ラグジュアリーブランドへの転職で多い“憧れ”と“現実”とのギャップ。ブランドへの“憧れ”が強すぎると、描いていたキャリアを上手く築けないことが多々あります。様々なケースがありますが、ラグジュアリーブランドへの転職を果たし、その後長く続けられる人と半年で辞めてしまう人にはどんな違いがあるのでしょうか?
今回は、複数の外資系ラグジュアリーブランドで販売職のキャリアを長年積んでこられたMさんに、実際に長く続けられる人と半年で辞めてしまう人の違いについてお話を伺いました。
実際、ラグジュアリーブランドに“憧れ”で入社する人は多い?
−ラグジュアリーブランドに入社する人は、どんなところに惹かれて入社している?
実際にブランドに“憧れ”で入社する方は多いですよ。例えば老舗メゾンの場合、その歴史に強く共感している方や、クリエイティブ・ディレクターやデザイナーを崇拝していたり、コレクションが好き…などが憧れの理由です。
ラグジュアリーブランドは、誰もが知っている有名なブランドだからこそ、異業種から転職する方も多くいます。私がいたショップでは、前職が国内アパレルブランドの方以外に、CA(客室乗務員)の人や、元銀行員の人も多かったですね。名の知れたブランドということで、安定していそう、給料が良さそう、華やかな仕事に見えるなど、「ブランドイメージ=職場環境」というイメージを持った人が多い傾向にあります。
ラグジュアリーブランドで働くイメージ
- 仕事が安定していそう
- 給料が良さそう(インセンティブがある)
- 福利厚生などが整っていそう
- 待遇が良さそう
- 仕事が華やかそう
−なぜ辞めてしまう人は、「半年」が多い傾向なのでしょうか。
例外ももちろんありますが、半年を過ぎて続けている人は、その後何年も続けている人が多いイメージです。なぜ半年かというのは、コレクションの回転や、業務を覚えたり、会社のことを知るためのある程度の期間だからかもしれません。
最初憧れて入社した時は同じ気持ちだとしても、長く続けられる人は現実を踏まえた上で「やっぱりこのブランドはすごい!」という気持ちを持ちます。ギャップまで楽しむからこそ、向上していけるんだと思います。
“憧れ”で入社。ギャップを知った上で、長く働き続ける人と半年で辞めてしまう人の決定的な違い
−Mさんはラグジュアリーブランドでの経験を通じて、長く続けられる人と半年で辞めてしまう人の違いはどんなところだと思いますか?
長く続けられる人もブランドへの憧れを持っていますが、憧れだけではなく、それ以上にここで頑張ろうという強い意志を持っています。自分がブランドの世界に染まる覚悟を持っています。
それに対して、半年で辞めてしまう人が主に感じるギャップは下記のようなものが多く見られます。
ギャップに感じた人の声
- 「売り上げを取ることが思ったよりも簡単ではなかった」
- 「自分より年齢層が高いお客様の顧客化が難しい」
- 「ブランドイメージを体現するためのルールが厳しかった」
- 「イメージしていたより仕事量が多いと思った」
- 「販売のキャリアが長いのに改めて基本的なことを覚えるのが大変だった」
このように、責任感とやる気の違いによってギャップに対する捉え方が大きく違います。長く続けられる人は、プロフェッショナルになるためにこうしたギャップを全て“やり甲斐”と捉え、学ぶ姿勢を持っています。
長く続けるために必要なこと
−せっかく入社したのに、入社前の憧れが強すぎるために辞めてしまうのはもったいない気がします。長く続けるために必要なことはどんなことなのでしょうか。
他の仕事でも同じことが言えますが、お客様はもちろん、同僚(ショップ、本社)、他店舗、百貨店としっかりコミュニケーションを取ることが大切です。周りとの深い関係構築をすることで、自身が向上し続けようとする気持ちも湧いてくるはずです。また、コレクションや、競合ブランド、顧客層のライフスタイルなどに関わりを持つことで「自分がブランドの一員だ」という自覚も生まれます。
−長く続けることで得られることも多いでしょうか?
長く続けることで得られることはたくさんありますよ。例えば、毎年参加できるパーティで、5年、10年、15年…といった勤続年数ごとにブランドのアイテムがプレゼントされたり、物理的なメリットもあります。また、年数を重ねるとその分受けられるトレーニングも多いため、スペシャリストへの昇格など、自分自身の精神の向上やスキルアップのチャンスが広がっていきます。
ギャップはあるといっても、イメージ通りの部分もきちんとあります。例えば、全国にあるので自分のプライベートの変化によって転勤願いが出せたり、それに対する手当も多い。産休制度などの休暇制度も整っているので安心できるところなど、ラグジュアリーブランドで働き続けることのメリットは大きいと思います。
−ありがとうございました!
ラグジュアリーブランドに限らず、入社前と入社後のギャップはどんな職種でもあります。大切なのは、いかにそのギャップを想定して転職活動できるかということ。ラグジュアリーブランドを目指している人は、憧れだけではなく、自分がその道のプロフェッショナルとして成長する姿を想像して挑むことが大切なようです。