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ブランドやデザイナーが手がける企業制服(ユニフォーム)の魅力

制服、つまりユニフォームは日本人にとって非常に身近な衣服。きっと大半の人が今までの人生の中で制服を着て過ごした期間があるといっても過言ではないでしょう。もちろん海外にも制服はあるものの、日本ほど制服が文化として根付いている国は稀。現在では日本の、特に女子学生の制服は「Kawaii」文化のひとつとして世界でも受け入れられています。制服は学校だけでなく多数の企業も取り入れていますが、最近注目を浴びているのがブランドや有名デザイナーが手がける制服。制服に関しては多様な意見があるものの、なぜ企業は制服のデザインをデザイナーやブランドに委ねるのか。今回はその理由について調べてみました。

【目次】
制服(ユニフォーム)の起源とは
なぜ企業は制服を取り入れる?
制服(ユニフォ-ム)がもたらす効果
話題となった企業制服

制服(ユニフォーム)の起源とは

制服を辞書で調べると、「ある集団に属する人が着る色や形の定められた服装。ユニフォーム」と書かれています。コミュニティーを同じくする者たちが着るという性質上か、制服の歴史を紐解けばなんと聖徳太子の時代まで遡ることができるそう。聖徳太子の時代に冠位十二階という身分制度が生まれましたが、その際に身分によって異なる色の服を纏ったことが起源とされ、その後の武家社会においても身分に応じた服装をしていたようです。それだけ古くから制服の土壌ができていた日本だからこそ、現代に至るまでに制服文化がしっかりと根付いたと言えるのかもしれません。

さて、聖徳太子時代から武家社会を経て、制服が現代のような位置づけになったきっかけは軍隊にあります。同じ制服を身につけることで結束意識や帰属意識が強まり、同時に耐久性や動きやすさといった機能をも兼ね備えていました。日本に軍隊があったのは1871年から1945年の期間ですが、この時代の日本は軍国主義。そのため思想統制という目的もあり、同じ目的で制服が教育現場にも普及するようになったのです。


なぜ企業は制服を取り入れる?

制服はそもそも帰属意識や仲間意識を高めるものであるために、現在も多くの企業が制服を取り入れています。制服のある職業を例に挙げると、航空会社や鉄道会社、医療関係者に警察官や消防士などいくつも思い浮かびますね。民間企業で制服の需要が急増したのは1970年の大阪万博での各企業ユニフォームが発端ですが、この際にコンパニオンが纏っていたのがデザイン性の高い制服。この時点で制服は、企業アイデンティティーの確立を目的とするものになっていきました。

制服があることで組織のイメージの統一や識別性が高まるのはもちろん、制服に袖を通すことで仕事モードへと切り替わるという心理的なプラス面もあります。しかし一方で、没個性であったり多様性の時代に即していないという理由から制服廃止論もあり、制服を導入している企業や教育機関などはこれからの制服・ユニフォームの在り方を考えていく必要があるでしょう。


制服(ユニフォーム)がもたらす効果

制服にはいくつものメリットがありますが、それが企業の場合はコーポレートアイデンティティーの確立以外にも、仕事内容に見合った機能を備えていたり、制服があることで会社の一員としての責任感が芽生える、オンオフの切り替えがしやすい、私服と比較し経済的であるなどの利点が挙げられるでしょう。また、制服を着用していることで倫理意識の向上や組織内での識別性も上がります。一方で社外の人間から見た場合でも、企業の信用度向上や識別性によって生まれるセキュリティー効果があり、例えば配送会社などでは、制服を着て荷物を届けることで受取側の安心感が向上するといった効果も期待できます。このケースの場合、消費者やサービスの受け手にとって制服が信用度の一端を担っていることの証明とも言えますね。


話題となった企業制服

以前から学校や企業の制服をデザイナーに依頼する事例は数多く、1967年から1987年のJAL制服は森英恵氏が手掛けており、一般公募の時期を経て2013年には丸山敬太氏がデザインを担っています。また、全国に展開するドトールコーヒーはスタイリストの大久保篤志氏が、東京スカイツリーの制服はミナ・ペルホネンの皆川明氏によるもの。このように企業ユニフォームをデザイナーやブランドが手がけることは多々ありますが、その中でも特に話題を集めた制服を紹介していきましょう。

Mame Kurogouchi「長野県立美術館」 2021年

2021年の4月にフルリニューアルを遂げ「長野県立美術館」としてオープンした際に、女性用のスタッフユニフォームを手掛けたのが「Mame Kurogouchi」のデザイナーであり長野県出身の黒河内真衣子。ブランドを象徴するシャープかつ優美なカッティングのジャケットとワンピースのセットアップで、首元を彩るスカーフには長野県の県花であるリンドウの刺繍を施してあります。上品かつシック、軽やかな着心地であることに加え、美術館の美しい建築空間に溶け込むことも意識してデザインをしたそう。

nexus×NANO universe「保育士コラボ制服」 2021年

保育事業などを展開する株式会社nexusがユニフォームを依頼したのは、若い世代を中心に人気を集めるNANO universe。テーマは「仕事終わりのデートにもそのまま着ていける」ことだそうで、ノーカラーのフェミニンなブラウスとシンプルなパンツ、ワンピースのようにふわりと広がるシルエットのエプロンなど、秋冬と春夏でトップスが各2型、ギャザーとワイドのパンツが2型、エプロンの構成に。袖捲りをした際に落ちてこないようトップスの袖口にゴムを配したり、動きやすいようパンツのウエストをゴムにするなどの配慮も魅力です。

篠原ともえ「タカラスタンダード」 2022年

かつてデコラティブなファッションで一斉を風靡し、その後デザイナーへと転身を遂げた篠原ともえがデザインしたのは、住宅設備メーカーのタカラスタンダード。彼女が手掛けたショールームアドバイザーの制服は「水」をデザインコンセプトに据え、シャツやジャケット、パンツ、スカートにカットソーなど全6型がラインナップ。中でも注目を集めたのが、マタニティワンピースが6型の中に入っている点や、過去になかったパンツスタイルが導入された点。女性にとっての働きやすさを加味しただけでなく、素材に植物由来のポリエステルや再生ポリエステルを用い、環境への配慮もなされています。

nico and…「Sui Savon首里石鹸」 2023年

沖縄発のスキンケアブランド、Sui Savon首里石鹸の店頭スタッフのユニフォームを手掛けたのは、定番に程よくトレンドを落とし込む人気ブランドのnico and…。スタッフの声も取り入れながらデザインしたユニフォームはリラックス感のあるトップス2型とテーパードパンツで、ストレッチ性に富んで動きやすく、洗濯後にシワになりにくい素材を採用するなど機能面も優秀。男女共通のデザインも現代的で、ゆったりとしたシルエットを含めて今の空気感を隅々にまで取り入れた制服に仕上がっています。

Andemiu「新静岡セノバ」 2023年

フェミニンで上品なデザインを得意とするAndemiuとタッグを組んだのは、商業施設の新静岡セノバ。デザインしたのはインフォメーションスタッフの制服で、Andemiuの人気アイテムをベースにスタッフの意見を取り入れつつ完成に至ったそう。制服はワンピースとジャケット&パンツの2型で、スカーフを取り入れることで着こなしに変化をつけられる工夫も。エレガントでありながらもお手入れが簡単で動きやすいなど、こちらも着る人の目線に立った機能性の高さを兼ね備えています。

オンワード「ANA」 2023年

ANAグループのエアージャパンが2024年2月就航予定の国際線新ブランド「Air Japan」のために用意したのが、オンワードが手掛けたユニフォーム。多様性の時代に沿ったボーダーレスなデザインが高評価で、ボトムスにはスカートとパンツを、足元はパンプスや革靴以外にスニーカーも選択できるように。この制服はジェンダーだけでなく体型を問わない工夫も盛り込まれており、ベルトにはベルト穴がないものを、ジャケットの袖やボトムスの裾にはアジャスターを配したほか、スカートは男性も履くことを想定したデザインになっているのが特徴的です。

企業によって多彩な制服がありますが、デザイナーやブランドが手掛けた制服も企業にとってはPRポイントのひとつ。今後こういった制服を採用する企業が増えれば、就職先を探す際に「制服が魅力的だったから」という志望動機が増えるかもしれませんね。

TEXT:横田愛子

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