コーデュロイ素材は、秋冬定番のマテリアル素材といっても過言ではありません。今回は、そんな定番素材のコーデュロイについて深掘りします。中には、コーデュロイがどうやって製造されているのか、知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは、度々秋冬のトレンド入りを果たすコーデュロイ素材の、基礎知識に、徹底的に触れていきます。
織り方を変えると質感も変わるコーデュロイという素材
コーデュロイは、生地表面に畝のような凸凹のある生地のことです。ビロードのような光沢があり、厚手の触り心地から、主に秋冬の衣服に重宝されています。
そもそも、コーデュロイという言葉は、フランス語で“Corde du Roi=王の畝(うね)”の意味です。この畝の幅にはさまざまなサイズがあり、1ミリ未満の畝幅なら極細、4ミリ以上5ミリ未満なら中太など、呼び名が変わります。
コーデュロイは、パイルの織り方を変えると、素材の質感を変えることができます。例えば、畝が高くなるように織られたコーデュロイ生地は、ハリのある生地に――。また、ポリウレタン等の素材を混紡すれば、ストレッチの効いた、伸び戻りのいい素材に仕上がります。
国や年代で変わるコーデュロイの呼び方
日本では1960年代頃、アイビースタイルなど、アメリカのファッションカルチャーを代表する素材として広まったコーデュロイ。
今ではすっかりコーデュロイの呼び名が定着しましたが、かつては、コール天と呼ばれることもありました。それは英語の「Corded Velveteen(うね織りビロード)」が語源とも言われています。ちなみに、アメリカではコーデュロイのことをコーズと呼ぶそうです。国や年代が変わると、その呼び名が違うのも、コーデュロイの面白いところです。
“畑の畝”のようなディテールを生み出す製造工程
コーデュロイの真骨頂ともいえる“畑の畝”のような特有のディテールは、どのように生まれるのでしょうか。
コーデュロイは、ウールやコットンなどが原料です。コーデュロイの製造工程では、まず、横向きのパイル生地を織ります。このパイル生地とは、生地表面にループを出して織る製法の織物のこと。コーデュロイの製造工程では、このループが一定間隔になるよう、パイル生地を織り、この一定間隔に織られたループが、後にコーデュロイの畝になるのです。
パイル生地が織れたら、次の工程では生地表面のループをカッティング。糸が引き出た状態のまま水で揉み洗いをすると、糸がほぐれて毛羽立ち、これがコーデュロイの畝になります。仕上げに畝を熱で焼いて、できあがりです。染める場合は、すべての工程を終えたのち、最後に染色されます。
暖かくて上品だけど…コーデュロイの魅力と短所
コーデュロイの魅力は、なんといってもその保温性です。生地表面を覆う毛羽立った畝たちが、空気を抱え込んで保温性を高めてくれます。コーデュロイは、シャツやワンピースを始め、コートやジャケット、シューズなど、秋冬にはさまざまなファッションに用いることができるのもメリット。ひとつ身にまとうだけで、秋冬のムードを高めてくれます。
その表情豊かな風合いも魅力的な素材です。カジュアルを代表する素材ですが、ベルベットのような上品な風合いも楽しめるコーデュロイは、エレガントな着こなしにも適した素材。その風合いから、ベルベットの一種として数えられることもあります。
秋冬のファッションに多用される理由は、その保温性だけではありません。コーデュロイはニット素材との相性も良いため、季節感を演出する素材としても多用されてきたのです。合理性とファッション性の両面で、コーデュロイは重宝されてきました。
一方で、コーデュロイにも短所があります。
コーデュロイ生地のデメリットの1つは、ホコリが付きやすいという点です。毛羽立ちにホコリが引っかかり、払うだけでは簡単には取れなくなってしまいます。黒や紺など、暗い色のコーデュロイの場合は、ホコリはとても目立ちやすいです。
このとき、ガムテープなどでホコリを取る方もいらっしゃるかもしれませんが、この方法は決して行わないようにしてください。なぜなら、粘着力のあるテープがコーデュロイの糸を抜いてしまい、毛並みが崩れ、光沢が出なくなってしまうからです。エチケットブラシを使って、ホコリを払うようにしてください。
また、コーデュロイ素材は、特有の畝が寝てしまうことがあります。畝に高さがあり、コシのない糸で織られているコーデュロイほど、寝やすくなります。
ケアをする際にはエチケットブラシをかけるのが一番ですが、このとき、エチケットブラシは下から上に動かし、寝てしまった布目を立てるようにしましょう。
なお、洗濯時には色落ちに注意が必要です。コーデュロイ素材は色が抜けやすいため、他の洗濯物と一緒に洗わないようにしてください。
お手入れは丁寧に!コーデュロイの洗濯方法
手洗いが安心なコーデュロイですが、水洗いができるものであれば、洗濯機でも洗うことができます。洗うときには服を裏返し、選択用ネットに入れ、おしゃれ着用の中性洗剤で洗いましょう。つけ置き洗いのモードにし、しっかりすすいでください。脱水の際は、服を表に返すと、水切れが良くなります。ただし、干す際には型崩れを防ぐため、もう一度服を裏返してください。
ポイントは、目の細かいネットを使用し、脱水時間は短めにすることです。選択後はすぐに取り出し、シワができないように配慮しましょう。
もし、コーデュロイの畝の毛並みが乱れてしまったら、スチームアイロンを使用して整えます。一定間隔の毛並みを崩さないよう、生地から 1センチほど離してスチームアイロンを当ててください。くれぐれも、アイロンで生地を押し付けないように注意しましょう。
もし、深いシワなどをアイロンで伸ばしたい場合は、あて布をして、中温くらいの温度に設定します。仕上げにエチケットブラシで毛並みを整えることも、忘れないようにしてくださいね。
畝の幅や高さ、生地に混紡する素材を変えることで、さまざまな用途に応用できるコーデュロイ。合理性とファッション性の両面を兼ね備え、今後も秋冬トレンドの素材として、広く活用されていくことでしょう。
Interview&Text:Tomoka nakano(RhythBiz)