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アパレル業界のさまざまな職種を経験したデザイナー浦川輝美 (Arobe)が語る「アパレル業界で働くということ」【後編】

2018年にドレスを中心としたブランド「Arobe」を立ち上げ、デザイナー・ディレクターを務める浦川輝美さん。これまでに販売員、店長、MD、セールスなど、アパレル業界のさまざまな職種を経験された浦川さんに、アパレル業界で働くということについてお話を伺いました。後編はアパレルの各職種について、お客様との関わり方などについてのお話です。


――販売員、店長を経験後はMD(マーチャンダイザー)をされています。どのようなお仕事ですか?

市場調査から商品企画、生産、販売プロモーションまで、ブランドが売れるための計画を立てるのがMDです。シーズンごとに主力となる商品を決め、必要な発注数を考えます。販売員時代は納品されたアイテムを販売・プロデュースしていましたが、MDではブランド全体のことを考えて商品を企画し、どうのように売るかを組み立てなければいけません。「このワンピースは何ヵ月くらい売れるのか」というのを考えて、使用する生地の発注数を計算します。

――元々接客が好きだった浦川さんですが、仕事ができるようになればなるほどお客様から離れた仕事になっていくことについてはどう思われましたか。

実はそれはそれで楽しかったんですよね。新しいことにチャレンジするのがずっと好きだったので、販売員からMDへ移動のお声掛けをいただいた時も「人生一度きりだしやってみよう。ダメだったらまた大阪に戻ればいいや」くらいの気持ちでチャレンジすることにしました。

――そう思えるのは待ちの姿勢ではなく、常に自分のできることを全力でやってきたからですよね。

そうですね。もちろん失敗したことも沢山ありますが、その時の反省があるから今があると思っています。一度失敗したことだったとしても、「あの時はできなかった。でも今ならできるかもしれない」と怖がらずに挑戦するようにしています。

――MDで難しかったことは?

販売員の時は、自分が働いている店舗のことだけを考えていればよかったのですが、MDとなると全国規模で考えなければいけません。首都圏と郊外・地方でお客様の層や入り方が違うので、どのエリアでどんな商品がどのように売れているのかを把握する必要があります。店長ごとにスキルや考え方が全く違うので、その辺りを加味して各店舗を束ねるのが大変でしたね。でも、困った時に一人で抱え込まずに周囲の人に助けを求められるようになって、乗り越えることができました。販売員として10年以上のキャリアがあると、大抵の仕事はできるようになるんです。でもMDとしては新参者なので、「教えてください!」と頼るしかない。かえってそれが良かったんだと思います。

――その後に経験されたセールスは、どのようなお仕事ですか?

いわゆるブランドの営業担当です。デザイナーさん自ら営業するのは難しいので、セールスコンサルタントを担う感じです。デザイナーさんと打ち合わせをして、一緒になって働かせていただきました。価格設定も一緒に考えます。

――それぞれの仕事はどんな人が向いていると思いますか?

販売員は、人が好きな人が向いています。知識は後から身に着けられるので、接客を好きな気持ちがあれば大丈夫。お客さんに喜んでもらえることをやりたい人は絶対に向いていると思います。

店長は、人材育成やマネジメントが主な仕事なので、いつか自分のお店を持ちたいという夢がある人にはとても良い経験になると思います。店長は時には厳しいことも言わないといけなくて、人によっては「ムッ」とされてしまうこともあります。それでも、言わないといけない。だから部下に見返りを求めず、その人のためを思って指導ができる人が向いていますね。

MDは、予測ができる人。時代の流れを敏感に捉え、競合他社の動向も把握できる人が向いています。

セールスは、デザイナーの想いや考えをいかに理解できる人が向いていますね。そして何より、デザイナーにリスペクトを持って一番のファンになれるかどうかが大切です。

――職種ごとのやりがいを教えてください。

販売員は、やはりお客様から直接「ありがとう」と言ってもらえることです。今でもArobeのPOP UPで店頭に立つと、お客様の反応をダイレクトに見ることができて嬉しいですね。

店長は、人として成長できること。人材育成は人と関わることの究極だと思っています。部下を育てる中で、自分も育っていく、自分を知っていく喜びを感じられることだと思います。

MDは、ヒット商品が生まれることですね。自分の企画した商品が全国で売れ筋にあがるのは嬉しかったです。販売員とは違う、数字でわかる達成感ですね。

セールスは、デザイナーに信頼されること。ただ売るだけの人ではなく、理解者であり相談相手だと思っていただけることが嬉しくて。デザイナーのパートナーになれる喜びがあります。

――様々な職種を経験されて、最終的にデザイナー・ディレクターをされている理由は?

販売員から店長になり、MDを経験して、セールスとしてデザイナーやブランドのコアな部分に触れる中で、自分の中にも色々な想いが生まれました。ちょうどその頃、友人たちの結婚ラッシュで、結婚式用のワンピースを探している子たちが多かったんです。姉も子供が生まれて、子供の行事に参加するワンピースを探していて。皆「高いワンピースを買ったものの、結局普段は着られない」と言っていました。だから普段でも着られるドレスブランドがあればいいなと思ったんです。そして『日常から非日常まで』というコンセプトで「Arobe」を立ち上げました。フランス語で「ドレス」を意味する『robe』と英語で「一つの,一枚の」を意味する『A』を組み合わせた造語です。

――お客様に一番近い販売員から、デザイナーに一番近いセールスまで経験したからこそ、湧き出たクリエイションですね。

そうですね。おしゃれだけど着るのが難しい服というのが世の中には沢山あって、私はやっぱりおしゃれで着やすい服を作りたかったんです。Arobeのメインターゲットは30~40代の方々。販売員時代の経験から、その世代の方がどういった部分を気にされているのかよくわかっていたので、体型をカバーしながら美しく着られる服を作ろうと。Arobeの服を作る時のフィッターは私がモデルなんです。リアルな30代の体型。そこもリアルですね(笑)。

――Arobeを始めて壁にぶつかったことは?

服飾を学んだわけではないので、デザインも最初は見様見真似。生地が重すぎた!なんてことも。「しっかり学んでないからな…」という引け目を感じることもありましたが、MDやセールス時代にデザイナーと企画会議に参加したり、間近でデザインをしている姿を見ていたので、その経験と、得意な絵を活かしてデザイン画に落とし込んでパタンナーに伝えていました。

――服飾学校で学ぶ技術を、きっとこれまでの経験値でカバーされているんですね。

仕様書で使うような専門用語はわからないけど、服の仕様がどういうものかは経験値として知っていたんですよね。見返し何センチで、ここはメロウにして、とか。最初は「あれ、あの~」と、拙い言葉で伝えていました(笑)。

――今後の展望を教えてください。

最近、お客様からたくさんリクエストをいただいたオンラインショップを始めました。遠方の方は、決して安くない服を試着なしでオンラインで購入してくださっています。それってとても勇気がいることですよね。今後はもっと色々なエリアでポップアップを行って、実際に来て頂ける機会を設けたいと思っています。


浦川 輝美 うらかわ・てるみ

大学卒業後、ファッションへの興味からアパレルメーカーに入社し、
国内ブランドの販売スタッフ・店長を経験。
その後、MD職にてブランドの商品企画から販売計画案などに携わる。
2015年 styles株式会社の創業とともに入社。
国内デザイナーズブランドのセールスを経験後、
2017年 ドレスを中心としたブランド『Arobe』を立ち上げ、
ディレクター兼デザイナーを務める。

https://arobe.jp/

TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)

PHOTO:永西永実

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