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サーキュラーファッションとは?サステナブルとの関係性も

衣類の大量廃棄は時代を追うごとに加速しており、温室効果ガスの発生や化学繊維による土壌汚染は、地球や人類の未来を脅かす危機として解決を迫られています。現在でも世界各国のアパレル企業がリサイクルやリユースのための取り組みを行っていますが、衣類から衣類への再生は1%にも及ばないのが実情。

そんな状況に対抗するため、近年、「耐久性・安全性があり、リサイクルが可能な商品を生み出すべき」というサーキュラーエコノミー(循環型経済)という考え方が世界各国に広まっています。EUでは売れ残ったアパレル商品の大量廃棄を2030年までに禁止する方向性を定め、サーキュラーエコノミーへの移行を推進。日本でも脱炭素などと併せて話題に登るようになりました。本記事では、サーキュラーエコノミーの概要、そして、アパレル業界が取り組むサーキュラーファッションの動きについて紹介します。

【目次】
サーキュラーエコノミーという考え方
サーキュラーファッションとは
3Rとの違い
サステナブルとの関係性
サーキュラーエコノミーに取り組むファッションブランド

サーキュラーエコノミーという考え方

大量生産や大量消費を伴う、「原料→生産→使用→廃棄」という一方通行の経済活動=リニアエコノミー(直線型経済)に対し、資源の循環利用で環境汚染を抑え、自然の再生を目指すという考え方がサーキュラーエコノミー(循環型経済)です。商品を製造するサイクルの中で廃棄を極力抑え、新たな資源の利用も最小限にとどめることが前提とされています。気候変動や希少生物の絶滅など、生態系の危機が叫ばれる現代においては環境保全と経済のバランスをとる上で必要不可欠なシステムとされ、今後、社会に浸透することでさまざまなサービスに変革をもたらすといわれています。

【サーキュラーエコノミーの3原則】                                                                                                ■廃棄物と汚染を生み出さない                                                      ■製品や素材を流通・循環させ続ける(使い続ける)                                                                                                          ■自然を再生させる                                                                 

サーキュラーファッションとは

サーキュラーファッションの概念は2014年に繊維産業のコンサルティング会社「グリーンストラテジー」のオーナーであるアンナ・ブリスマー、H&M本社のサステナビリティ担当者がそれぞれ提唱し、当時、EU諸国で盛り上がりを見せていたサーキュラーエコノミーとサステナブルファッションが融合したものとして波及していきました。日本でも年間約50万トンもの衣料が廃棄され、二酸化炭素の排出などが問題視されるなど、サーキュラーファッションへの対応は急務といわれています。

サーキュラーファッションの循環活動では、原材料の調達から商品が顧客の手に行き渡るサプライチェーンの中でリサイクルに対応できない素材や環境汚染に繋がる物質を排除することが重要とされています。近年では、さまざまなブランドがこのシステムを導入しており、丈夫かつ再利用に対応できる服や靴、アクセサリーの商品開発に邁進しています。

サーキュラーファッションのシステムを普遍的な価値観として浸透させるには、次々と新しい服を購入する、リサイクルを考慮せずに廃棄するといった消費者の意識や行動を変えることが求められます。海外のアパレル業者では自社の新品と一緒にデザイナーブランドのヴィンテージアイテムを陳列する、アイテムの製造・輸送などに要したエネルギーの内訳をレシートに記載するといった試みが行われています。


3Rとの違い

「3R」はReduce(減らす)Reuse(再利用)Recycle(リサイクル)の頭文字である「R」を取った言葉で1980年代中頃からアメリカで使われ始めました。「3R」は、廃棄物の一部を再資源化するなど、できるだけ廃棄物を出さないような設計を目指していますが、少なからず廃棄物が発生することを前提としています。

一方、「サーキュラーエコノミー」は、廃棄をしないことが前提。設計の段階から原料の再活用が組み込まれており、新しく原料を投入することなく、廃棄されていたものを原料とすることで循環を可能にする設計となっています。

現在、社会における環境保全の取り組みは「3R」から「サーキュラーエコノミー」へと移行しつつありますが、「サーキュラーエコノミー」が大企業のように潤沢な資金や資本を持つ大企業でなければ対応できない経済活動であるのに対し、「3R」は個人や中小企業の単位で取り組める環境活動であることも特徴です。

3つのRの概要については下記のとおりになります。

Reduce(減らす)

製品の製造時に発生する資源やゴミの量を抑制すること。同じ製品を長く使い続けるために定期的に手入れをすることや耐久性の高い商品を開発・製造することもリデュースにあたります。

Reuse(再利用)

同じ製品を古くなったからといって廃棄せず使い続けることや、使い終わった製品をメーカーが回収して再利用すること。そのための技術開発や古物商が不用品を買い取って販売することもリユースに含まれます。

Recycle(リサイクル)

廃棄物を資源として新たな製品を生み出すこと。日本でもリサイクルを目的とした分別回収が盛んに行われ、ペットボトルを繊維に変えて服を作るなど、実験科学を用いたさまざまな技術が開発されています。


サステナブルとの関係性

日本語では「持続可能」という意味を持つサステナブル。近年、SDGsの普及で注目を集めるようになり、人類が向き合うべき課題と相対する言葉としてさまざまなメディアで見かけるようになりました。ファッションの分野においても古着の積極的な販売や資源としての有効活用を促すサーキュラーファッションと同義語として使われることが多々あります。SDGsの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」は、まさにファッション業界が大量廃棄や過剰な消費から脱却し、環境配慮の姿勢へと移行するために意識すべき課題であるといえるでしょう。

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サーキュラーファッションに取り組むファッションブランド

H&M

H&Mは世界では、2013年に世界で初めて店舗内でリサイクルを行えるシステム「Looop」を導入。不要になった衣類をリサイクルシステムの機械に投入すると細かく裁断され、8つの行程を経て新しい服が編み上げられます。このシステムでは水や染料を使わないことが特徴で、日本のニット機械製造・販売メーカーである株式会社島精機製作所の技術が使用されています。

ZARA

ZARAではサーキュラーエコノミーへの取り組みとして布地のリサイクルを活性化させるための研究や古着改修のプロジェクトを展開しています。スペインの街角には現在、ZARAの古着改修ボックスが数千ヶ所に設置されています。また、2021年からはクルエルティフリー(残虐性を伴わない)なコスメのラインを新設し、サステナビリティを強調しています。

ステラ・マッカートニー

ステラ・マッカートニーでは、循環型社会に対しブランドとして責任を持って関わっていく姿勢を表明しており、公式サイトでもサステナビリティに対するビジョンを掲載しています。オーガニックコットンや役目を終えたナイロンを環境に優しい素材に生まれ変わらせ、商品の製造に活用しています。持続可能であると指定された森林でのみ繊維の調達を行うなど、サーキュラーエコノミーに対しても強いポリシーを感じさせます。

マッドジーンズ

オランダのMUD Jeans社では、初回登録料(日本円で約3500円)を支払い、月額料(日本年で約800円)を支払ってジーンズをレンタルするサービスを展開しています。レンタル期間を終えたジーンズは買い取ることも出来ますが、返却される場合はコットンの素材へと戻され、新たなジーンズへと作り変えられます。ブランド名のラベルにも革ではなく布を使用するなど再利用を前提としたシステムを形成しています。

ベサニー・ウィリアムズ

イギリスで新進気鋭のデザイナーとして注目を集めるベサニー・ウィリアムズは、自身のコレクションに社会問題のエッセンスを盛り込み、サステナブルへの取り組みにも積極的。環境問題に熱心な母親の元で育ったことから、テントに使用された廃棄布を環境への影響が少ない布地に作り変えるなど、サーキュラーエコノミーについても実に柔軟に対応しています。

スパイバー

山形県に拠点を置くバイオベンチャー企業・スパイバーは、サステナビリティ戦略を展開する中、微生物の発酵を核とした技術で人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」を開発。石油を主原料としていないことから環境に悪影響なマイクロプラスチックを排出せず、環境に優しい繊維を生み出せるとして注目を集めています。すでにさまざまなデザイナーやテキスタイルメーカーが導入しており、ファッション業界での普及が期待されています。

ビームス

ビームスでは、デッドストック商品をリメイクし、蘇らせる自社ブランド「ビームス クチュール」を展開しています。倉庫内に眠っていた商品がアップサイクルされ、新たな個性を獲得した一点もののアイテムとして生まれ変わります。また、さまざまなクリエイターとのコラボレーションを行うことで多角的なアイデア・エネルギーの創造を目指しています。

BRING

日本環境設計株式会社が展開するブランド「BRING」では、「服から服を作る」をコンセプトに掲げ、2020年からサーキュラーエコノミーの活動をスタートさせました。同ブランドのオンラインショップで商品を購入すると不要な衣類をリサイクルに出すための封筒も送られてきます。この封筒に入った衣類は日本環境設計の工場に送られ、「BRING Material」という素材に変換された後、糸や生地に加工されて新たな製品づくりに活かされます。

TEXT:伊東孝晃

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