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「再構築ファッション」に熱視線!知っておきたいアパレル用語「再構築」とは

ファッションのトレンドは約20年周期でサイクルすると言われています。確かにY2Kなど、過去に流行したトレンドがリバイバルするのはよくあること。しかし過去に流行したスタイルがそっくりそのままトレンドになるかというとそうでもなく、時代性に合わせてアップデートされ、再び私たちの目の前に現れるのです。また、ハイブランドでは過去のアーカイブから着想を得て、ニュールックを生み出すデザイナーが多数います。過去のスタイルに新たな解釈を与えて新しいものに作り替えること、これがファッションシーンでよく耳にする「再構築」ですが、トレンドのリバイバルも広義では流行の再構築と言えるでしょう。昨今は「再構築」に注力するブランドも増えていることから、改めてファッションにおける「再構築とは何か?」を取り上げたいと思います。

【目次】
再構築とは
リメイクとの違い
再構築ファッションが熱い、その背景
再構築といえばこのブランド

再構築とは

再構築とは既存のものを壊し、新しいものへと作り替えること。例えば1枚のシャツをパーツごとに解体し、より新しいバランスへと変化させて構築し直す手法のこと。元の素材やアイデアを生かし全く異なる服へと作り替えるという意味です。以前から再構築を取り入れるデザイナーは多かったものの、特に顕著になったのが2023-24年秋冬のパリコレクション辺りから。スタンダードの解体と再構築がひとつの大きな流れとなり、多くのメゾンが定番アイテムの再構築を取り入れていました。再構築と並んで使用されるワードに「再解釈」がありますが、再解釈は誰もが知るものを新たに解釈し直して進化させるもので、再構築と同じ文脈で使用されるケースが多々あります。再構築はハイブランドに限らずよく用いられる手法で、つまり、服を解体してバランスやフォルムを変えてもう一度作り直すことが再構築にあたります。


リメイクとの違い

再構築(=リビルド)と似ている言葉に「リメイク」がありますが、再構築が服をパーツレベルにまで細かく解体して組み立て直すのに対し、リメイクでは服をパーツ単位にまで解体することは少ないといえます。身近なところではデニムジーンズを解体してスカートに仕立て直すなどがリメイクにあたり、元のデザインを生かしたものが中心。再構築の場合は襟や袖などに至るまでを徹底的に解体して再度組み立て直すので、似ているようでリメイクとは少しニュアンスが異なります。


再構築ファッションが熱い、その背景

2024年春夏コレクションで名だたるメゾンが発表したルックの多くに見られた共通点が「再構築」です。主にスタンダードとされるアイテムを再構築することで今までにないバランスや機能を持たせたデザインが多く、定番のものを再構築することで新鮮に生まれ変わらせたブランドが多数ありました。今なぜ再構築が注目を集めているのかについては様々な見方がありますが、ひとつはSDGsやアップサイクルの流れを受けてのもの。かつての服を解体して新しい服に蘇らせることでアップサイクルを行い、製品の寿命を伸ばそうという考え方です。現在のファッション界ではファストファッションが幅を利かせ、大量生産・大量廃棄が問題となっています。再構築はこういったファッションのあり方へのアンチテーゼでもあるのではないでしょうか。


Robert – stock.adobe.com

再構築といえばこのブランド

Maison Margiela

ベルギー出身のデザイナー、マルタン・マルジェラが1988年にパリで創業し、創業時からファッション好きの間で熱狂的な人気を誇っているMaison Margiela(メゾン・マルジェラ)。デザイナー本人は徹底した秘密主義を貫き自らの正体を隠してきたものの、生み出すクリエイションがその人物像を雄弁に語っています。そんなMaison Margielaの代名詞と言えるのが「再構築」で、複数のTシャツやニットを解体して継ぎ合わせたデザインなどはブランドを象徴するアイテム。Maison Margielaのタグにはカレンダーを思わせる数字が羅列されており、数字に丸をつけることでどのラインなのかを示していますが、「0」「0 10」がアーティザナルと呼ばれる解体再構築ライン。このラインはマルジェラのデザインチームが世界中から収集したヴィンテージやアンティークなどを手作業で解体し、それらを緻密な計算の上で再構築する特別な服ゆえに、オートクチュールのみの展開となっています。過去には中折れ帽を複数組み合わせたジャケットをはじめ、ミリタリーソックスを解体してハイネックニットに仕上げた1着などがあり、これらはファッションを超えもはやアート作品のよう。なお、2024年のアーティザナルコレクションは、2014年からMaison Margielaクリエイティブディレクターに就任したジョン・ガリアーノの傑作との呼び声が高く、退廃的でファンタジック、ダークでポエトリーな世界観が世界中から喝采を浴びました。

COMME des GARCONS

COMME des GARCONS(コム デ ギャルソン)のデザイナーである川久保玲は、以前からファッションの既成概念を覆すアバンギャルドな服作りをしてきました。コートやジャケットの再構築による新しいバランスの提起などは幾度となくコレクションに登場し、2023-24年秋冬のパリ・メンズコレクションでは、コムデギャルソン オムプリュスでテーラリングを解体し再構築したルックを披露。また、川久保玲がディレクションを手掛けるコンセプトストア「ドーバーストリートマーケット ギンザ」ではバーバリーのトレンチコートを再構築するなど、再構築を経て新たな価値を得たアイテムも数多く取り扱っています。

UNDERCOVER

COMME des GARCONSと同じくパリコレクションで活躍する日本ブランドのUNDERCOVER(アンダーカバー)ですが、こちらも再構築に定評のあるブランド。2024-25年秋冬コレクションではシンプルな日常着にヒントを得て再構築したルックが話題を集めました。例えばTシャツやデニム、スウェットパンツなどを再構築することでアップデートしてみせ、他にはないユニークなシルエットながらも日常にフォーカスした服作りで新境地を切り拓きました。UNDERCOVERは1997年秋冬に「EXCHANGE」というコレクションを発表しましたが、このコレクションの特徴はファスナーで袖や襟をバラバラにでき、他のパーツと交換ができること。まるでプラモデルのようなユニークな構造ですが、この辺りから再構築というキーワードがUNDERCOVERの一部となったのかもしれません。

再構築と聞くと難しい印象がありますが、例えば2枚のTシャツを真ん中で半分に切断し、その左右を継ぎ合わせて1枚のTシャツにするのも立派に再構築です。デザイナーたちはより細かで複雑な再構築によって新たなデザインを創造しますが、再構築を行うことで他に同じものがない1点物になるというメリットもあります。同じデザインの服が大量に並ぶファストファッションが広く浸透している今、誰とも被ることのないオリジナルなものを身に纏うことはファッションを愛する人にとってこの上なく魅力的なことなのかもしれません。

TEXT:横田愛子

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