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ヴィンテージの魅力を語り継ぐ VCM代表 十倍 直昭の「ぶれない夢の見つけ方」

2021年に日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム『VCM(Vintage Collection Mall)』を立ち上げ、渋谷PARCOにマーケット型リアルショップ『VCM MARKET BOOTH』をオープン。日本全国150店舗以上のショップが集う日本最大級のヴィンテージの祭典『VCM VINTAGE MARKET』を開催するなど、ヴィンテージの”プラットフォーム”として新しいアウトプットを模索する十倍 直昭さん。15年に渡って運営していたヴィンテージショップ『GRIMOIRE』を終了し、形を変えながらヴィンテージに携わり続ける十倍さんに、ヴィンテージの魅力と、「一切の後悔はない」と言い切るほどのぶれない生き方についてお話を伺いました。


世界を渡り歩いて見つけた「夢」

――ヴィンテージを好きになったきっかけは?

中学生の頃に友達に群馬のヴィンテージショップに連れて行ってもらったのがきっかけです。ちょうど90年代の第一次古着ブームの時ですね。初めてお店に足を踏み入れた時、ものすごい衝撃を受けました。内装にすごくこだわっていて、世界観がしっかり作りこまれたお店でした。そこから、海外ファッションやカルチャーに興味を持ち、「実際に海外に見に行くしかないな」と、18歳の時に初めてニューヨークに行くことに。一生懸命バイトをして貯めたお金で行く初めての海外旅行でした。英語も喋れない、右も左もわからないまま、「何をしていいのか、どこから手をつけていいのか全くわからない」という経験を買いに行ったようなものでしたね。ニューヨークは最先端のイメージがありますが、街自体には至るところに古い建物が残されています。古いものをしっかり残しながら新しく発展していく姿にとても刺激を受け、ヴィンテージの魅力を改めて深く感じる旅となりました。

――ニューヨークでの経験が今に繋がっているんですね。

最初は漠然と「世界を渡り歩く仕事がしたい」と思っていたので、まずは美容師の道を選びました。当時は美容師をテーマにしたドラマもあったりして、海外でバリバリ活躍するイメージだったんです。ただ、実際に美容師として働いてみるとサロンワークが多く、当たり前のことですが中々海外には行くことができませんでした。美容師を辞めて、23~25歳頃はバックパッカーとしてヨーロッパやアジアを一周したり、アメリカを横断したりと、世界中を旅して過ごしました。悩んでいる時こそ立ち止まるのではなく、行動しながら悩む方が性に合っていましたね。とにかく若いうちに海外の景色を見て沢山インプットすることで発想の幅を広げたかった。旅を続ける中で沢山の海外経験を活かした仕事をできないか考えた時に、自然と心から大好きなヴィンテージショップをオープンしようと思ったんです。25歳から26歳までバイトで開業資金を貯め、レディースのヴィンテージショップ『GRIMOIRE』を立ち上げました。

――好きだからこそ行動に起こせた?

そうですね。美容専門学生だった頃は、学校が終わったら毎日何軒ものヴィンテージショップをハシゴするほど夢中でしたから。僕がこの仕事を始めた2008年はレディース専門のヴィンテージショップは現在に比べるとそれほど数は多くなく、海外のマーケットでもまだまだレディースアイテムの展開には可能性があると感じていました。他にはない新しいジャンルを始めようと思い、アメリカやヨーロッパの良さを融合させたレディース向けヴィンテージショップを作ることにしたんです。

ヴィンテージの魅力を一層幅広く伝えるため、“ショップ”から”プラットフォーム”に

――15年目の節目を迎えたタイミングで『GRIMOIRE』を終了されたのはなぜですか?

2021年に立ち上げたヴィンテージの総合プラットフォーム『VCM(Vintage Collection Mall)』に注力するためというのが一番の理由です。レディースヴィンテージだけではなく、ヴィンテージを通して様々なジャンルの魅力を発信していきたいという想いから、プラットフォーム事業に変換していくことを決意しました。

――『VCM』はどのようなコンセプトで立ち上げられたのですか?

時代と海を越えて愛されてきた”ヴィンテージ”を後世に残していくこと、魅力を伝えていくことが僕たちの使命だと思っています。現在では、世界的にもヴィンテージの人気が高まり、希少価値の高いアイテムの値段は高騰しています。現在の日本には世界から見てもトップクラスに質の高いヴィンテージが集まっていて、世界中のコレクターさんやバイヤーさんが日本にヴィンテージを買い付けに来ることも珍しくありません。今やヴィンテージは、ハイブランドのアイテムにも引けを取らないくらい値段のつくものも多くあります。まだまだヴィンテージに触れる機会が少ない方々もたくさんいらっしゃると思いますが、様々な洋服や家具など、デザインの原点でもあるヴィンテージの価値をイベントやメディアを通じて発信していくことができればと考えています。

人生で一番お金と時間をかけてきたことは何か

――十倍さんは今でもヴィンテージについて学び続けているんですよね。お忙しい中で大変ではないですか?

ヴィンテージのプラットフォームを運営するうえでは、ファッションだけでなく雑貨やインテリアなど、幅広いジャンルへの知識が必要。今でも毎日勉強の時間は作るようにしています。昔の資料を読むだけでは手に入らない情報も多いので、当時の映画や雑誌を参考にすることもありますね。とにかく好きなことなので大変だと思ったことはありません。知識を叩き込めば叩き込むほど説得力が増して、ヴィンテージの魅力をより伝えることができる。知識は財産ですね。

――それだけ好きなことでも「辞めたい」と思うことはあったのでしょうか。

ヴィンテージ業界を辞めたいと思ったことは一度もありません。自分のお店を終了させてプラットフォーム『VCM』としてヴィンテージに関わり続けているように、「ヴィンテージであること」さえぶれなければ良いと思っています。今でもギャラリー運営や内装事業など、運営しているすべての事業がヴィンテージに関するもの。ここから先はヴィンテージの新しい可能性をまだまだ模索しながら、世界に発信していきたいと思っています。

――今後の展望としては、世界に向けて発信すること?

価値あるヴィンテージの多くが集まる日本で、観光地を創りたいんです。海外では国を挙げてフリーマーケットをやっているところが多くて、大手航空会社がツアーを組むほど。日本にはそこまで大きなフリーマーケットがないので、そういう場を『VCM』で創りたいなと思っています。その第一歩が『VCM VINTAGE MARKET』なんです。元々はECモールからスタートした『VCM』。全国各地の名店を家にいながら楽しめるというのはECモールの良さですが、一点ものをその目で見て、手にとるという「体験」はリアルならではのもの。その感覚を皆さんにも体験してもらいたいなと思っています。『VCM VINTAGE MARKET』は、様々な国や年代のアイテムがジャンルを越えて勢揃いします。世界中の方々にもこの熱気あるマーケットを訪れてもらえたら嬉しいですね。

※【VCM VINTAGE MARKET】――ファッション、インテリア、ライフスタイルといった様々なジャンルの「ヴィンテージ」にフォーカスし、日本全国150店舗以上のショップが揃う日本最大級のヴィンテージの祭典。

――最後に、アパレル業界へ転職を考える読者の方へアドバイスをお願いします。

僕は10代から今に至るまで、とにかくヴィンテージが大好きで今の仕事をしています。だからどれだけ大変なことでも苦じゃないんです。「好きなことってなんだろう」と考えると「あれも、これも」とぶれてしまう人もいるかもしれません。まずはこれまでの人生で「一番時間とお金をかけてきたこと」を思い出してみてください。それが無意識にやってきたあなたの一番好きなこと。「お金を稼ぎやすいのはこっち、でもやりたいのはあっち…」と考え始めると、ぶれてしまう。僕はもう青色なら青色って決めているので。それが濃い青色だろうが、薄い青色だろうが、青色ならなんでも良いんです。他の色に目移りすることはない。ぶれない“好き“を見つけたら、その時々のやりたいことを全力でやってみてください。全力でやってきたからこそ、失敗んも沢山してきましたが、今の人生に後悔は一切ありません。


十倍 直昭 とべ・なおあき

株式会社Grimoire 代表。

2008年にヴィンテージショップ『GRIMOIRE』オープン。

2021年にスタートした日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム『VCM(Vintage Collection Mall)』の立ち上げに伴い、『GRIMOIRE』15年目の節目に営業を終了。

現在は渋谷PARCOにてマーケット型リアルショップ『VCM MARKET BOOTH』の運営や、日本最大級のヴィンテージの祭典『VCM VINTAGE MARKET』を開催するなど、多岐に渡りヴィンテージの魅力を伝えている。

“国と時代と文化を繋ぐ” をコンセプトにギャラリー運営、ウェディング事業、 店舗内装など多分野で活動中。

https://www.instagram.com/vcm_vintagecollectionmall/

https://vintagecollectionmall.jp/

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/


TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)

PHOTO:坂野 則幸

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