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『LOVE ファッション ー私を着がえるとき』

ドレス(ローブ・ア・ラ・フランセーズ)(部分) フランス 1775 年(テキスタ
イル 1760 年代) © 京都服飾文化研究財団、撮影:畠山崇

服を着る。これは私たち人間にとって日常の当たり前の、かつ普遍的な営みながらも、そこには道具としての衣服を超える“何か”が潜んでいます。お気に入りの服を着たいと思う願望、服を通して憧れの存在に近づきたいという憧れ。また、ありのままの自分でいたい、時には我を忘れるようなファッションに身を包みたいと願うことも。服を着る人たちの願望や情熱は、まさに「LOVE」そのものです。そしてファッションは、私たちのLOVEを受け止める存在かもしれません。まるで万華鏡のようにカラフルなファッションの世界を覗ける展覧会が、この秋、京都国立近代美術館で開催されています。京都国立近代美術館と京都服飾文化研究財団が共同で開催する本展では、服を着ること、創作すること、さらには装う人の内面を表すような現代アートまで、ファッションとアートが織りなす世界を紹介しています。

着ることの面白さ、奥深さを再認識

人類の長い歴史の中で、「着る」ことにさまざまな情熱を傾けてきた私たち。例えば18世紀に絹織物の文様にも現れた毛皮は、かつて富や豊かさの象徴でした。しかし現在では動物保護の観点から批判にさらされることもあり、けれどもその手触りに魅了され手放せないものである、という相反する価値観を含んでいます。本展では京都服飾文化研究財団が厳選した18世紀から現代までの衣服作品を通し、「着ること」をめぐる人々の多様な願望である「LOVE」と、そのありようを見つめ直す試みがなされています。

Gaultier Paris by sacai アンサンブル 「I Gaultier under my skin」2021 年秋冬
© 京都服飾文化研究財団、撮影:守屋友樹

着る人や創作する人の「LOVE」に満ちた作品たち

華麗な花柄が印象的な18世紀の宮廷服や、今にも羽ばたきそうなほどにリアルな鳥があしらわれた帽子、極端に細いウエストや顔よりも大きく膨らませた袖のドレスなど、ファッションの歴史を振り返ってみると、時に過剰であり奇抜にすら思える装いが流行してきました。しかしこれらの過剰かつ奇抜な装いにこそ、当時の人々の美意識が凝縮されているのではないでしょうか。その美意識は現代まで脈々とつながり、今のデザイナーたちも新たなフォルムや意味を服に込め、ファッションを前進させ続けています。極限までデザインを削ぎ落としミニマルなデザインに仕上げるヘルムート・ラングや、固定概念を揺さぶる服を生み出すコム・デ・ギャルソンの川久保玲。挑発的なコレクションでファッション界に衝撃を与えたジャン=ポール・ゴルチエと日本のブランド、サカイのコラボレーションによるオートクチュール作品など、本展では「着る側」と「作る側」、それぞれの熱いLOVEから誕生した装いの数々が登場します。

服を着る「私」の存在に着目した現代アート

服を着ることは、自分自身、つまり「私」という存在の輪郭をかたち作る行為でもあるでしょう。本展ではさまざまな願望や葛藤を抱えながら現代を生きる多様な「私」のありようを、現在活躍するアーティストたちの作品を通して紹介。日常を切り取りありのままに生きることを肯定するヴォルフガング・ティルマンスの写真、同世代の女性たちのインタビューを題材に、その日常と内面を描き出す松川朋奈の絵画、背負う貝殻を変えるヤドカリの姿に人のアイデンティティを重ね合わせるAKI INOMATAの作品などを通し、「私」をめぐる問いの現在形を探ります。また、展示に朝吹真理子著『TIMELESS』、村田沙耶香著「素敵な素材」、岡崎京子作『へルタースケルター』など、「装う私」に渦巻く欲望の淀みが描かれた文学や漫画作品を挿話する試みを実施。これらの作品から行間に挟み込まれた「私の物語」と出会える仕掛けが施されており、それは衣服を着る私たちが自己を問い直すための拠り所となるはずです。

J. C. de Castelbajac(ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック) コート 1988年秋冬 ©京都服飾文化研究財団、撮影:来田猛
Balenciaga(クリストバル・バレンシアガ) イヴニング・ドレス 1951年冬 ©京都服飾文化研究財団、撮影:畠山崇
Helmut Lang(ヘルムート・ラング)カーディガン 2003年春夏  ©京都服飾文化研究財団、ヘルムート・ラング寄贈 撮影:守屋友樹

着ることへの情熱や願望を表すキーワードで展示を構成

服を「着る」こと。こんな服を着たい、あの服が欲しい、それに、あんな服を作りたいまで、本展は着ることにまつわる情熱や願望を表すキーワードをもとに、5つの章で構成されています。自然界からもたらされた人類最初の服の記憶を継ぐボタニカルな柄や刺繍、美への憧れをファッションに託したコルセットなどに代表される造形、自分らしさやありのままの自己を追求したファッション、国や性別といったカテゴライズを超越する願望を託した装い、そして異なる自分に導いてくれる我を忘れるような服まで。「自然にかえりたい」、「きれいになりたい」、「ありのままでいたい」、「自由になりたい」、「我を忘れたい」と名付けられた各章をめぐりながら、わたしたちとファッションとの関わりについて紐解いていきます。

展示空間そのものにも注目

京都国立近代美術館と京都服飾文化研究財団がこれまで手がけてきたファッション展では、藤本壮介氏や元木大輔氏たち建築家による展覧会コンセプトに相応しいユニークな展示空間が実現されてきました。今回の展覧会ではグラフィック・デザインに岡﨑真理子氏、会場デザインにGROUPを起用。展示内容はもとより、若手の新鮮な感性によるビジュアルや会場デザインも見どころのひとつとなっています。


【INFORMATION】

『LOVE ファッション ー私を着がえるとき』

会場:京都国立近代美術館(岡崎公園内)

会期:2024年9月13日(金)〜11月24日(日)

※休館日:月曜日、ただし祝休日は開館し翌日火曜は休館

時間:10:00〜18:00、金曜は〜20:00 ※最終入館は閉館の30分前まで

公式サイト:https://www.kci.or.jp/love/index.html


TEXT:橫田愛子

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