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【連載コラム】クリエイティブディレクター成羽 学の「近道より寄り道が楽しい」論【後編】

ソルト&ペッパーメディアスでクリエイティブディレクターを務める私・成羽 学(ナリハ マナブ)が、ファッショントレンドとアパレル業界で働くということについて綴るコラム。前編は私自身のファッションの目覚めとキャリアについてのお話でした。後編となる今回は、ファッショントレンドと、アパレル業界を目指す方へ伝えたいことについてお話ししたいと思います。

トレンドとファッションアイコン

前編の最後ではアパレル業界の多様性についても触れました。多様性といえば、特徴的なのが「ファッションアイコン」。どの時代にもファッションアイコンは必ず存在します。ジェーン・バーキン、オードリー・ヘップバーン、ブリジット・バルドー、グレス・ケリー、カトリーヌ・ドヌーヴ…しかし、平成から令和になった今、ファッションが多様化したことでファッションアイコンも多様化しました。人によってファッションアイコンが異なるだけでなく、中にはSNSでの発信などを通して自分自身がファッションアイコンになっている人もいるでしょう。それでも、知識の引き出しを増やすために、学生には歴代のファッションアイコンを調べてもらうようにしています。ファッションだけでなく、どんなジャンルでも過去から学ぶということはとても大切なこと。過去のトレンド同士をミックスさせたり、過去のトレンドというフィルターを通すことで新しいものが生まれるんです。

トレンドの「NEW90年代」なんかはまさにそうです。1990年代後半〜2000年代前半、歌手の安室奈美恵のファッションを真似した“アムラー”や、多くのギャルがメイクやファッションのお手本にした浜崎あゆみなどがファッションアイコンとしてトレンドを牽引しました。ポジティブでエネルギッシュな“平成ギャル”ファッションが今の若者には新鮮に映り、再びトレンドに。

これまで2000年代初頭のトレンドがカムバックしたような、いわゆる「Y2K」に注目が集まっていましたが、最近は2000年代を飛び越えて3000年代をイメージした近未来的なスタイル「Y3K」というワードがストリートでも注目されています。「aespa」や「BLACK PINK」などK−POPアイドルをファッションアイコンにしているユース世代から特に人気を集めています。AI合成やYR技術をかけたようなビジュアルにフューチャリスティックなコスチュームはまるでメタバースの住民のよう。ファッションはメタリックやパテント素材、スパンコールなど、光沢感のある素材を使ったものが多く見受けられます。メイクも「Y2K」の時はギラッとしたグリッターが主流でしたが、「Y3K」はより近未来的な、偏光パールなどを使用したメタリックなメイクにも注目です。そんなムードを演出するシアー素材やブラトップ、マイクロミニなどがトレンドアイテムとしてあげられますね。また、これはパリオリンピックの影響もあり、スポーツをイメージさせるアクティブで健康的なアイテムも注目されています。

ファッションはライフスタイルの一部

過去を遡るうえで外せないのが、70年代。ファッションだけでなく音楽や映画など、あらゆるカルチャーにおいて素晴らしい勢いのある時代でした。ファッションはその時代のカルチャーと密接に関係しており、現代でもデザイナーが服を作る際のコンセプトやテーマを考える際に過去のカルチャーに着想を得ることも少なくありません。古い映画を観ることが、その時代のトレンドを知る一番の近道だと思います。人によっては過去のことに興味を持つのが難しい人もいるかもしれませんが、まずは自分が生まれた年から遡ってみてください。自分が生まれた年にどんな服や音楽が流行っていたのか、社会情勢はどうだったのか、「自分事」になると興味がわきますよね。

私は常日頃から学生にファッションはライフスタイルの一部だと伝えています。服そのものについて追求することももちろん大切ですが、ファッションだけでなく「衣食住遊」を知ることも大切。一番おすすめなのは映画を観ることですが、時間やお金がなければ、映画のフライヤーだけでも集めてみてほしいなと思います。国や時代によってファッションやヘアメイクも違います。映画の舞台になっている国や時代を知ることで、トレンドやファッションの傾向がわかるのです。私自身が恩師から教わったことですが、本当にためになったので今でも学生に伝えている方法です。

近道より寄り道が楽しい

アパレル業界を目指す学生の中にも自己表現や自己分析が苦手な人は沢山います。だから、5年後、10年後の自分のライフスタイルを想像してもらう。そのイメージをコラージュに起こしてもらって、自分にとっての「好き」「嫌い」を可視化するんです。ファッションとの向き合い方を模索することは、自分自身を知ることにも繋がります。時代や世代、性別を超えてファッションを学び、「自分なら」と、考えることが必要です。今は映画を観るにも「長すぎる」と倍速にしてしまったり、いかに短い時間でバズらせるかということばかり考えてしまいますが、一見無駄に見える時間こそが大切なのです。「近道より寄り道が楽しい」。これは20年ほど前にNU茶屋町のキャッチコピーとして採用していただいた、私の想いが詰まった言葉。近道ばかりしていると、感性もその分淡泊になっていく。「エモい」という一言で終わらせるのではなく、どうエモいと思ったのかというところまで掘り下げることで感性は磨かれるはずです。

アパレル業界を目指す方へ

アパレル業界を目指す中でも、他の業界と同様に履歴書は欠かせません。自分の感情を掘り下げて言語化できない人に良い履歴書が書けるでしょうか?どんな仕事をして、どんなキャリアを築きたいのか、まずはイメージできるようにしてほしいと思います。答えを急がず、時には失敗をしてみてほしいのです。失敗を恐れるのではなく、失敗を「積み重ねる」勇気を持つこと。買い物をするにしても、ネットショッピングも良いですが、やはり実店舗に足を運んでみてほしい。プロのスタッフから直接アドバイスを受けられる絶好の機会ですから。とにかく、家から一歩外に出て、体験をしてみてほしいのです。また、本を読み、映画を観て、美術に触れ、音楽を聴き、美しいものや素晴らしいものを見極める目を養ってほしい。大切なのは、食わず嫌いはしないこと。

アパレル業界を生き抜くための三原則は創意・誠意・熱意。少しくらい間違えたっていいから、軌道修正しながら進むことで新たな課題が見えてくる。それが成長するということだと思います。近道ではなく、色々な寄り道をして「なりたい自分」そして「新しい自分」を発見してほしい。そして「これだ!」と思うものができたら、簡単に諦めたりせずにがむしゃらに突き進んでください。冒険心は人を変えます。学んだことの証しは「変わる」ことです。出会いや日々の刺激によって我々は変わっていくことができる。常に感謝の気持ちを忘れずに、一歩一歩前に進んでほしいと思います。


コラム執筆者

クリエイティブディレクター|成羽 学さん

兵庫県西宮市出身。

繊維系専門誌を経て、「流行通信」「WWD-JAPAN」を手掛ける株式会社INFASパブリケーションズへ。

現在はソルト&ペッパーメディアスでクリエイティブディレクターを務めながら

教育機関での講師やプロモーション、産学連携プロジェクトなど幅広く手掛ける。

https://www.instagram.com/manabunariha/

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