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ジェンダーレスが定着するまでのメンズファッションの移り変わり

性別にとらわれない、という意味を持つジェンダーレスというワードも今や当たり前になりました。昨今はメンズメイク市場の活況もあり、日常的にメイクをする男性も増えてきましたが、同様にファッションの世界でも年々ジェンダーレス化が進行中。しかし実はメンズファッションにおけるジェンダーレスの波は過去にも幾度かあり、昨今のようにある程度定着するまでにはカウンターカルチャー的に一部の男性の間で支持されたこともあったのです。そんなムーブメントを経てようやく今、メンズファッションのジェンダーレス化が本格的に定着したのかもしれません。そこで今回はジェンダーレスなメンズファッションが定着するまでの流れを追っていきましょう。

【目次】
最新メンズコレクションに見るジェンダーレス
男性が纏うスカートの歴史
スコットランドのキルトを紐解く
かつてブームとなった「フェミ男」ファッション
モード系ファッションとメンズスカート
ジェンダーレスなメンズファッション

最新メンズコレクションに見るジェンダーレス

ジェンダーレスファッションが注目されるようになったのはここ数年のこと。きっかけは世界最大級のモードの祭典として知られる「メットガラ」でした。このイベントでは毎回設定されたテーマに沿ったドレスアップを求められるのですが、2019年のテーマは芝居がかったものや人工的なものを意味する「キャンプ」。これに参加した多くの男性セレブたちがワンピースやスカートなどを身に纏ったことで、ファッションのジェンダーレス化が加速したと言っても過言ではありません。特にそれが顕著になったのが、ミラノとパリで開かれた2023-2024年のA/Wメンズコレクションでしょう。スエードのワンピースを発表したプラダにスズランモチーフの刺繍を施したジャケットを提案したディオールなど、繊細かつ優雅にジェンダーの枠を超越したデザインが目を惹き話題を呼びました。もちろん以前から服のシルエットによる男女差の垣根を超越するデザイナーはいましたが、大手メゾンまでがこぞってメンズファッションに女性的な要素を取り入れ出したことで、ついにジェンダーレスファッションが本格的に市民権を獲得し始めたのです。


男性が纏うスカートの歴史

近年メンズコレクションでも豊富に発表されるようになったボトムスにスカートがあります。スリットが入ったロング丈からショートパンツながらも一見するとスカートに見えるデザインのものまで、まるで男性たちが自らの脚を解放し始めたかのよう。しかし現代でこそスカートは女性的なアイテムの代表格ですが、スカートが初めて誕生した古代エジプト時代には男性用の衣服でした。その後中世になるとヨーロッパを中心に洋裁技術が発展したことで機能以上に装飾的要素が重視されるようになり、この辺りからスカートは女性が履くものという認識になっていったそう。ヨーロッパで一般男性がパンツを履くようになったのが16世紀からなので、男性がスカートを履いていた時代は古代エジプトからルネサンス期までと、実に長期にわたるのです。さて、ここで目を向けてほしいのが世界の民族衣装。フィジーやブータン、ミャンマー、ギリシャでは男性の民族衣装もスカートであり、日本の着物にしても、スカートそのものではなくともボトム部分を見ればスカート様のデザインであることに気づくはず。そう、伝統的な衣装から伝わるのは、スカートは古来から女性だけでなく男性の体も包んできた衣類だということです。


スコットランドのキルトを紐解く

民族衣装の中のスカートを語る際に、忘れてはいけないのがスコットランドの男性が纏うキルトでしょう。現在では正装ですが18世紀までは普段着としても使用されており、特徴的なタータンチェック柄のウール生地が印象的。このチェック柄は民族や地位、身分によって異なり、日本でいう家紋的な役割を果たしています。ちなみに形状は巻きスカートと同様ですが、スカートとは言わずにキルトと呼びます。ちなみにキルトは軍服でもあり、湿地帯が多いスコットランドの気候に適したもの。湿地を行軍する際に水分の吸収によって衣類が重くなることを避け、下半身の乾燥を保ち衛生的に保つという役割も持っていました。ところで日本男性の正装は紋付の羽織袴ですが、紋=タータンの模様、袴も一見ロングスカートのように見えるところなど、スコットランドのキルトとの共通点が複数あるように感じますね。


かつて日本でブームとなった「フェミ男」ファッション

1990年代の日本で局地的にブームになったメンズファッションに「フェミ男」があります。フェミ男とはフェミニンな男の子のことで、華奢でどことなく女性的な雰囲気を持つ男性、および彼らが纏うファッションのこと。当時フェミ男ブームを牽引したのがいしだ壱成さんや武田真治さんで、その頃は共に中性的な雰囲気で多数の雑誌のカバーを飾っていました。この頃、彼らに憧れた男の子が手に取ったのがロングスカート。彼らは女子顔負けの華奢な身体でレディスの服を纏い、その中の選択肢にスカートがあったのです。基本はダークカラーのマキシ丈などで、ピタピタサイズのTシャツにキャスケットなどと合わせるのが定番。しかしブームといえども当時はまだ異端であったメンズスカートですが、この頃から日本では徐々にジェンダーレスファッションの土台ができ上がりつつありました。


モード系ファッションとメンズスカート

現代のメンズスカートがモードと切り離せない関係にあるのは、フランス人デザイナー、ジャンポール・ゴルチエの功績。1985年、ランウェイに初めて男性用スカートを登場させたのがゴルチエでした。そのデザインはワイドパンツの上にラップスカートを合わせたルックでしたが、以降モードを愛する男性の間でメンズスカートは「あり」となったのです。日本でもコムデギャルソンのスカートをパンツに重ねて履くスタイリングなどが人気を呼び、モード系と呼ばれるファッションを好む人の間ではメンズスカートやスカート風のワイドキュロットが浸透。モード系はコムデギャルソンやヨウジヤマモトが1980年代に提案した「黒の衝撃」と呼ばれる全身ブラックのスタイルがベースですが、これもアシンメトリーかつルーズなシルエットなど、フォルムで見せるデザイン。モード系にメンズスカートが広がったのは、スカートもモードなフォルムを構築する一つのピースだという感覚があったからかもしれませんね。


ジェンダーレスなメンズファッション

男性らしく、女性らしく、という言葉はもはや前時代的になりつつあります。そもそも女性のファッションにはマニッシュな装いという切り口が古くからあり、それこそイヴ・サンローランが生み出した「ル・スモーキング」と呼ばれるパンツスーツがそれにあたります。しかし長らく男性の女性的なファッションは、あるにはあったものの大きなムーブメントにまではなりませんでした。けれど性別を超えありのままの自分を発信する土壌が醸成しつつある今、いっそうメンズファッションのジェンダーレス化は進んでいくのではないでしょうか。

TEXT:横田愛子

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