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「3.1フィリップ リム」デザイナー、CEOが語る創立10年の軌跡 |特別講演会 イベントレポート【前編】

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NY発のモダンラグジュアリーブランド、3.1フィリップ リムが、昨年創立10周年を迎えました。それを記念した特別講演が3月28日、早稲田大学 井深大記念ホールで開催。

デザイナーのフィリップ・リムさん、共同創業者でCEOのウェン・ゾウさんを迎え、これまでのブランドの軌跡をたっぷり語ってくれました。インタビュアーに彼らをデビュー直後から注目し続けてきた、元SPUR編集長で現在「T JAPAN」編集長の内田秀美さんを迎えて行われた貴重な講演内容をレポートします。

「3.1フィリップ リム」、“3.1”に込められたストーリー

まずはフィリップさん、ウェンさん、そして内田編集長の順にステージに登場。大きな拍手で迎えられました。それぞれの挨拶に続いて、早速公開インタビューがスタートします。

内田編集長(以下、内田):まずは会場の皆さんに聞きたいのですが、この講演会の開催が告知された時、また申し込まれた時に、ブランド名やフィリップ・リムという名前を知っていた人はどのくらいいますか?

(会場のほとんどの人が挙手)

内田:うわぁ!(フィリップさんたちに向かって)よかったね!それでは3.1フィリップ リムの洋服を着たことがあったり、バッグを持っているという人は?

(またまた多数の手が挙がります)

内田:すごい!(またフィリップさんたちに対して)よかったね。それでは最後の質問です。3.1フィリップ リムの3.1という意味を知っている方いらっしゃいますか?

(会場の半分くらいほどの挙手)

内田:なるほど。私も今回の講演の最初は、ぜひこのことについて2人から話してもらいたかったんです。“3.1”の由来とはなんでしょう?

ウェン・ゾウ(以下、ウェン):その由来を説明するにはかなり前まで遡らなくてはならないけれど、私がフィリップと出会ったのは20代の初めの頃。私はテキスタイルカンパニーを経営していて、当時のビジネスパートナーに、LAにあるディベロップメントという会社にすごく才能溢れるデザイナーがいるから絶対に会うべきだって言われていたの。その後、パリのプルミエール・ヴィジョン(テキスタイルの見本市)で、彼と初めて会う機会があったの。私はパーティを主催していたのだけれど、その夜着る予定だったドレスのスパンコールがほつれてしまって。どうしていいかわからなくて、とにかくフィリップに助けを求めたわ。そうしたら彼は親切にもドレスをきれいに直してくれたの。私にとってまるでシンデレラストーリーのようだったわ。

その時から友達になった。ある時フィリップがディベロップメントを辞めたと聞いて、ニューヨークに来ない?って誘ったの。一緒にビジネスを立ち上げない?ってね。それが、私たちがちょうど“31歳”の時だったの。

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内田:“31歳”だから“3.1”という訳ですね。因みにフィリップはウェンに会う前から彼女のことを知っていたの?

フィリップ・リム(以下、フィリップ):彼女がテキスタイルカンパニーのオーナーだったことは知っていたよ。プルミエール・ヴィジョンで出会ってからは、同じファッションビジネスに身を置いているから仕事の話もできるし、とにかく気が合ったんだよね。

「彼の作る服を自分自身が着たかった」

内田:そうしてしばらく交流が続いた後、一緒にブランドを始めようと思ったきっかけは何だったのですか?

ウェン:とても個人的な理由よ(笑)。彼のデザインする服は本当に美しくて、彼の作る服を自分自身が着たかったというのが、ブランドを立ち上げようと思った最初の理由だったの。

内田:それを聞いてフィリップはどう思いました?

フィリップ:僕がきっかけだと思った理由はちょっと違うんだ(笑)。僕はずっとカリフォルニアで育ってきたし、そこでの生活が気に入っていた。暖かい気候とのんびりした空気。車を走らせながら色々なところにも行ける。5年間ディベロップメントでデザイナーとして経験を積んできて、少しブレイクが必要だと感じていたんだ。そんな時ウェンからNYに遊びに来ないかって誘われて、ほんの少し滞在するつもりで飛行機に乗ったんだ。まさかウェンからビジネスを一緒にやろうと説得されるとは思っていなかったけれど。

内田:なるほど、フィリップは子どもの頃からファッションがずっと好きだったの?

フィリップ:僕の家族はカリフォルニアに移住した典型的な中国系移民家族で、僕は6人兄弟の末っ子として育った。家では中国語、学校では英語を話し、子どもの頃から東洋と西洋の二つの世界に生きてきたんだ。僕が住んでいた郊外の街はファッションに興味がある人なんてほとんどいなかったけれど、MTVがスタートしたばかりで、たくさんミュージックビデオを見て育った。当時はスタイリストという存在はないから、ミュージシャン本人が服を選んでいたんだけれど、彼らのファッションにすごく影響を受けたんだよね。

ファッションへのこだわりがすごく強くて、その頃僕は街で一番エキセントリックな子どもだったと思うよ。学校に行くにも自分で服を決めていたし、既成の服にも母に頼んでアレンジを加えてもらっていた。父はプロのポーカープレーヤーで、パーマヘアにブーツカットのジーンズ、クロコダイルブーツといったスタイルだったんだ。一方で母は修道女のように見た目は一切派手なところはなく、真面目な主婦だった。そんな両極端の二人の間で育った中で、自分のスタイルというものを確立していったのかもしれない。

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お互いの子供時代と、ファッション

内田:ファッション業界で仕事をするということについて、ご両親は説得できたのですか?

フィリップ:両親は僕たち兄弟を医者か弁護士になって欲しいと願っていた。だから母はすごくショックだったみたいで、泣き崩れてしまったんだ。しばらく僕たちは口もきかない状態だった。彼女は裁縫婦だったので、ファッション業界といえば工場で一日中服を縫う仕事ということしか知らなかったんだ。僕の仕事はそうではないと説明したんだけれど、「せっかくアメリカまで連れてきたのにそんな仕事を選ぶなんて」と嘆いていた。今では僕の仕事を理解してくれているし、とても誇りに思ってくれている。

内田:そうだったんですよね。またウェンの子どもの頃のこともお聞きしたいんですが。

ウェン:私がアメリカに来たのは12歳の時。フィリップと同じく中国から移住してきて、NYのダウンタウンで第2の生活がスタートしたの。家族はよりよい生活を求めてここに来たけれど、中国では大学の教授だった父もここでは皿洗いの仕事をするしかなく、母は低賃金で働く工場婦となった。私も9歳だった妹も工場婦となることが運命づけられていると思っていた。でも、そのことがファッション業界で働くきっかけとなったの。

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コレクションデビュー!その思いとは?

内田:2人にはそういう共通点があったのですよね。それでは、フィリップが作った最初のコレクションって覚えていますか?どんな思い出があるのでしょう。

フィリップ:この会場にどれくらいデザイナーを目指している人やデザインを勉強している人がいるかわからないけれど、デザインのアイデアが生まれる時、それが正解かどうかわからないと思うことがある。でも最初のコレクションでは、明確なアイデアがあって、明確な答えを見つけることができた。今でも誇りに思うのは、ファーストコレクションは女性のダイバーシティ(多様性)や、モダンラグジュアリーというスタイルを表現することができたと思う。今の時代にも着てもらえるデザインだと思っている。

内田:ウェンは最初のコレクションを見たときどう思いました?

ウェン:ブランドを立ち上げた時、本当に小さなオフィスを借りていたんだけれど、一つ一つの服のデザインをするたびフィリップは私にそれを見せてくれたの。今すぐにでも着たいと思わせる服ばかりだった。その時の強い衝動は今もどのコレクションを見ても感じているわ。

内田:そうですね。私もワードローブがフィリップの服だらけというシーズンがしょっちゅうあるんですよね。

後編へ続く>>

フィリップさん、ウェンさんの生い立ちから、2人が出会いブランドを立ち上げるまでの秘話が繰り広げられました。後編では、10周年を迎えたブランドのビジネスとしての成功の秘密について迫ります。

 

今回お伺いした主催団体

nagasawazemi

早稲田大学ラグジュアリーブランディング研究所

革新的商品や他社には真似できない商品、高くても売れる商品、熱烈なファンのいる商品やブランドを対象として、他と違う商品づくりを絶えず試み、他との違いの本質を伝達し市場をリードすることによりブランドを如何に革新するか等のあり方について学際的に取り組んでいます。また、研究成果の発表、講義録を含む研究成果の出版等の事業を実施。併せて適宜これに関連する研究会・講演会・シンポジウムを開催する。特に、世界的ラグジュアリーブランドの経営者やデザイナーの来日時を捉えて積極的に開催。

 

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