ファッション業界でも、大量生産・大量消費が問題とされています。そんな深刻な問題を取り上げたドキュメンタリー映画「THE TRUE COST(ザ・トゥルー・コスト)〜ファストファッション真の代償〜」が11月14日(土)、日本での上映をスタートしました。
映画が作られるきっかけとなった、バングラデシュの縫製工場「ラナプラザ」の崩壊事故。事故から約2年半経った現在もガーメントワーカー達は、労働環境の未改善や不当な労働、低賃金労働など、多くの“労働者の権利”が否定されたまま働いています。
ここ数十年で服の価格はどんどん低下し、消費者の立場からすれば気軽にファッションを楽しむための環境が増えてきましたが、その一方で低コストに抑えるための犠牲となっている生産の現場があることを忘れてはなりません。
この映画には、ステラ・マッカートニーやリヴィア・ファースなどファッション業界で影響のある人物が登場しており、ファッションに関わる人がいかに知らなければならない問題だということが分かります。
売る側としても、買う側としても、決して目を背けてはならない真実のストーリーを知ることが出来る作品です。
ピープル・ツリー胤森さんが語る、ファッションの生産現場が抱える問題
14日の公開日には、ピープル・ツリーで広報ディレクターを務める胤森なお子さんを迎えてのトークショーも行われ、「ザ・トゥルー・コスト」を通じて考える、ファッション業界が抱える問題点やこれからのファッションとの向き合い方についてお話しされました。
「いま、ファッションの生産現場では、数千の下請け業者がいる企業も少なくありません。それによって、バイヤーが自分で発注した全ての商品をどこの誰が作っているかまで把握することが出来なくなりました。
ものを買う基準が、デザインや価格だけではなく、どこで作られているか、誰の手で作られているかを知り、買いたくなるようなブランドが今後増えていくと良いと思います。ピープル・ツリーでは、フェアトレードを通じてそのような価値観を発信する活動をしています。
ピープル・ツリーは、ラナプラザがあったバングラデシュでもフェアトレードの活動をしています。そこで見る、ラナプラザのようなバングラデシュの工場で働く労働者達は、非常に劣悪な環境で集団生活をしています。
首都ダッカの近郊には、たくさんの生産工場があり、郊外の農村の人たちが仕事を求めて出稼ぎに来ています。住む場所はスラム街で、何百人もの労働者が同じ小屋で暮らし、朝何キロも歩いて工場へ向かう生活をしています。彼らはバスに乗るお金も払えないほど、安い賃金での労働を強いられています。
このようなアンフェアな現状から、ものを買う人達が作ってくれた人にきちんと感謝が出来て、その人達が最低限の生活が出来る賃金が払われるような仕組みに変えていかなければならないと思います」。
胤森さんは最後に、服を買うときにその商品が「Want(欲しい)」なのか、「Need(必要)」なのかを考えることも大切だとお話しされました。「Want」は広告など外からの影響で増幅されるため、本来必要のないものを買って使い捨ててしまうことにつながるのです。
「Want」も「Need」も、買い物に欠かせない感情ですが、どんなものにも愛着を持ち、服を簡単に使い捨ててはいけない。服を大切にしていきたいという思いが湧き、考えさせられるトークショーでした。
ファッション業界で働く人に観てほしい映画
きっと多くの人がこの映画を観た後に感じるのは、「ファッションに対してどう向き合っていくか?」ということ。描かれるのは煌びやかなランウェイや、華やかなショップを見るだけでは知ることができない衝撃的な内容ですが、同時にファッションが持つパワーというものがいかに大きいかを知ることができるストーリーだと思います。
ぜひファッション業界で働く人に、観て欲しい映画!
【公開情報】
タイトル:「THE TRUE COST 〜ファストファッション真の代償〜(ザ・トゥルー・コスト)」
公開:2015年11月14日(土)〜 渋谷アップリンク 他
オフィシャルサイト:http://unitedpeople.jp/truecost/
※ファストファッション業界で働く人へ優待券があります。
配給:ユナイテッドピープル
© 2015 UNITED PEOPLE