ファッション業界でのお仕事・転職にまつわるリアルな情報を発信中!

記事一覧

類似点、相違点の判断ポイントは?日本国内の形態模倣に関する訴訟例|Fashion Law for Beginner 事例編

ファッション業界で実際に起こった訴訟を紹介するファッションロー ・ビギナー事例編。今回は、今年判決がくだされた形態模倣に関する日本国内の裁判の中から、株式会社アイランドと株式会社オフィスカワノの事案をピックアップしたいと思います。

本事案は、原告であるアイランドが、オフィスカワノに対して、被服の形態の実質的同一性を根拠に損害賠償請求を行ったものです。複数の商品群について、形態の実質的同一性が認定されており、原告側とすれば、これだけ多くの類似する商品が販売されているとなると、訴訟に踏み切らざるを得ないというところかと思います。多くの商品について形態の実質的同一性が認定されたことから賠償額もかなり高額となっています。

それでは、具体的な対象商品と判断内容を見ていきましょう。

被服の形態が実質的に同一と認定された商品の判断について


両者は、基本的形態として「ストレート・シルエット」の「8分袖のワンピース」であり、袖口と襟口に幅広のビーズ刺繍が施されている点、ビーズのデザイン、襟口については少し立ち上がり、横方向に広めに開きがある点で共通しており、全体的な印象としても酷似していると判断されました。

なお、ビーズ刺繍の幅や配置の違いを被告側は強調しましたが、極めて 注意深い人でなければ気付かない程度の違いにすぎないと否定されています。

キャプ/ビーズ刺繍箇所

 

両者は、基本的形態として「無地の膝丈のタンクドレス(タンク・トップスの丈を伸ばしたような形のドレス)」で「7分袖クロップト丈(身頃をウエストや胸の下あたりで切り落とした短い丈)のレース素材のトップス(シャツやブラウス、セーターなど上半身部分に着用する衣服)」であり、トップスが花柄のリバーレース(リバー編み機で作られたレース)生地で作成された7分袖、クロップト丈の総レース素材、そのトップスの下にスカート部分がセミタイトスカートとなっている膝丈のタンクドレスが重なっている点で共通し、全体的な印象としても酷似していると判断されました。


両者は、基本的形態として「2色のフラウンス(フリルよりも幅が広いひだ襟飾り)による斜めアシメトリー(非対称)なティアードシルエット(フラウンスを何段も重ねたシルエット)」を有する「薄手の生地のミニ丈のタンクドレス」であり、また隣り合う生地が原則として異なる色の布地が使用されている点と、前面下部に特徴的な大きな花柄のモチーフ(小さなフラウンスにより構成された花模様)がある点で共通し、全体的な印象としても酷似すると判断されました。

被告側は、2色生地の切り返しの起点、最前面のフラウンスの長さおよびフリルの有無、左右のフラウンスの背面視における縫合せの有無、2色の斜めアシメトリーなフラウンスによるバスト下からドレス裾までのティアードシルエットという形状の有無などについて相違すると主張しましたが、上記の共通点に埋没する程度の相違にすぎないと否定されています。


両者は、基本的形態として「2色のフラウンスによる斜めアシメトリーなティアードシルエット」を有する「薄手の生地のミニ丈のタンクドレス」であり、隣り合う生地が原則として異なる色の布地が使用されている点、背面部における生地の使い方などの点で共通。他方で、両商品では大きな花柄モチーフの有無で相違しており、必ずしも微差とはいえないが、アイランド社の商品における大きな花柄モチーフを除くと細かい部分まで極めて似ており、商品全体としてみた場合に類似性は非常に高いと判断されました。

被告側は、花柄モチーフの有無以外にも、色合いも含めて複数の相違点を主張しましたが、共通点(前面における斜め方向のフラウンスや、隣り合う生地が原則として異なる色の布地が使用されている点、前面・背面を通じた布の重なり方など)に埋没する程度の違いであり、需要者に対して「色違い商品」であると印象を与える程度にすぎないと否定されました。


両者は、基本的形態として「トップス裾とスカート裾がスカラップ裾(ホタテガイのような波型模様に仕立てた縁の裾)」であり、「裾部分に大きな草花モチーフのビーズ刺繍があしらわれている」ドレスであること、膝上丈のタンクドレスにノースリーブでウエスト丈のトップスを合わせた構成という部分で共通しており、全体的な印象としても酷似すると判断されました。また、配色については、両商品は単色かバイカラーかで異なっており、これによって需要者に与える印象に違いはあるとしつつも、スカラップ裾やビーズ刺繍等の大きな共通点に埋没する程度の違いであり、需要者に対して「色違い商品」であると印象を与える程度にすぎないと否定されました。


両者は、基本的形態として「腰回りに切り替えのあるストレート・シルエット」で「ノースリーブ」の「膝丈のワンピース」であり、「背中に大きめのギャザーが寄せられ」、「スカート上部にビーズ刺繍が配置されている」点で共通。トップスの表面にサテン地、裏地にスムースニット生地(両面編みによるニット生地)を使用している点、スカート上部のビーズ刺繍のデザイン、表地の脇下部分の大きな開きから裏地のスムースニット生地という点でも共通し、全体的な印象としても酷似すると判断されました。

被告側は、前面の縦方向のフラウンスの有無、ボトムス前面上部のビーズ刺繍のデザイン、ボトムスの刺繍模様の有無、トップスとボトムスの長さの割合、配色の違いなどを主張しましたが、ボトムス前面上部のビーズ刺繍のデザインにはほとんど差がなく、ボトムスの刺繍模様や配色については、大きな共通点に埋没する程度の違いと否定されました。


両者は、基本的形態として「サロペット(胸当て付きズボン)」で、「首元からバストトップス(胸まわり)切り替え位置までがレース素材」となっている点で共通。レース素材のすぐ下に大き目のフラウンスが配置され、そのフラウンスはフリルを形成しながら背面まで連続して続き、かつ背面にいくにしたがってフラウンスの幅が徐々に広くなり、背面まで斜めにつながっている点でも共通し、全体的な印象としても類似性が高いと判断されました。

被告側はかなり多くの詳細な相違点を主張しましたが、微差に過ぎないとされています。なお、フラウンスが長いことで体型をカバーできることも主張し機能的な違いについても言及しましたが、フラウンスの長さが他の多くの共通点によって認められる実質的同一性を否定するほどの相違点であるとはいえないと判断されています。

被服の形態が実質的に同一とされなかった商品の判断について


両者は、基本的形態として「アメリカンスリーブ(腋下から首の付け根に向かって斜めにカットし、肩を大きく露出したノースリーブデザイン)」で、「ハイネック(身頃から続いた高い襟)のロールカラー(襟足が高く首回りに巻くように折り返っている襟)」の「セミフレアスカート(ぴったりしたウエストから裾へフレアが波打って、朝顔状に広がったスカート)のワンピース」であり、「ローウエスト部分で切り替えを施し」「切り替えの部分には幅のあるベルト状のビーズ刺繍をポイントとして配置」。これらの点では共通するが、素材がシルクかポリエステルかで異なるうえ、ベルト部分の(A)装飾の幅・デザイン(アイランド社のベルト部分のビーズ装飾の幅が太く、当該部分が半円状を組み合わせた全体として波状のデザインとなっているのに対し、オフィスカワノ社の商品はベルト部分のビーズ装飾が細く、当該部分はビーズを直線的に並べただけのデザインとなっている)、(B)背面腰部のベルトの有無等において明らかに異なっており、またスカートの長さも異なるなど、それらの相違点が強い印象を与えることから、両者が実質的に同一とはいえないと判断されました。

キャプ/(A)装飾の幅・デザイン

 

キャプ/(B)背面腰部のベルトの有無

 
以上、全部で8つの商品群のうち似ていない(=実質的同一ではない)と判断したものは1点のみとなっています。

各商品の検討内容を見ると、相違点はあるものの全体としては実質的同一とする判断が目立ち、相違点について判例上は「大きな共通点に埋没する程度の違い」という言葉で評価されています。このあたり、実務的な示唆としては、権利行使する側、される側ともに特徴的な共通点を正確に特定し、そこを中心とし類否の主張を展開することが重要であるということになろうかと思います。(4)のように「大きな花柄モチーフ」があったとしても、両者は細かい部分まで極めて類似しており、商品全体としてみた場合に類似性は非常に高いと判断されており、明らかな相違点よりも、多くの(大きな)共通点をしっかり特定することが必要といえそうです。
 

今回のコラム執筆者

 

MARK STYLER株式会社 法務部 課長|小川 徹さん

2018年津田塾大学非常勤講師、知財学会会員・事務局、2012年よりMARK STYLER株式会社にて、契約業務、法律相談、商標の権利化、模倣品対応など、幅広く法務知的財産業務に従事。

Fashion Law Institute Japan

知的財産研究教育財団に属する日本で最初のファッションローの研究を行う場。メンバーは国内外のファッションブランドにより構成され、研究員として弁護士等が参加。

 

Fashion HRはファッション・アパレル業界に特化した求人情報サイトです!

FHR_top

ショップスタッフや店長などの販売職から、PR、MD、VMD、営業、総務/経理、秘書、ロジスティックスなどのバックオフィス職まで、外資系ラグジュアリーブランドから国内有名ブランドまで求人情報を多数掲載中。早速、会員登録をして求人をチェック!

無料会員登録する

記事一覧