面接のテクニックを学ぶ前にきちんと考えておきたい“本当にやりたい仕事の見つけ方”について、コミュニケーション術のプロ、西任暁子さんによるアドバイスの続きをお届けします。
本当の自分のニーズが分かる!日常の小さな願望を見逃さないで
前回は、本当にやりたい仕事を見つけるための3つの方法の1つ目、「子どもの頃に夢中になったことを書き出すこと」について教えていただきました。今回は、残りの2つについて詳しく解説していただきます。
1. 子どもの頃、6~7歳頃までに夢中になったことを書き出すこと。
2. 日常で自分がやりたい小さなことを実践していくこと。
3. 100リストを書くこと。
2. 日常でやりたいことを実行する
−前回は1つめを教えていただきましたが、次の“日常でやりたいことを実行する”、というのは具体的にどういったことなのでしょうか?
ほとんどの方が自分の願望というと、大きなスケールで考えがちで、目の前の小さなこととは、別のことだと思っています。でも、その小さなことの先にこそ、大きな願望が待っていますよ、ってお伝えしたいんです。
小さなことっていうのは、本当に些細なことでいいんです。例えば朝起きて飲みたいのは、コーヒーなのか、紅茶なのか、あるいはハーブティーなのか、お水なのか?その時、自分が望む小さなことから、一つずつやってみるのです。すると、その先にある大きなやりたいことに一歩近づきます。
もし映画を観たい!と思ったけれど、「雨が降っているし、まあいいや」と思うなど、やりたいことを実行しないと、自分が好きなことには近づけません。一つやりたいことを実行すると、次にやりたいことが見えてくる。それをまた実行したら、そのまた次にやりたいことがどんどん見えてくる、といった具合で、自分が好きな大きなことって、徐々にわかるようになるんです。
−「まあいいや」が続いてしまうとどうなってしまうのでしょうか?
元気がなくなると思います。なぜなら、「まあいいや」は、自分を大切にしない生き方だから。何をやりたいと思うかって、人それぞれですよね。ということは、やりたいこと=その人、なんです。だから、やりたいことをやることは、その人が自分を大切にすることです。自分を大切にしていなければ、ストレスが溜まったり、自信を無くしたり、やる気がでなくなると思いませんか。
小さなことでも、実際に行動してみると次の何かが見えてきます。たとえ小さな階段でも、1段上ると見える景色って変わりますよね。そんなふうに、やりたいことがどんどん見えてくるんです。また、実際にやってみると、本当にそれが好きなのかどうかもわかりますしね。
3. 100の欲しいものリストを書く
−そして3つ目の100リストですが、これについてもお聞かせください。
100リストとは、自分がやってみたいことや欲しいものなど、なんでもいいので自分の願いを100個書くリストのことです。100個ってやってみると難しいんです。50個くらいまでは、わりとラクに書けるんですが、その先がむずかしい。でも実は、その50個以降の願望にこそ、深層心理が出ると言われています。だから、頑張って100個書き上げてみてください。そのあとは、それを俯瞰で眺めて分類してみること。私が以前100リストを書いた時には、欲しいものを3つに分類できるって気づいたんです。
−100個の願望がたったの3つに分類できたのですか!それはなんだったのでしょう。
まずは快適な住空間。例えば靴が全部入るシューズボックスが欲しいとか、陽当たりが良くて寝転がれるリビングが欲しいとか、物欲は住まいに関することだけでした。2つ目が友達。例えば家でパーティしたいとか、大切な友達と旅行に行く、など人とのつながりを大切にする願望も多かったですね。そして3つ目が自己成長。もっと学びたい、新しいことを知りたい、体験したいという願いでした。
そこで広いところに引っ越し、忙しくてもホームパーティーを開いたり、学びたいことには躊躇せず自己投資することにしました。すると面白いもので、あんなにやりたくて仕方なかったはずのことが、そうでもないなと気づいたり、やっぱり大切だと思えたりする。たとえば今は、当時住んでいた部屋の3分の1以下の広さに住んでいます(笑)。そんなに広くない方が暮らしやすいと気がついたからです。そうやって、ひとつずつやっていくと、次にやりたいことや好きなことがどんどん見つかっていきました。
嫌がられる個性も、場所が変われば才能に
−自分の好きなことがわかると、本当にやりたい仕事も見つけやすくなりますよね。
そうなんです。例えば私の場合は、問題解決が大好きだとある時気がつきました。困っている人を見るとその人の問題を解決したくなる。お節介というか(笑)。ただ、それって、ずっと嫌がられていた短所だったので、封じ込めていたんです。「これはこうするといいよ。なぜかというと………」って、求められてもいないのに分析やアドバイスされたら、誰だって嫌ですよね。
でも、長所と短所は裏返しって言うように、ある時、その能力で感謝されたのですよ。プレゼンする中小企業の社長さんたちを見た時、お節介心を抑えられなくなって、ここはもっとこうしたほうがいい、などアドバイスしたら、すごく喜ばれたんです。そしてもっと教えて欲しいというご要望をいただくうちに、それが現在の仕事になりました。場面が変わると、人に嫌がられているような個性も、才能になるんです。
−強みとそれを発揮する場がうまく合致すれば、才能として生かすことができるのですね。
そうなんです。人と違うということは、他の人にはない特徴を持っているということですから、それは活かし方次第で魅力になります。短所だと思っていることは、むしろ長所かもしれません。
−まったく考えていなかった新しい自分の仕事が見つかる可能性もありますね。
「好き」や「得意」を仕事に活かす!
そうですね。短所を仕事にしようなんて最初は思わないですよね。しかし、自分が好きなことや得意なことがはっきりわかると、それを好きな分野の仕事で活かしていけると思います。
たとえば、私のように問題解決が好きな方がファッション業界で働くとすると、スタイリストなんていいかもしれません。クライアントさんのスタイリングの課題に気づき、こうやったらもっと素敵に見える、といった着こなしを考えることが好きだと思いますから。あるいは編集が好きな人もスタイリストに向いているでしょうね。0から1を生み出すデザインはむずかしくても、センス良く組み合わせる才能を発揮できるでしょう。
競争が好きな人は営業、社交が好きな人は営業や接客、探求が好きな人はリサーチなど、自分が好きなことや得意なことを、仕事にどんどん活かしていけたらいいですね。
同じファッションというフィールドでも、能力によって生かされる場は変わってきます。そういうことは会社の人事が決めてくれると思っているとしたら、それまで待つしかありません。誰かに決めてもらおうとするのではなく、「自分はこういうことが好き。だからこういう部署、こういう職務がやりたい!」と気づいて、言えるようになったらいいなと思います。
ぜひ、自分の人生の主導権を握っていってください!
次回に続く>>
働くことに喜びを見出せている人は、自分の強みを知っていて、かつそれを生かせる場がどこにあるのか、きちんと考えられる人だということがよくわかりました。
さて、自分が本当にやりたい仕事を見つけることができたら、次は働きたい会社に自分の熱意を伝えるステップが待っています。次回は、多くの方が悩んでいる「面接」でのコツやポイントについて、西任さんにアドバイスして頂きます!
(Interview&Text:Etsuko Soeda)
今回お話を伺った方
U.B.U.株式会社 代表取締役 西任暁子さん
ラジオDJを経て、経営者やビジネスリーダー向けにスピーチやファシリテーション、コミュニケーションの指導を行う。これまで著書に「話すより10倍ラク!聞く会話術」「『ひらがな』で話す技術」があり、4月7日に発売する「本音に気づく会話術」で3冊目となる。
今回お話を伺った西任暁子さんの著書
新著『本音に気づく会話術』
4月7日に発売!詳しくはこちら>>
ビジネスシーンに限らず、大切な家族や友人との関係作りに役立つ、あらゆるシチュエーションに応用可能な実践的コミュニケーションスキルが身に着く一冊。
「話すより10倍ラク!聞く会話術」
ラジオDJとして経営者、歌手、俳優、スポーツ選手、医者、映画監督、写真家など、のべ5000人を超えるゲストへインタビューを経験された西任さんが、相手に気持よく話をしてもらうため会話術を綴った指南本。
「『ひらがな』で話す技術」
本当なら内容を しっかりと伝えたいはずの相手にとって「わかりにくい」話し方をしてしまっている人が多い中、どうすれば相手にとって「わかりやすい」話し方ができるのか?を解い究極の秘訣本。