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すべての製品を、その場でパーソナライズ。ブランドと顧客の共創関係を生み出す、注目のファッションテック|YR JAPAN取締役/CMO小林翔太さんインタビュー

最新のITテクノロジーとファッションの楽しさを組み合わせた、近年注目のムーブメント“ファッションテック”。その動きは生産者と消費者を結びつける物流改革や、最新の技術を利用したアイテム開発など多岐に渡り、日々進化を見せています。

今回はそんなファッションテックのなかでも、専用アプリケーションとデジタルファブリケーションツールを使って、その場でアイテムのカスタマイズを行うことができる即時性のある“パーソナライズ”サービス『YR LIVE(ユアー・ライブ)』に注目。同サービスを提供するYR JAPAN(https://www.thisisyr.jp)の取締役でありCMOでもある小林翔太さんに話を伺いました。

その場で「自分だけの特別なアイテム」が手に入るサービス

−まずは『YR LIVE』とはどのようなサービスなのか、概要について教えてください。

Tシャツやトートバッグなど、メーカーやブランドのプロダクトをベースに、ユーザー自身がタッチディスプレイを操作して自由にデザインをカスタム。専用の機器を用いることで、自分らしくカスタマイズした製品をたった数分の待ち時間でお持ち帰りいただける即時性のあるサービスです。

操作は非常にかんたんで感覚的です。完成したときのイメージをディスプレイで確認しながら、自分の手でタッチしてデザインを変更するだけ。ファッションに関心の高い若い男性や女性はもちろんですが、子どもからお年寄りまで気軽に使っていただくことができるのが特徴です。また、従来のカスタマイズサービスはデザイン決定から手元に届くまで数日から数週間を要するのが一般的でしたが、最新のデジタル技術を用いることで、素速いアウトプットを実現しました。アイテムの種類にもよりますが、多くが数分でお渡しできるくらいレスポンスが良いんです。

もともと『YR LIVE』は“Create Your Own(CYO)”をスローガンに、誰でもかんたんにカスタムデザインができることを目指して、ロンドンで始まったサービス。その即時性と面白さがクチコミで評判を呼び、世界中のファッションブランドや企業とコラボレーションするようになった……という経緯があります。

−現在は、主にどういうシーンで使われているのでしょうか?

基本的にわれわれ自身がプロダクトを販売することはしていません。アパレルやコスメブランド、食品メーカーなどにカスタマイズを実現するソフトウェアを提供しつつ、用途に合ったファブリケーションツールをご用意し、製品化の技術開発を行うのが当社の仕事です。また、キャンペーンなどのポップアップイベントなどで利用される機会が多いことから、ブランドイメージに合ったイベントのプロデュースや設営・運営、終了後のリアクション分析までワンストップで対応できる体制を整えています。

実際の導入例としては、ファッションブランドの『ラルフローレン』における2018年11月の旗艦店リニューアルオープンに伴い、店内にカスタマイズサービス『CYO(Create Your Own)カスタムショップ』を開設。『YR LIVE』のプラットフォームを用いて、ポロシャツやオックスフォードシャツなどを、好みの刺繍やプリントでカスタマイズできるサービスを展開しています。
また最近では音楽アーティスト『EXILE』のLIVEツアーと連動し、ツアーTシャツの販売も実施しました。スマホ専用のソフトウェアを開発し、ユーザーが自由にグラフィックパーツを組み合わせて、思い思いのツアーTシャツをデザインできるほか、メンバーが『YR LIVE』でカスタムデザインしたTシャツも販売。さらに会場では、大型タッチスクリーンでデザインしたTシャツをその場でプリントアウトできるワークショップも開催しました。
これまでのツアーグッズはあらかじめデザインが決まっていましたが、『YR LIVE』を活用することでファン一人ひとりの好みに合わせて欲しいものだけを製品化できる。販売側にとっては在庫リスクを減らすことができることができるうえ、ファンにとっては物販コーナーでわざわざ長蛇の列に並ぶ必要もなくなる。様々なメリットを提供できていると思います。

「好みの1枚」を作る体験が、ブランドへの愛着を高める

−この新しい“体験型ライブデザイン&プリントサービス”には、どのような可能性が秘められているとお考えでしょうか。

ひとつは、アパレルの抱える大量生産・大量廃棄の問題に対して新しい価値観を提供できる、と考えています。ファストファッションが当たり前になった今、気軽におしゃれが楽しめるようになったのは良いことかもしれませんが、アパレル業界自体の価格競争は激化する一方ですよね。そこにフリマアプリなどのC to Cサービスが台頭してきたことで、ハイエンドとローエンド以外の中間ブランドはますます苦戦し、“売れない既製品”があふれた結果、大量廃棄は大きな問題となっています。

この『YR LIVE』を活用し、アイテムをより消費者の趣味・嗜好に近いものにカスタマイズすることで、これまでの既製品では実現できなかった「自分好み・自分らしさ」というエッセンスをアパレルに取り入れることが可能になる。そのことで物への愛着が高まり、安く買ってかんたんに使い捨てするような発想が減っていく。ひいては、世の中から無駄な物を減らしていく社会を実現する手助けができるのではないか、と考えています。

−実際に『YR LIVE』を利用したブランドや企業からは、どのようなリアクションが届いていますか。

その場でカスタマイズしたアイテムが手に入る、という話題性や面白さが店舗への集客の手助けになる、という声は多くいただいていますね。また、自分の手で好きなようにパーソナライズできるという体験が、そのアイテムに対する思い入れを生み出し、結果としてユーザーとブランドとのエンゲージメントが高まる。ファン化をサポートするよいきっかけづくりになる、という声もたくさん届いています。
これまで、消費者は自分らしいアイテムを手に入れたいと思ったら、高価なオーダーメイドを利用するか、自分自身で縫製やカスタムなどを行う手間をかける必要がありました。しかしその予算や技術がなくても、消費者が気軽にプロシューマー(生産者=消費者)になれるのが『YR LIVE』の良さです。体験すると、その満足度や面白さを実感していただけるんだと思います。
コストパフォーマンスの面においては、これまでノベルティという形で配布していたアイテムを、販売という形にスイッチできるメリットがあります。加えて友人・知人と共有したくなる楽しく面白い体験としてSNSでも拡散されやすく、二次波及的な宣伝効果も高い。“販売できるプロモーションツール”としての注目が集まっていることも感じています。

既製品が、さらにオーダーメイドに近づく未来がやってくる

−もともと『YR LIVE』は海外のサービスですが、日本の市場に国外のサービスを持ち込む場合に意識している点はありますか。

当然ながら、日本のマーケットに対してどのような需要があるのか、という点でしょうか。私が最初に『YR LIVE』に出会ったのは、ラスベガスでの展示会でした。ハリウッドの女優やアーティストのライセンスを保持する会社が、顧客向けのインタラクティブショーケースとして導入していたんです。通常、アパレルの現場では洋服が並んでいる店舗に消費者が購入しに来る、というのが一般的な導線です。そういう意味では、『YR LIVE』があることで店舗に足を運んでもらうきっかけが生まれる点、そしてより売上げを伸ばすための特別な顧客体験を提供できる点に需要を感じました。特に日本においては、デジタルネイティブと呼ばれる10代・20代と親和性が高そうだと感じたため、洋服だけでなく音楽やゲームなどエンターテインメント分野での需要もあると感じ、日本でのサービスローンチに踏み切りました。

−現在、“ファッションテック”はアパレル業界でも注目のキーワードです。このムーブメントにより、既存のファッション業界がどのように変化していくと感じていますか?

流行を扱っていながらも、実は他業界に比べてアナログな要素も多いのがアパレル業界の特性であると感じます。そのため、ITやデジタルの活用といっても、これまではプロモーションのために使う店舗での空間演出などで見受ける程度でした。しかし、布製品に対して即時的にプリントや刺繍ができる機器の登場など、高品質なデジタルファブリケーションツールが誕生したことで、洋服そのものの在り方が変化してきています。AIなど人工知能の発達とともに、コーディネートに対する考え方も変わってくるでしょう。現在、既製品が主流である洋服業界がよりオーダーメイドに近くなる、そんな世の中は決して遠い未来ではない、と思います。

−最後に、ファッション業界に働く人たちにメッセージをお願いします。

もともとファッション業界は移り変わりが早いとされていますが、近年のデジタル技術の発達とともに時代の変化はさらに早くなっています。これまで洋服を買いに店舗まで足を運んでいた人も、ECサイトやフリマアプリで自宅にいながら買い物が可能になり、自宅で試着同様の体験までできるようになりました。ブランドをPRするツールも、テレビや雑誌などのマスメディアから、インスタグラムやFacebookなどのSNS、さらには動画メディアまで細分化されています。

この時代の変化はさらに早くなることがあっても、遅くなることはありません。大切なのは、今世の中で何が起こっているのか、変化についていくアンテナを立てること。そして、これまでの経験にしばられず、新しいことに挑戦していく柔軟性を持つことだと思います。過去の経験が役に立たないことを恐れるのではなく、どうせまた変わっていくのだからまずはやってみよう!と前向きにアクションを起こせる精神が、これからの時代を楽しんでいくのに役立つのではないでしょうか。

Interview&Text:Aki Kiuchi

 

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