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大阪農林会館のショップオーナーが語る「足を運んで買うということ」vol.2

大阪・南船場にある1930年に建設されたアンティークビル「大阪農林会館」。昭和レトロな雰囲気香るモダン建築として知られるこのビルは、個性的なショップが軒を連ねることから関西のファッション好きにとっては特別な場所。そんなビルに店を構えるショップオーナーにお話を伺うシリーズ企画第二回は、日本におけるヴィンテージ古着の草分け的存在として知られる“日本極東貿易”のオーナー、竹内登さんの登場です。ヴィヴィアン・ウエストウッドにコム・デ・ギャルソン、マルジェラまで、モード界にイノベーションとインパクトを与えたブランドを扱う理由、さらにはニュークリエーションともいえるオリジナルアイテムを作る真意はどこにあるのでしょう。

 


 

革新的な服だけがクラシックになり得る

Q.ロシアに迷い込んだかのような店内の雰囲気も個性的ですが、取り扱われているブランド古着はどれもアヴァンギャルドで着こなすのにパワーが必要な服ばかり。お店の歴史やセレクトの基準をお教えください。

曽祖父が1896年に旧ロシアで創業した会社の名前をもらい、2005年にオープンしました。僕自身、東欧の仄暗い雰囲気が好きだったこともあり、店内は旧ソ連の残像がよぎる空間になっています。
扱う古着は英国中心にフランスやイタリアで買い付けたものが中心ですが、共通しているのは革新性のあるブランドだということ。
ヴィヴィアンにしろギャルソンにしろ、登場時はモード界に一石を投じる存在でした。当時は革新的だったものが時を経た現在はクラシックとなっている、そういう部分に非常に魅力を感じます。
実は僕は服を着るよりも蒐集したいタイプ。コレクター気質なんです。
だから販売している服はコレクションの一部ということになるのですが、過去、ファッションの世界に衝撃を起こしたものやモード界に波紋を呼んだ服に引かれる性分。
それゆえ一般的には尖ったデザインだとされるブランドが中心になりました。

着たい服は過去に何か影響を与えた服

Q.古着の魅力、そしてご自身が着たい服、さらには今のトレンドについてどのようにお考えでしょう?

ノームコアが長らくトレンドですが、最近は纏いやすい洋服が増えていると感じます。年齢や性別を超えて誰が着てもそれなりに見えるもの。
でも僕は着やすい服はイヤ(笑)。
例えばうちの顧客にとっての服はある種武装のような一面もあり、着こなす気概が必要な服なので、袖を通すためには大袈裟だけど覚悟が必要。
でも後々振り返った時、あの時こんな服を着ていたと懐かしめるくらい印象的な1着であって欲しい。
僕が自分で着たいのも、印象的かつ発売時に世間に影響を与えた服です。
同様にミリタリーやワーク系も好きですが、これも本来の“制服”という用途と異なるシーンで着ることで制服がファッションとなるのが個人的に面白いなと感じます。
今はデザインが出尽くしたのか、革新的だ!と感じる洋服が減っていますよね。だからメッセージ性のある服を探そうとしたら、必然的に古着やヴィンテージになるんです。

 

Q.SNSやPOP UPショップなどで積極的に発信していますが、その理由は何でしょうか。

3年くらい前から日本各地でPOP UPショップをしていますが、当店を知る第一歩をこちらから提案しようと。
うちはどちらかと言えば内向的な店でしたが、今後は発信力が必要な時代。
実際にPOP UPがきっかけでご来店くださる方もおり、ショップのあり方も変わってきていると感じます。店舗って“待ち”の商売ですが、今はオンラインで店を知ることから購入までが完結できますよね。
でもあえてこちらから“会いに行く”のって面白いですよ。SNSはまだ手探り中ですが、インスタライブなどをメインに次世代へ向けたアプローチもやっていきたいと頑張っています。
以前はレアな品を置いていればお客様は来ると思っていましたが昨今は個人間で売買できるフリマアプリも増え、店やファッションのあり方も変化しつつあると感じますね。

店に合った空間を模索し次の一手へ

Q.15年前のオープン時、このビルを選んだのはどうしてですか?

今でこそハイソなイメージがありますが、オープン当時は何というかワケの分からない雰囲気のビルでした。
もっと雑多で古びていて、そこが気に入った理由です。だから今はこの近辺でオープン当初のような雰囲気の空間を探し中。
実は2月で一旦ここをクローズして春に向けて再始動の準備をする予定です。確かにこのビルは魅力的ですが、個人的には綺麗になりすぎてしまった気がして違和感を感じつつあります。
まだ具体的には決まっていないけれど、今度はサロンのような店づくりをしたいですね。服好きが集うだけでなく、これからファッションに興味を持つ人も巻き込んでいける店づくりが理想なんです。

Q.古着やヴィンテージ品を扱うには目利きが必要だと思いますが、どうやって審美眼を磨かれたのですか?

古着でマニアがいるのって、ヴィンテージデニムやミリタリーなんかのジャンルが以前は一般的でした。でもそれらのジャンルは既にデータが出来上がっているから新たな価値って見出しづらい。
僕がアヴァンギャルドな洋服のヴィンテージに興味を持ったのは、当時誰も扱っていなくてデータがなかったからです。これなら自分で価値を見出せると感じました。
買い付けではもちろん細部も見ますが、何より大事にしているのは第一印象。ぐっと心を掴まれたモノを選ぶことを重視しています。

ファンが多い店づくりの秘訣は自然体

Q.大阪はもとより各地にファンが多いお店として知られていますが、ズバリ店のファンを増やす秘訣は?

顧客の方は”アヴァンギャルドで行こう“という当店のコンセプトに共感してくださる方、いわゆる個性を重んじる洋服が好きな方が中心ですが、特にファンを増やそうと何かしてきたわけではありません。
強いて言えば自然体な接客でしょうか。スタッフもそうですが、洋服がとんがっているからといってとんがった接客をする必要はなく、あくまで同じテイストの服が好きな者同士という感覚です。
インスタライブではスタッフの見た目の第一印象と喋った時のギャップに驚かれるお客様が多いようで、親しみやすさを感じていただいているようです。


意味のない服やメッセージ性のない服に興味がないと言い切る竹内さんが選ぶのは、どれもデザイナーのアーカイブになり得たりファッション史に残るデザイナーやデザインが中心。当時賛否を巻き起こしたデザインが時を経てクラシックとなる、その過程が味わえるショップとして稀有な存在感であること。それこそが日本極東貿易がオープン以来ファッション好きを魅了してやまない理由なのでしょう。

店舗情報

日本極東貿易
〒542-0081 大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館301号室
https://boctok.jp/


 

TEXT:横田愛子
PHOTO:大久保啓二

 

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