失われた技法や素材、職人の手仕事を後世に伝えるため、世界でも珍しいコスチュームジュエリー専門の美術館として2010年に東京都目黒区に設立された「アクセサリーミュージアム」。欧米の装身具や絵画、歴史的装束やブランドなどの衣服を含む5万点以上のコレクションから選りすぐりの約2000点を展示する常設展をはじめ、年3~4回、装いの文化に関する企画展を開催。現在は、おしゃれが楽しくなる秋冬に向けた企画展『ちょっとしたパーティー展』が12月17日(日)まで行われています。
コレクターである田中家の邸宅を改装した美術館であり、邸宅では頻繁に「ちょっとしたパーティー」が行われていたアクセサリーミュージアムの建物。商家だった田中家はお客様を家に招くことが多く、館内のインテリアやカトラリーを実際に使用し、田中夫妻や子どもたちは着飾ってお客様を迎えていたという同館を舞台に開催されている今回の「ちょっとしたパーティー」は、パーティーに関する物語や、ドレス、コスチュームジュエリー、バッグなどのアイテムが展示されています。
そもそもパーティーという文化は、古代エジプトから行われていたとされ、日常からの解放や社交、個人的なお祝いなど、様々な目的や規模で形を変えながら現在まで続いています。また、同館の主要コレクションであるコスチュームジュエリーは、1930年初頭、昼と夜のパーティーに出席できるように1枚のドレスを着飾れるアイテムとして注目されてきました。それまではアフタヌーンティー(またはカクテルパーティー)とイブニングパーティーの装いは明確に分けられていましたが、世界恐慌による経済不況もあり、デザイナーたちはコスチュームジュエリーやハンドバッグなどのアクセサリーに重きを置くことでシンプルで合理的なドレスを支持していたといいます。このようにパーティーとファッション、そして世相には深いつながりがあり、アクセサリーも常にファッションの傍らで人々を飾り立ててきました。
時代によってどんなものが生まれ、好まれてきたのか。“パーティー”というテーマのもと、当時のトレンドも知ることができる本展では、私的なパーティーのシーンの再現とともに、企画展示室には目にも楽しいパーティーにまつわるアイテムが集結。グッチやサンローランなど各ブランドのドレスが展示され、ドレッシーなものから奇抜なものまで、会場を華やかに彩る趣向を凝らしたデザインを楽しむことができます。アクセサリー類には、1800年代中盤には製造が始まり、1930年代に女性を伴う夜のパーティーが盛んに行われるようになったことで装身具として活用されるようになったウランガラスを使ったさまざまなネックレスなども登場。紫外線に当たると蛍光色に輝くウランガラスに注目してください。
それ以外にも、パーティーにふさわしい大ぶりで華やかなデザインの装身具や、来客用の特別な食器類、サプライズパーティーや昼食会へ招待状や1930~40年代のグリーティングカードなども展示。さらに、華やかなイミテーションのティアラやクラウン、美しい細工などが施され、装身具的な要素を兼ねたバニティケースなど、職人の手仕事が光る品も見ることができます。
また、企画テーマに関連し、「パーティー」をテーマにしたアイテムやスタイリング、例えばキラリと光る装身具やパーティーバッグ、華やかなネイルなど、自身の創造でスタイリングに「パーティー」をプラスして来館すれば入館料が100円割引になる“オシャレ割引”という嬉しいサービスも実施されています(ただし、過度の露出や危険物、大きすぎる荷物やパニエはNG)。
当時の人々がどのようなファッションでパーティーを楽しんでいたのか。思い思いのおしゃれをして、「ちょっとしたパーティー」に参加してみてください。
TEXT:金子裕希
【INFORMATION】
企画展 Vol.47『ちょっとしたパーティー展』
会場:アクセサリーミュージアム
会期:2023年9月1日(木)~12月17日(日) ※休館日:月曜日、第4・5日曜日
時間:10:00~17:00 ※最終入館16:30