国内外で様々なニュースが駆け巡った2016年は、ファッション業界にまつわる話題も多く、大手アパレルの減益や倒産など悲しいニュースも相次ぎました。
今回は、エーバルーンコンサルティングの池松代表に去年の業界動向を振り返っていただきます。
2016年から、今後必要とされる人材の特徴や企業・ブランドに求められることはどのように変化するのでしょう?
ニュースから振り返る2016年のファッション業界
1.インバウンド消費の激減、中国語人材の需要減
ファッション業界が影響のあったニュースと言えば、「インバウンド(訪日観光客)の消費激減」。中国政府の関税率引き上げによって、インバウンドに頼っていたブランドは売り上げが数十パーセント減少するなど、ラグジュアリーも宝飾も大手アパレル同様、厳しい状況でした。
それに伴い、転職市場においても数年前からトレンドだった中国語に長けた人材の需要が激減。英語が話せる人材でも、語学以上に実績を求める企業が増えています。
2.イギリスのEU離脱、トランプ大統領当選による円安の影響
海外では、「イギリスのEU離脱」と「トランプの米大統領当選」が大きなニュースでしたが、このドル高円安の影響で多くのインポートブランドが値下げを発表。
ファッションブランドではグッチやバレンシアガ、ジュエリー・宝飾ではカルティエ、IWCなどが値下げを発表し話題となりました。このまま円安が続くようであれば、値下げを検討するブランドは今後も増えるでしょう。
3.企業の社長交代
2016年は国内外で企業の社長交代が相次ぎ、国内企業では三陽商会やサザビーリーグ、ラグジュアリーブランドではディオールジャパンやLVMHジャパンなどの社長交代が発表されました。
内部にとって社長交代の影響は大きく、特に外資系企業では本社の体制が大幅に変わるため、ラグジュアリー業界にとって大きなニュースとなりました。
4.日本撤退、アメリカ企業の大幅なリストラ
OLD NAVYの日本撤退、最近話題となったアメリカンアパレルの撤退も記憶に新しいですが、コーチやラルフローレンでもグローバルでリストラを発表しました。
アメリカ系企業はある意味ビジネスが上手い企業が多く、利益体質をつくるためにスピーディなリストラに踏み切る特徴があります。
5.長時間労働問題
長時間労働の是正を搔き立てた電通の事件が日本中の注目を集めましたが、特に2016年は「適正なワークライフバランス」という言葉を耳にすることが多く、これは2017年も引き続きのテーマとなるでしょう。
特に、今の若い人たちは報酬だけではなく、ワークライフバランスを求めるように変化しています。ファッション業界でも長時間労働が長年問題視されていますが、これからは働きやすい環境づくりが必要不可欠。
働く環境を整えること=良い人材の採用につながる、環境を整えるということが企業に課せられた今年のミッションなのかもしれません。
6.デジタル志向の求人が増加
人工知能(AI)、IoTといったキーワードが多い2016年でしたが、ファッション業界では実際のところそこまで聞くことがなかった。しかし、求人にはよりデジタル志向が高まっていると感じます。
例えば、以前はPRと言えば雑誌やスタイリストなどのコネクションの多さやタイアップの能力が求められましたが、昨今はデジタル系のスキル(SNSのノウハウやネット広告の知識など)が必要とされるようになりました。
EC売り上げが増え、このままでは実店舗の売り上げが減ってしまうのではと心配する声も多い中、実店舗は徐々に戦略を変えてきています。
ラグジュアリーブランドでもデータ分析に基づいたVMDで店舗ごとに変化をつけたり工夫が見られます。今後は営業、販売、VMDなどの求人でも、より高い分析能力が必要になるのではないでしょうか。
銀座出店ラッシュの2017年、企業・ブランドに求められることは?
2017年は「マロニエゲート銀座2(前・プランタン銀座本館)」が3月に再オープンし、4月には大型複合施設「GINZA SIX」がオープンという、銀座エリアが飽和状態になる年。
銀座というエリアで同じブランドが2,3店舗出店をしているこの状況では、トレンドに流されず、いかに差別化できるということがカギになります。
選りすぐりの販売員を配置し、そこでしか見ることができない商品展開や、そこでしか受けることができない顧客体験とは何か。銀座での成功が良いケーススタディになることを信じ、各ブランドが原点を見直すべき時なのかもしれません。
今回お話を聞かせてくれた方
エーバルーンコンサルティング 代表 池松孝志
アメリカ留学時代に古着屋のディーラーを経験。国内の紹介会社を経て、2008年にエーバルーンコンサルティングを設立。主にエグゼクティブのサーチやM&A案件を担当。