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ブランド広報・PRは知っておきたい「ステマ投稿」の基準について

SNSやネットなどを利用している人、つまり現代であればほとんどの人が耳にしたことがある「ステマ」という言葉。ステマとはステルスマーケティングの略語で、消費者に対し、特定の商品やサービスについて宣伝であることを気づかれないように発信する行為のことです。アパレル業界では、SNSで話題となる、いわゆる「バズる」ことで広告効果が上がり売り上げに直結するため、アパレルの広報やPRに携わるのであればステマの知識は必須。今回はステルスマーケティングについて詳しく解説していきます。

【目次】
ステルスマーケティングとは
ステマの問題点
手法とリスク
ステマは景品表示法違反
こんな場合もステマに
ステマ投稿を行わないためには

ステルスマーケティングとは

ステルスマーケティングの「ステルス(stealth)」とは隠密性や密かな行動を意味する英単語。消費者に気づかれないように商品の宣伝や口コミを行う手法を指して「ステマ」と呼び、日本の広告業界では2000年頃からこのワードが使用され始めました。「サクラ」や「やらせ」などと言い換えた方がしっくりくる人も多いかもしれません。ステルスマーケティングはブログの普及とともに始まり、ソーシャルメディアの発達で広がりました。その背景にはあるのは、多くのアクセスを集める人気ブロガーやインフルエンサーの存在です。モノを売りたい、宣伝したい企業が影響力を持つブロガーやインフルエンサーに自社の商品やサービス、報酬を提供し、ブログやSNSでおすすめしてもらうことでマーケティングに生かそうとしたのです。今や私たちはネットを介して買い物をする機会が増えましたが、オンラインショッピングでは実際の商品を手に取って検討することはできません。そのためユーザーの口コミを参考にすることも多いですが、その口コミが「ステマ」だったらどうでしょうか。


ステマの問題点

これまでSNS上のコミュニケーションは非営利のものだと思われていたため、消費者にとっては自分がフォローしている相手が、個人の感想や意見としてその商品やサービスを発信していると信じていました。「この人が言うのだから信用できる」と思わせることで消費を喚起する手法は、いわばやらせでありサクラ行為にほかなりません。過去には人気タレントがSNSでステマ行為をしたことが明らかとなりバッシングを受けたこともありましたが、ステマがこれほどまでに糾弾されるのには、消費者にとっては「裏切られた」という感覚が生じるというのもあるのではないでしょうか。ステマが問題なのは、消費者にとってその商品に対する適切な評価が秘密裏にコントロールされているからなのです。

過去に起きたステマ事例

2012年に日本で起きたペニーオークション詐欺は、ステマという言葉が広く浸透するきっかけとなった事件です。「ペニーオークションを利用してこんなに格安に落札できた」と複数の有名人が投稿したことで、消費者はやらせではないかと疑いを持ったのが発端です。その後、投稿した有名人が実はペニーオークションから報酬を受け取り、実際は落札せずに記事を書いたことが判明。ペニーオークション自体が詐欺的な仕組みで運営されていたこともわかり経営者は逮捕され、ステマに加担した有名人も激しいバッシングにさらされました。


手法とリスク

ステマには大きく分けて「なりすまし型」と「利益提供型」があります。「なりすまし型」は、たとえばエステのサイトに偽の口コミを投稿するなど、企業や個人がそのサービスまたは商品の提供元とは無関係な第三者を装い、自社のサービスや商品を宣伝することです。ネットの口コミが集客を左右する現代において、良い評価を得るためにこうした手法をとる企業や個人店は少なくありませんでした。一方「利益提供型」は、タレントやモデル、インフルエンサーに報酬を支払ったり商品やサービスを無料で提供しているにも関わらず、それが広告であることを隠してPRしてもらう手法のこと。確かに、影響力のある人に自社の商品やサービスを高く評価してもらえれば大きな宣伝になります。ただしそれはあくまでも非営利の場合であり、仮にステマであることが発覚したら、消費者は企業やサービス提供元に対して騙されたというネガティブな感情を抱くでしょう。一度ついたネガティブなイメージを払拭することは難しく、その後も消費者を騙す企業というレッテルを貼られることになりかねません。


ステマは景品表示法違反

ステマを法によって規制する動きは海外が先行して行ってきました。イギリスでは2008年に「不公正取引からの消費者保護に対する規制法」が、アメリカでは2009年に連邦取引委員会でガイダンスが改訂され、それぞれステマに関する規制が施行されています。日本においては2023年の10月1日から、虚偽や誇張表現といった消費者を騙すような表示を規制する「景品表示法」の不当表示にステルスマーケティングが追加されました。この法では企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は規制対象にはならないものの、商品・サービスを供給する事業者(広告主)は規制の対象となります。なお、ステマ規制に違反した場合のペナルティですが、措置命令を受けた事実が消費者庁のウェブサイトで公表され、措置命令に違反すると2年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処されます。


こんな場合もステマに

法によりステマが規制されましたが、規制の対象となるのは事業者のみです。実際に情報を消費者に向け発信する投稿者は刑事罰の対象にはならないため、インフルエンサーを利用した広告やPRをする際は、投稿者に対してステマ規制に違反しないよう注意する必要があるのです。下記の2つの事例を見てみましょう。

インフルエンサーに新作アイテムをSNSで紹介してほしいと依頼をした。1件につき3000円の報酬だ。ハッシュタグ「#PR」を入れるようお願いした。インフルエンサーは他十数個の複数のハッシュタグと一緒に「#PR」を記載した。

一見ハッシュタグをつけているため問題なさそうに見えますが、SNS投稿において大量のハッシュタグの中に広告である旨を埋もれさせることはNG。投稿を見た人が広告投稿であるとわかるように、はっきりわかりやすく記載する必要があります。

友達をアパレルブランドの新作お披露目パーティーに招待した。SNSで新作を紹介してくれた人には限定のチャームをプレゼントすることになっていた。友達は、パーティーに無料招待された旨や、限定チャームをもらえる旨は記載せずにSNSに新作アイテム紹介の投稿をした。

事業者から明示的な依頼・指示がなかったとしても、投稿者の自主的な意思による投稿であるかどうか、意思決定に事業者が関与していないかどうかなど、客観的な状況を含めてステマと判断される場合もあります。上記の場合、金銭や物品の提供はないものの、パーティーに招待すること、限定チャームがもらえることは投稿者のメリットになるためステマに該当します。


ステマ投稿を行わないためには

では、どうすればステマ規制違反にならないのでしょうか。まず重要なのは、広告であることを明示すること。「#(ハッシュタグ)」を使い、#PR#モニター#タイアップ#プロモーションなど、金銭や商品・サービス提供を受けて投稿している広告であることが消費者にわかるようにする必要があります。次に、広告主を明確にすることも不可欠。例えば「この投稿は〇〇とのタイアップです」などと記載すること。似ている言い回しでも「〇〇の商品を使ってみました」というような表現だと、投稿者が自ら商品を選んで使っているかのような印象を受けるのでNGです。

広告主は投稿者となるインフルエンサーなどにSNSで投稿する際のルールの周知を徹底し、どのような行為がステマに繋がるかを理解してもらうガイドライン作りが必須となります。現在Instagramではブランドコンテンツタグ機能が搭載されていたり、You Tubeには動画上に「プロモーションを含みます」と表示できる有料プロモーション表示機能が備えられているので、PRの際はこういった機能を使用してもらうようにしてもらいましょう。

ステルスマーケティングは、広告主にとっては低コストで大きな宣伝効果を得られるPR方法です。しかしそのPRがステマだとわかれば広告主はもとより、それに加担した投稿者の信用も失墜し、信用回復には相当の時間を要するでしょう。一方でSNSやインフルエンサーを活用したマーケティングは拡散による認知の拡大が期待でき、広告としてはとても有効な手段。そのためステマ規制法に抵触せず、広告であることを明記して正しくPRに活用することが求められるのです。

TEXT:横田愛子

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