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連載コラム Vol.1|突撃洋服店 安田美仁子が見る「ファッションの移ろい」

私、古着表現作家・安田美仁子が『突撃洋服店』をスタートしたのは1985年。ちょうどバブルの頃でボディコンが大流行、そして古着はまだメジャーではない中で、神戸と渋谷でジャンルやジェンダー、年齢を超えたモードを古着を通して提案してきました。ここ数年では2020年に神戸店を、2021年に渋谷店を終了し、現在はPOP UPのみでライブのように店を展開しています。『突撃洋服店』をスタートさせる前、10代後半からアパレルショップで働き始め、約40年近くをファッションと共に過ごしてきました。ファッションを通して自己、そして他者を表現するということはそのくらい私を夢中にさせたのです。今回のコラムでは、私の歩んだ時代を3つに分け、当時の流行と私自身のスタイルについて綴っていこうと思います。

上段左:母と1歳の私。ローゲージのニットカーディガンを着ています。上段真ん中:3歳。襟とポケットがバイカラーになったワンピースを着て。上段右:こちらも3歳。母と一緒にジャケットを着ておめかし。下段左:4歳。白い帽子に白いワンピース、白いバッグとオールホワイトコーディネート。下段右:6歳。東京から新幹線に乗って神戸へ。当時はホームはお見送りの人で溢れていました。

60年代:両親の影響を大きく受けた幼少期

1963年に東京で生まれた私。ちょうど東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催され、世間は活気に溢れていた時代です。生まれたばかりでもちろん記憶はないのですが、両親はあまりそういった世間のイベントに騒がないタイプだったのでおそらく我が家にはその活気は届いていなかったはず…(笑)。両親は特にファッションに関係する仕事をしていたわけではないもののおしゃれに気をつかう人で、今でも自分のスタイルをアップデートしながら「“今“の自分に似合う服」を着ています。4歳の時、母に連れられて近所の洋裁ができる方を訪ね、スカートを作ってもらいました。母のアイディアで、吊りスカートのサスペンダーを背面ではなく表面でクロスさせたデザイン。母はそれをいたく気に入って、私が着る度にあまりにはしゃいでいたのですごく印象に残っています。まだ“おしゃれ“がどうとかはよくわかりませんでしたが、可愛い服を着るということは素敵なことなんだと幼いながらに思いましたね。そう考えると、私のファッション観において両親が与えた影響はとても大きいのかもしれません。

祖父もアメリカからジャズのレコードを取り寄せて楽しむようなとてもおしゃれな人でした。祖父の家に遊びに行くと、当時は輸入雑貨店でないと手に入らないようなアメリカのドロップやチョコバーがおやつとして出てきました。アメリカのお菓子のパッケージって本当に可愛くて。60年代の終わりには『サザエさん』のアニメが放送されていましたが、私はどちらかというと『サンダーバード』みたいなアメリカ作品を好んで見ていたので、幼少期から既に少し変わった子だったのかもしれませんね。

【1960年代に流行したファッション】

・ミニスカート
『MARY QUANT』をきかっけに膝上5cmのミニ丈が世界的に大流行。日本では美空ひばりがミニスカートを履いて歌番組に出演したことで日本でもブームに。

・アイビールック
1954年にアメリカのフットボール連盟『アイビーリーグ』に所属していた大学生たちが好んで着ていたファッション。紺ブレザーにオックスフォードシャツ、コットンパンツにペニーローファーを合わせるスタイル。1960年代には日本で流行し、足元にスリッポンシューズを合わせて着崩すなど独自の発展を遂げた。
左:9歳。赤い帽子に赤い靴。右奥にいる母も赤い靴を履いています。右:12歳。今とほぼ身長も変わらず、既に姫カット!

70年代初期:原風景はバービー人形?

6歳の頃に父親の転勤で神戸に引っ越しました。その数年後に日本にマクドナルドが初めてオープンし、東京に帰ったタイミングで親戚にマクドナルドに連れていってもらったことを覚えています。そんな海外文化が日本に流れ込み始めた時代に出会ったのが『バービー人形』。広告関係の仕事をしていた叔父がプレゼントしてくれたのですが、キッチュでポップな色合いとシルエットに一瞬にして心を奪われました。ボディラインが出るタイトなサイケ柄のトップスに、黒のエナメルスカート、そしてエナメルバッグ…そう、まさに今私が『突撃洋服店』で仕入れているアイテムと同じ! 私のファッションの原風景はバービー人形だったのだなと今になって思いますね。ただ、まだ幼いですから当時は母が選んだ服を着ていました。『BIG JOHN』のジーパンに、赤い靴と帽子、『familiar』のスヌーピーのスウェット、というようにアメカジっぽいファッションが多かったかな。60年代にジーパンスタイルがブームだったこともあり大人はみんなジーパンを履いていましたが、私の同級生はスカートにブラウスという『ちびまる子ちゃん』的なファッションが主流でしたから、子供がジーパンを履いているというだけで注目される時代でした。子供も70年代半ばになると段々流行のベルボトムのジーパンを履くようになっていきます。私も小学校6年生の頃にはベルボトムのジーパンにナンバリングのフットボールTシャツを着たりしていましたね。この頃には既に姫カットで、今の面影があります(笑)。

【1970年代初期に流行したファッション】

・ヒッピーファッション
学生運動が盛んな時代、平和を全身で表現するスタイルとして生まれたヒッピーファッション。ベルボトムのジーンズにバンダナ、絞り染めTシャツなどナチュラルで気取らないアイテムが好まれた。女性がデニムを着用すること、男性のロングヘアなどユニセックススタイルのきっかけ。

・ビッグルック
ボディラインを拾わないゆったりとしたシルエットのファッションのこと。スウェットやセーターなどのトップスはもちろん、スカートもミニスカートからロングの時代に。

70年代後期:神戸から生まれた『ニュートラ』ルック

70年代の終わり、私が高校2年生の頃に『ニュートラ』ルックが大ブームに。『ニュートラ』はニュー・トラッドの略で、神戸から生まれたファッション。『アイビールック』が元になっていて、ポロシャツにボックススカートという少し“お嬢さん”なスタイルです。私は小学6年生の頃には今と同じくらい身長があり、母の服をよく借りていたので中学生の頃には『ニュートラ』っぽいファッションをしていましたね。私が高校生になるこの頃には神戸の北野町に『KENZO』が入ったファッションビルができたり、『ISSEY MIYAKE』の名前をよく耳にするようになったりと、DCブランドブームの予兆があったような気がします。ただ、まだまだ大人のためのファッションというイメージで、私たちの中では『ニュートラ』『ハマトラ』『サーファー』のようなストリートファッションが主流でした。

私もこの頃から自分で服を選ぶようになるのですが、母からすれば『ニュートラ』は良いけど『サーファー』は派手でやんちゃなイメージがあったようで、よくダメ出しをされていました(笑)。70年代はヤンキー文化が色濃い時代でもありますから、やんちゃな友達たちが小さめのポロシャツにバギーパンツを合わせて、ラメの派手なメイクをして『サーファー』ファッションを楽しんでいました。その子たちが行くディスコではタイトスカートにヤンキーサンダルのようなファッションが流行っていて、私が行っていたディスコではソウル音楽に合わせて踊るような雰囲気だったので『ニュートラ』の子も多かったなあ。ディスコというとボディコンを着て踊るジュリアナ東京のようなイメージがありますが、当時のディスコは流行の最先端が集まる社交場だったんですよ。『ニュートラ』の上品なスタイルと『サーファー』のちょっとやんちゃなスタイルが同時に流行っていたので、ディスコによってそのジャンルの違いが見られるのも面白かったですね。

【1970年代後期に流行したファッション】

・ニュートラ
『ニュー・トラッド』の略で、神戸発祥の華やかなトラッドスタイル。金ボタンのブレザーやポロシャツ、膝下丈のタイトスカートやボックススカートなどの上品なアイテムにブランド物のバッグやアクセサリーで着飾るのが人気のスタイリング。

・ハマトラ
『横浜トラディショナル』の略で、横浜発祥の清楚なお嬢様スタイル。カーディガンジャケットにタータンチェックのタイトスカート、丸襟シャツ、クラシカルなペタンコシューズにハイソックスを合わせるのは『ハマトラ』ならでは。

・サーファー
その名の通り太陽の下が似合うようなアクティブなスタイル。白いパンツにレインボーのTシャツ、南の島を連想させるようなトロピカル柄やサンダル、バギーパンツにミニマムなトップスを合わせるのが定番。

次回は『突撃洋服店』をオープンした1980年代のお話です。お楽しみに!


コラム執筆者

古着表現作家|安田 美仁子さん

渋谷生まれ、神戸育ち。横浜在住。

1985年より「突撃洋服店」を開始。

買い付けから店舗のディレクションまで一貫して行う。

2020年4月に神戸店を、2021年4月に渋谷店を終了し、現在はポップアップのみで展開中。

近年は映画やドラマ、アーティストへの衣装提供も行い、

百貨店でのポップアップや様々な場所でのファッションショーなど、

古着を通して新たな価値観や可能性を生み出す展開を行っている。

https://www.instagram.com/totsugekiyofukuten_new/

【安田 美仁子さんのインタビューはこちらから】

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