今、ファッション界で盛り上がりを見せているのが「ギークシック」と呼ばれるトレンド。実はこのトレンドは2016年やそれ以前のリバイバルで、当時はスポーツなどが苦手で社交性に欠けるタイプ、いわゆる日本で言うところのオタクを指す「NERD(ナード)」を用い「ナードファッション」などとも呼ばれていました。今回は要注目のギークシックについて紹介したいと思います。
【目次】
・ギークシックとは
・実は2016年と、それ以前にもブームに
・2024年版ギークシックの定番とは
・大人が着こなすコツ
ギークシックとは
「ギークシック（Geek Chic）」はオタクや変わり者を意味するギークと洗練を表すシックというワードをつなげた造語で、あえてオタクっぽいスタイルをすること。例えば大きな黒ぶちのメガネやポロシャツなど、なんとなく古めかしかったり冴えない印象のアイテムを取り入れたコーディネートを指します。それっておしゃれなの？というギリギリのラインを突いたかなり高度なスタイリングですが、ブームのきっかけはK-POPアーティストたち。SNSでバズりそのまま世界のトレンドへ、という流れで盛り上がりを見せているのです。
実は2016年と、それ以前にもブームに
オタクっぽいファッションは2016年にもブームになっています。当時は丸メガネやチェックのシャツ、ちょっと悪趣味な花柄など、あえてダサく、一見チグハグな色や柄合わせで個性を主張するのが逆におしゃれとされ、その当時は主にティーンの間で流行っていました。しかし、実はギークにスポットを当てるトレンドは、そのもっと以前、2001年頃が発端。というのも、2001年は音楽界とファッション界から絶大な信頼を得るトップアイコン、ファレル・ウィリアムスが結成した、ジャンルレスなヒップホップグループ「N.E.R.D」のアルバムが発売された年。当時ファレル自身がメガネなどのナードなスタイルを披露し、いわゆるラッパー風のスタイリングとは一線どころか何線も画したスタイリングが注目の的でした。
この頃はまだ、オタクっぽいファッションをギークとは言わず、ナードと呼んでいました。同じ年、ナードファッションの金字塔とも言える映画「ゴーストワールド」が公開（2023年に全国で再度ロードショー公開されています）。主人公のイーニド役を演じるソーラ・バーチが劇中で身に纏うファッションが完全にギークで、音楽や映画などのカルチャー的トレンドがファッションに波及してブームとなったのです。思えばそこからギークなスタイルはじわりと世間に浸透し、8年前や現在のようなトレンドが起こる下地となっていたのかもしれませんね。
2024年版ギークシックの定番とは
一躍ファッショントレンドに躍り出たギークシックですが、アップデートを経た2024年、新たにギーク3種の神器となったアイテムがあります。それは「メガネ」「ポロシャツ」「ベーシックニット」。それぞれ紹介していきます。
・メガネ
メガネは少し大きめのフレームで、ウェリントンやスクエア、ボストンといったどこか真面目そうな印象を与えるシェイプが中心。フレームはべっ甲や黒縁が定番だけれど、ハーフリムと呼ばれる上部だけにフレームがあるタイプも人気です。
・ポロシャツ
ポロシャツですが、こちらは2024年春夏コレクションで多数のブランドが発表しています。定番アイテムだけに簡単に取り入れられそうですが、今年らしく着こなすには素材とサイズ感にご注意を。いわゆる緩すぎずフィットしすぎず、という程よいサイズだと本当に普通になってしまうので、体にフィットするニット素材やオーバー気味のサイズを選ぶのが正解です。ランウェイでは裾をインしてスカートと組み合わせるコーデが主流だったので、真似してみるのも良いでしょう。
・ベーシックニット
最後にベーシックニットに関しては、クルーネックやVネックのなんの装飾もないシンプルな1枚があればOK。下にシャツを重ねてプレッピー風に着こなすなど、生真面目な学生をイメージして。ブルーのギンガムチェックのシャツにグレーのニットを重ねるなど、さりげなく色遊びを取り入れることで一気におしゃれ感がアップしますよ。
大人が着こなすコツ
ダサければダサいほどイケてるというのがギークシックの概念ですが、大人が着こなすにはコツが必要。ギークをシック（洗練させて）に着こなす最大のポイントは、清潔感とアイテムの質。パリッとプレスの効いたシャツや上質なフレームのメガネなど、質が良くしっかりと手入れされたものであることです。そもそものアイテム自体が定番品かつプレッピーなものが多いため、だらしなかったり安っぽいと一気に「服に一切のこだわりがない人」に。あくまでも外しとしてのギークなので、フェミニンなワンピースにメガネなど、ワンポイントで取り入れるくらいがちょうど良いでしょう。
例えばロエベのエレファントバッグが人気ですが、大人があえてキャッチーで遊び心のあるものをシンプルなスタイルに持つのもギーク的外しのコツ。ポニーテールに黒縁メガネなど、ヘアスタイルとメガネのマッチングでギークっぽさを取り入れるのもおすすめです。
ギークシックをおしゃれに着こなすにはいくつかのコツが必要ですが、アイテムを見てみればいずれもクラシックな定番品が中心。全身で取り入れるというよりも一部にだけギークな味付けをする、くらいのバランスが一番こなれて見えるポイントです。
TEXT：横田愛子
