毎日最新のファッションに身を包み、華やかな印象を持たれることも多いファッション業界のお仕事。先日は、某有名モード誌の編集長が被服手当を2,000万円貰っているらしい!という記事が。このような大きい金額の「被服手当」を得ることは特殊なケースではありますが、ショップスタッフでは制服の貸与がある場合もありますし、オフィススタッフの場合は役職や職種によって「クロージング・アローワンス」という制度を設けている場合があります。今回はファッション業界の”被服手当”事情についてのご質問にお答えしています。
先日こんな見出しがネット上を賑わせておりましたね。
アナ・ウィンター(64)は年間20万ドル(2,080万円)の被服手当を支給されているようだ。
(中略)
「The New York Times」紙によると、「VOGUE」編集主任を務めるアナは年間20万ドルもの被服手当を受け取っており、社を代表して3,000ものファッションショーに出席したという。
過去に数多くの雇用契約書を見てきましたが、「被服手当」が契約書に明記されているのを目にしたことはありません。
話題になったアナ・ウィンターは編集者として出版社で働いており、ファッションブランドや企業で働く方達とは立場が異なります。ファッションブランドや企業に勤めても、残念ながら「被服手当」をもらうことは叶わないでしょう。

一方で、「被服手当」に似た「被服貸与」をベネフィット(福利厚生)として受けることができる場合があります。年間に契約で定められた金額の商品を「貸与」という形で受取ることができる、一般的には「クロージング・アローワンス」と呼ばれる権利です。
「クロージング・アローワンス」って何?
業務時に自社の商品を着用するために、商品を貸与されることを言います。「貸与」ですので、基本的には退職時に全て返却することになっています。会社によっては退職時、一定の金額を支払って買い取りが出来る場合もあるようです。
どの位の金額分を貸与できるの?
スタッフレベル、マネージャーレベル、ディレクターレベル等、職位の役職レベルによって金額が上下します。会社によっても金額ベースが異なるようです。数十万から数百万といったところでしょうか。あらかじめ雇用契約書で定められた年間予算まで支給が可能です。
好きな商品を選べる?
展示会などで好みの商品をチェックして、オーダーをするなど、基本的には自由に選ぶことができます。「売れ筋商品、新商品はNG」「直属の上司やMDなどの商品責任者の承認が必要」など会社によってさまざまな制約があるようです。
「クロージング・アローワンス」は全ての会社に存在する?
すべての会社が取り入れている訳ではありません。個人的な見解ですが、商品単価が高い外資系ラグジュアリーブランドでは、クロージング・アローワンスを取り入れていることが多いです。
制度が無い会社でも、制服支給や商品を割引価格で購入することができる社販購入の制度、社員・家族向けのセールイベント(ファミリーセール)などの福利厚生の制度を実施しています。
「クロージング・アローワンス」は誰でも受け取ることが出来る?
クロージング・アローワンスの制度が存在する会社でも、ディレクターなど経営陣をはじめ、PRやマーチャンダイザーの職種が対象になることが多く、残念ながらすべての社員が受取ることができるわけではありません。彼らは社外の方(お取引先やお客様、プレス関係者など)とお会いする機会が多く、その際に「自社の商品を身に着けている」ことはひとつのマナーになるからです。
余談ですが、ブランドの象徴となって活躍するPR職の方は、パーティーやイベントなどに出席する機会が多いこともあり、クロージング・アローワンスを受取ってはいるけれど、その金額が十分に足りている訳ではなく……自腹で追加の商品購入を余儀なくされている場合も多いよう。家計を圧迫することもしばしばとか……。
クロージング・アローワンスは雇用契約書に明記されていることが一般的ですが、企業によってさまざまな制度を設けているため、内定時に被服手当や被服貸与など、ベネフィット(福利厚生)の確認をすることをおすすめします。
今回お話を聞かせてくれた転職コンサルタント
エーバルーンコンサルティング
代表取締役 池松 孝志さん









