アパレル業界で販売員として働いているなら、知っておきたいのがVMD=Visual Merchandising(ビジュアル・マーチャンダイジング)です。売り場づくりの手法のことを言い、その知識はキャリアアップするうえでもとても重要になってきます。
今回は、販売員の方がすぐにでも仕事に活かせるVMDの基本用語をいくつかご紹介します。
■VMDの展開に欠かせないAIDMA法則
「VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)」
現在、しきりに話題となるVMD。売り場の統一コンセプトのもと、視覚的な働きかけでお客さまを取り込み、最終的に購入まで結びつける――。その手法をVMDをと呼びます。アパレル業界の不振が続く、店舗の売上に直結するVMDの重要性は年々高まっています。
具体的には、エントランスをお客さまが入りやすいようなつくりにしたり、店内を回遊しやすいよう什器を設置したり、商品を手に取りやいすように商品を陳列するなどして、お客さまを商品購入へと導きます。
「AIDMA(アイドマ)」
VMDを成功させるためにまず覚えておいて欲しいのが、「AIDMAの法則」です。AIDMAは、購買に至るまでの消費行動の流れを示しています。AIDMAという言葉自体は、各プロセスの頭文字を、行動の流れに沿って組み合わせた言葉です。
最初のAは、“ATTENTION(=アテンション・注目)”のAです。このAの時点では、消費者は商品やブランドのことを知らず、認知度アップに努めなければいけない段階です。
次に“INTEREST(=インタレスト・興味)”は、消費者は商品やブランドのことを知ってはいるものの、興味を持っていない状態です。なんとかして「いいかも」「面白そう」と、関心を持ってもらう工夫をしなければいけません。
そして“DESIRE(=デザイア・欲求)”は、消費者は商品やブランドに興味を持っているが、まだ「購入したい」とまでは思っていない段階です。「必要だ」「役立ちそうだ」と思ってもらえるように、ニーズを実感してもらう働きかけが必要になります。
次に“MEMORY(=メモリー・記憶)”は、消費者が一度は商品を欲しいと思ったものの、それを忘れている状態です。「やっぱりほしい!」と感じてもらえるような、記憶を呼び起こす工夫をしなければいけません。
最後に“ACTION(=アクション・行動)”は、消費者が商品を買う機会に恵まれていないだけの状態です。「やっぱり欲しい!」など、“買う”という行動にかられるような機会を与えます。
人はものを購入するまでに、商品を知り(ATTENTION)、良さそうだと感じ(INTEREST)、これは必要だと確信し(DESIRE)、やっぱり欲しいと再び思い起こし(MEMORY)、買おうと決意する(ACTION)というステップを踏みます。
商品を購入するまでに導くためには、それだけ別の商品を見て回れるような店内の広さや、「どうしようかな、買おうかな」としばらく悩めるような店内の雰囲気が必要です。商品のことを自然と思い出せるようなきっかけも、店内には施こさなければいけません。
VMDでは、このAIDMAを念頭に売場づくりを行うとより高い効果が得られると言われています。
■AIDMAを実行するために押さえておきたいい基本影向
さて、このAIDMAを実現するためにも押さえておきたいのが、VMDの基本、VP、PP、IPです。
「VP(ビジュアル・プレゼンテーション)」
VPは、来店してもらうことを目的としたプレゼンテーションのこと。具体的には、ブランドコンセプトや、そのブランドのイメージなどを外部へ打ち出すことをいい、「あのお店に入ってみたい!」と、消費者に興味を持ってもらうことが着地点です。
店舗から遠く離れた位置でも目に入るよう、目立つライティングをしたり、印象的な展示スペースをつくったりして、お店をアピールします。
「PP(ポイント・プレゼンテーション)」
PPは、そのブランドのおすすめや、イチオシの商品を消費者に知ってもらうためのプレゼンテーションの方法です。
たとえば、入口やレジの付近、フロアの中央部、店舗スペースの4つの角は、人の目に触れやすいエリア。ここに目立つディスプレイを施したり、他の商品とは違う陳列をしたりすると、「この商品は主力商品なのね」と、見る人に理解してもらえます。
オリジナルの什器をセッティングするなどして、他の商品とおすすめ商品でディスプレイに緩急をつけると、うまくアピールできるでしょう。
「IP(アイテム・プレゼンテーション)」
IPは、商品を手にとってもらうことが目的のプレゼンテーション方法です。たとえば私たちは、「カーディガンを買おう」と、思ったとき、いくつかのメーカーや種類を比較して購入を検討します。
同じカーディガンという括りの中から、色や形が違うものを見比べて、自分の好みの商品を選び出します。IPでは、商品が手にとりやすいのはもちろん、類似する商品をまとめて陳列するなどの工夫も求められます。ただカテゴライズするのではなく、検討しやすくするのがポイントなのです。
■VMDと混同されることが多いDPの基本用語
DP=Display(ディスプレイ)は商品陳列や店内装飾そのもののことを指し、VMDを実現するために必要な手段になります。
ここでは、ディスプレイを決める際に使われる専門用語をまとめていきます。
「グルーピング」
商品をカテゴリ別にグループ分けすることを言います。アウター、ボトムスなどでまとめる方法や、カジュアルとフォーマルなどで分ける方法などがあります。お店に訪れる消費者の傾向に合わせてグルーピングすることが大切です。
「ゾーニング」
グルーピングしたあとの商品を、お店のどこに配置するか決める行為を言います。店舗の手前は、比較的安価で手にとりやすいカットソーを。そして、奥に行くほどアウターなどの大物を並べていくといったイメージです。適切にゾーンを分けることができると、消費者は店内をくまなく見ることができるようになり、売上向上につながります。
「レイアウト」
ゾーニングよりさらに進んだ状態で、什器の種類や置き場など、細かなことを決定します。セール品などの置き場を決定するのも、この段階です。レイアウトが決まったら、マネキンやトルソーなどを使ってディスプレイします。
「ファサード」
ファサード(=Façade・外観)は、通路に面した売り場や、お店の正面などを指します。消費者がまず目にする部分です。ショートトラックやマネキンなどを用いて商品を見せていきます。
「アトモス」
アトモスフィア(=Atmosphere・雰囲気)の略です。雰囲気という意味ですが、什器やマネキンなど、店内を装飾する備品のことを指します。
「トラフィック」
トラフィック(=Traffic・交通)という意味の言葉ですが、アパレル業界では人通りのことを指します。
■VMDのエキスパート、VMDという職種
VMD(ビジュアル・マーチャンダイザー)とは、VMDを専門とする職種のことです。販売員からキャリアップする人も数多くいます。
このビジュアル・マーチャンダイザーの最終的な目的は、売上を増やすこと。今はまだ、自分が働く職場にVMDの部署がない人も多いかもしれませんが、将来的にはビジュアル・マーチャンダイザーは売場づくりのエキスパートとして、アパレル業界になくてはならない存在となるでしょう。
もし、あなたが販売員であれば、なんとなくの売場づくりを今日からやめて、VMDに基づいた計画的な売り場づくりを始めるようにしましょう。