4月20日（水）、IFIビジネス・スクール主催のストリートスタイルフォトグラファーシトウレイさんによるセミナー「シトウレイファッションセミナーvol.4」が行なわれました。シトウさんは、“オフ・ランウェイを見ると次のトレンドが見えてくる”という独自の審美眼で、コレクションに訪れる世界中のファッショニスタのスタイルを撮り続けています。
開催4回目となる今回は、写真を見るときのコツやポイント、そして2016年秋冬のパリコレ オフ・ランウェイでは何が起こっていたのか、など数々のキーワードで解説してくれました。
ファッションを通じてスキルアップすることが目的
シトウさんは、パリコレでのオフ・ランウェイ写真を見る前に、写真を見るコツについて2つ大切なことを挙げられました。
「一つ目は、写真を見て“いいな、可愛いな”と思ったら、次に“なぜ好きなのか？”という理由を考え、言葉にすることが大切です。自分は、トップスの重ね方が好きなのか、首にスカーフを巻いているところが好きなのか、はたまた単純に顔が好きなのか、好きの中にもさまざまな理由があり、それを一つ一つ言葉で書いてみる。言葉に書くことで今の自分の嗜好や好きな傾向を理論的に解釈でき、第３者に伝えることができます。例えばデザイナーであれば、自分の考えていることを言語化して相手に伝えられますし、PRの仕事であれば商品説明だけでなく、より深く相手にささる言葉で伝えられます。なぜ言語化が必要かというと相手との共通項が言葉だからです。
二つ目は、自分ならどう着るか？を考えること。スナップを見て、“いいな”と思ったら次に自分だったらどう着るかを考える。老若男女関わらずファッションを楽しんでいる人からサンプリングすることでアイデアが広がります。このセミナーの裏テーマはスナップを見てセンスを高めることと、思考力をアップすること。ただ可愛いで終わらせるのではなく、なぜ好きなのか、自分ならどう着るか、ぜひ考えてみてください。ファッションを通じ思考力を鍛えることで、社会的なニュースなどファッション以外のコンテンツに対しても、主体的に向き合うことができるようになると思います」
オフ・ランウェイで見るファッショントレンド
2016年秋冬トレンド総括では、色や素材、アイテム別にさまざまな傾向についてお話がありました。セミナー中、スクリーンに映し出されたシトウさん撮影のスナップを聴講者はすべて撮影が可能。
デザインや販売に携わる人々が多く集まった今回も、スクリーンの写真が切り替わる度にスマートフォンのシャッター音が鳴り響きました。ファッション業界に携わる人にとって、自分のお店ならこうかもしれない、ここが活かせるかもしれない、と多くの刺激が感じられる内容でした。
何を着るかではなく、どう着るか
第2部では、ELLE編集長代理を務める富永亜紀さんを迎え、オン・ランウェイのトレンドについてクロストークが行われました。富永さんからは、パリコレで注目したブランドについてや、ファッション業界全体の変化などについてお話がありました。
「デザイナー交代もあり、モードの過渡期とクリエイティブディレクターの存在がいかに大きいかを肌で感じるシーズンでした。自分たちにとって何がクールか、それぞれの年代でクールの違いを感じるようなコレクションも目立ち、ストリートの勢いも感じました。ショーの形式やショーでお披露目されたアイテムの売り方もさまざま。ファッションもクチュールのテクニックと遊び心で、定番にひねりを加えたコレクションも目立ち、いかに”リアルに着てもらうか”もひとつのテーマだったように感じます。アクセサリーだけじゃなく、いかにお洋服を売っていくか、着たいと思えるものを着方も含めてどう提案して発信していくか。ブランドごとのデジタルやSNSとの関わり方もまた、印象的なシーズンでした。
テロ事件があったパリ、今のこの時代にファッションで何ができるかを各デザイナーが考え、心揺さぶられるクリエイションをする。そして、媒体もその思いに感電して原点に返って発信していく。そういった、ファッションの連鎖を感じられるパリだった気がします。シトウさんも言っていましたが、これからは何を着るかではなく、どう着るかということも重要になってくると思います」
この傾向についてシトウさんも、「靴とバッグで売上を立てていく事を無くそう！っていうような動きが多くなったように感じますね。その動きで実際に売れているブランドのデザイナーの多くが若い世代だと思う」と分析されました。
ただ着るだけではなく、ファッションができることや、これからのファッションに求められることなど、ファッションに携わる全ての人にとって多くのヒントが詰まったセミナーでした。
今回お伺いした主催団体
IFI ビジネス・スクール
ファッション・ビジネス界で活躍するプロフェッショナルを育てるファッション業界に特化したビジネススクール。ファッション業界を目指す人や業界で働く人々に向け、様々な講演や講座を行う。
