『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展』

ウイメンズクリエイティブディレクターのマリア・グラツィア・キウリによる
春夏 2020 オートクチュールコレクションよりLOOK#220のドレス　
Photo © Yuriko Takagi

パリ装飾芸術美術館での成功に続き、ロンドンのヴィクトリア＆アルバート美術館、上海のロング・ミュージアム(西岸館)、中国の成都当代美術館、ニューヨークのブルックリン美術館、ドーハのM7など、世界を巡回してきた「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展がついに日本に上陸。ディオールと日本との真摯かつ貴重な絆を称える特別な展覧会が、2023年5月28日まで東京都現代美術館で開催されています。

「クリスチャンディオール」といえば、今では多くの人たちに最も馴染みがあるであろうコスメをはじめ、ファッション、フレグランス、アクセサリーなど幅広いアイテムを展開し、世界中の人々に愛されているフランス発の世界的有名ブランド。1946年にファッションデザイナーのクリスチャン・ディオールが自身のブティック「クリスチャンディオール・オートクチュール・メゾン」を創設したことから始まります。その名を一躍世界に広めたのは、最初のコレクションを発表した翌年2月のファッションショー。ウエストと袖のボリュームを際立たせるなど、革命的な「コロール(花冠)」ラインと「8」ラインで、くびれたウエストから広がるシルエットを確立し、ファッション史に残る『ニュールック』革命をもたらしました。また、1947年から1957年までのコレクションで、「ジグザグ」、「チューリップ」、「オブリーク」、「H」、「Ａ」、「Ｙ」ラインなど、新しいデザインを発表。今ではすっかり定着したシルエットラインを生み出しています。

そんな「クリスチャン・ディオール」の貴重なアーカイブ資料が公開される本展は、建築家・重松象平氏が日本文化へのオマージュとして新しい空間演出をデザインし、キュレーション担当のフロランス・ミュラー氏が再考案。美術商だった経歴を持つ創設者クリスチャン・ディオールが影響を受けた芸術から、彼の庭園に対する愛、豪華な舞踏会の魔法、ディオールのコレクションに最初から影響を与えていた日本の豊かな創造性への魅力など、素晴らしい発見を伴う75年を超える情熱にスポットが当てられた回顧展になっています。

展示されるのは、女性らしさを強調したデザイン、たっぷりと生地を使ったスタイルで当時、センセーショナルを巻き起こした「ニュールック」の永遠の象徴である「バー」スーツをはじめ、過去から現在までのアクセサリーやオートクチュールモデルの数々。

創設者のクリスチャン・ディオール、そして「トラペーズライン」を生み出したイヴ・サン＝ローラン、スリムルックの発表やメンズラインを始動させたマルク・ボアン、「ディオール」という概念を再定義したジャンフランコ・フィレ。そしてアヴァンギャルドかつゴージャスなコレクションを発表したジョン・ガリアーノ、メゾンの伝統を現代に引き継いだラフ・シモンズ、Dior発の女性デザイナーとなったマリア・グラツィア・キウリといった後継者である歴代のクリエイティブディレクターたちが考案した作品のひとつひとつも公開されています。

また、クリスチャン・ディオールの先見性を受け継ぎ、「ディオールレディアート」や「レディディオールアズシーンバイ」などで再解釈されたバッグ「レディディオール」に加え、「ミスディオール」、「ジャドール」といったフレグランスの世界など、ディオールの歴史と絶え間ない創意工夫の賜物である、斬新なアイコンも目にすることができます。その他にも、東京都現代美術館が所蔵する貴重な作品や、日本人写真家・高木由利子氏が本展およびポスターのために撮り下ろした写真など、魅力的な作品も展示される見逃せない内容になっています。

世界を巡回し多くの人々を魅了してきた貴重な展覧会で、ファッション業界に多大な影響を与えてきた、ブランドの歴史を感じられる作品をじっくりと堪能してください。

TEXT：金子裕希