服をスタイリングしてくれるというのも人気のポイントです。
クリーニングの必要がない、アプリでコミュニケーションが取れるなどの利便性から、忙しく働く女性たちに人気となっています。
服は自分で選んで購入するのが当たり前でしたが、このサービスによって、消費者はスタイリストが選択した服を手にすることに。これまで着用したことがないタイプの服を着用するなど、ファッションの楽しみが広がるサービスです。
nutte(ヌッテ)|株式会社ステイト・オブ・マインド
https://nutte.jp
株式会社ステイト・オブ・マインドが運営するnutteは、縫製に特化したマッチングサービスです。具体的には、縫製の注文を依頼したい人と、法制の注文を受けたい職人とを結びつけるというもの。
日本の縫製の業界自体は、人件費の問題で海外勢に仕事を奪われがちなのが現状で、大手アパレルメーカーは海外へ工場を設けるなど、日本の職人の活躍の場が減っています。一方、小ロット注文を依頼したいユーザーは海外へ発注するわけにいかず、依頼先に困っている状態です。双方のニーズを満たすのが、このnutteのサービスになります。
Virtusize(バーチャサイズ)|バーチャサイズ株式会社
https://www.virtusize.jp
ファッション市場における国内トップのオンライン試着サービスがVirtusizeです。MAGASEEKやユナイテッドアローズ、ルミネ、アーバンリサーチなど大手ECサイトに導入され、同サービスで約80%のシェアを締めています。
ZOZOスーツが試着することで自分のサイズ感を測れるのに対し、Virtusizeは欲しい商品と自分が持っている服のサイズを比較することで、具体的にフィット感をイメージすることができるというもの。Virtusizeに対応したサイトであれば、他サイトで購入した商品も選択して比較できるのもポイントです。買ったけどサイズが合わなかった…という悩みから解消してくれるうれしいサービスです。
YR Live(ワイアールライブ)|株式会社YR Japan(ワイアールジャパン)
https://www.thisisyr.com/jp/yrlive
体験型ライブデザイン&プリントサービスYR Liveは、タッチスクリーンを使って自分でデザインした“自分だけのアイテム”をその場ですぐ手に入れることができる、世界初の―ビスです。
Tシャツやマグカップ、トートカップなどさまざまなアイテムが用意され、1つのアイテムにかかる制作時間はたったの5分以内。業界をリードするファッションブランドやスポーツメーカーなど世界ですでに4,000件以上の実績を誇り、店頭販売やイベント、プロモーションなどさまざまなシーンで活用されています。
ファッションテックの変化とトレンド
日本のファッションテックは、IT関連全般に見られる傾向と同じく、アメリカに1、2年遅れて日本市場で応用・展開されるケースが多いと言われています。ECやフリマアプリなどの普及に続いて、前述したように2018年頃には「ZOZOスーツ」や「バーチャサイズ」が登場し、試着ができないというECの課題を解決。オリジナルのアイテムを製作できる「カスタマイズ」や「サブスク」なども注目されました。その後、その流れはコロナ禍でさらに加速。3DCG技術の進化や5Gの登場もプラスとなり、アバターを使って行うバーチャルフィッティングや、バーチャル空間での購買体験、さらには、3Dモデルでアイテムを紹介し、反響に応じて商品を開発することで、時間やコストを抑えることができるのでは?と様々な取り組みが行われています。
ファッションテック企業で求められる人材像
ファッションテックがブランディングやプロモーションなどの場でも必須となってくる今後は、今までになかった商品や広告手法が次々に誕生することが予想されます。求められる人物像としては、これらの時代の変化についていくだけの柔軟性を持っていることが大切です。
また、ネット上での販売が一般的になった今、海外展開を視野に入れている企業も少なくありません。この場合、スタッフが語学スキルを身につけることも求められるでしょう。ファッション業界は、生産性や売上向上、品質の維持など、さまざまな課題を抱えています。
●デジタルリテラシーが必須
ファッションテックが一般的となった今、ファッションだけの知識ではなく、先端テクノロジーにも詳しくなる必要があります。最近ではVR技術を活用したプロモーションも増えていますが、「VRとは何か」「VRは何ができるのか」を知らなければプロモーションを提案することはできません。
●専門スクールでスキルアップも
ファッションテック専門のスクールが開校するなど、ファッションテックのプロフェッショナルを目指せる場も増えてきました。eコマースの立ち上げなどについて専門的に学べるコース、VRを使ったビジネスモデルを学ぶ授業なども充実しています。
ファッションテックの進化により、アパレル企業で求められるスキルや能力もどんどん変化し、職種の幅も広がっています。その動向にも目を向けつつ、理想の就職先や働き方を見つけましょう!
※本記事は2018年3月20日に公開されたものを再編集いたしました。
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