アパレル・ファッション業界の求人・転職ならFashion HR

記事一覧

大阪農林会館のショップオーナーが語る「足を運んで買うということ」vol.1

大阪・南船場にある、1930年に建設されたアンティークビル「大阪農林会館」。昭和レトロな雰囲気のモダン建築として知られ、個性的なショップが入店していることから、関西のファッション好きなら一度は訪れる有名なビルです。この名物ビルに店舗を構えるショップオーナーにインタビューをするシリーズ企画がスタート。
第一回は、奇数、そして奇妙な、という意味を持つ“odd numbers”のディレクターでありテーラーでもある末廣一仁さん。まもなく6年が経つセレクトショップを、路面店や百貨店ではなくこの場所にオープンした理由、そしてマイスタイルの探し方、オーダーの魅力などについて、ご自身も「どこかクレイジー」な着こなしを愛するという末廣さんに伺いました。

 


 

音楽がファッションへの入口

Q. 大きなキャスケットに個性的なメガネと、癖のある小物使いをご自身のスタイルにされていますが、そもそもファッションに目覚めたきっかけをお聞かせください。

この仕事と両立してスカバンド・DOBERMANでトロンボーンを吹いているのですが、小学生の頃から音楽が好きで、それで60〜70年代のファッションに興味を持ちました。高校生の時に観た映画「さらば青春の光」だとか、モッズムーブメントにも大きく影響を受けています。
当時はおじいちゃんが着ていたようなスーツを買ってみたり、ヴィンテージショップや古着屋を覗いては他にない1着を探していましたが、これは今でも変わっていません。
僕にとって、“人と同じ格好”ではなく“人と違う格好”がファッション。そこに少しの違和感や楽しさを加えていきたいという気持ちが、自分のスタイルにはもちろん、この店にも溢れていると思います。

日常の延長線上にあるスーツを提案

Q.odd numbersはセレクト以外にビスポークスーツがメインですが、既成スーツが安価に手に入る時代にあえてオーダーを中心に据えた理由とは?

スーツ自体がシンプルに着てもカッコ良く決まる洋服だし、ファッション業界に入ったのもスーツ専門店が最初。オーダースーツってハレの日の服という一面もありますが、僕自身はカジュアルの延長線上にあるスーツスタイルが好きなんです。
他と被らないという意味ではオーダースーツは唯一無二ですし、一丁羅感が出過ぎず着る人の個性を感じるような等身大のスーツが作れたらと思っています。オーダーだと体型の欠点も魅力的に見せられるし、職種によっては毎日長時間スーツで過ごす人もいます。そんな時に着ていて楽しく心地よいものがあれば素敵ですよね。
オーダーの良さは多々ありますが、うちは裁断や縫製の多くが手仕事。だから柔らかく立体的に体に馴染むものができるのですが、実際に袖を通してその魅力を体感していただきたいですね。

Q. 最近のスーツのトレンドやご自身の着こなしのコツをお聞かせください。

ここ数年カジュアルウエアはオーバーサイズが流行していますが、スーツにもその流れが来ています。お客様からもオーバーサイズ気味で作りたいというご要望が増えていて、スーツってある程度体のサイズに沿うというのがセオリーでしたが新しい着こなしの風を感じていますね。
僕の場合はスーツにTシャツだったり、小物でアクセントをつけるスタイルが多いけれど、あえて自分の体のサイズを選ばないことも意識しています。例えば僕はMだけど、わざとSやLを選ぶ。それらを着た時のサイジングの違和感が自分流。違和感が個性につながり、少し奇妙でなんだか楽しんで服を着ている。そんな着こなしをしたいし、この店を通してそんな人を街に送り出したいです。

服を買うという「原体験」をここで

Q. ファッションビルや百貨店、路面店と様々な選択肢がある中で、なぜこのビル「大阪農林会館」を出店先に選んだのでしょうか?

着こなしにも共通しますが、やはり買い物という行為を楽しんで欲しい。楽しむための商品・時間・空間を提供したいと考えた時、この場所が理想的でした。築100年近いクラシックなビルで時間の流れがなんだかゆっくりな感じ、入るのに少し勇気が必要なムードを含め、パッと入ってスッと通り過ぎ去れる場所ではなく、洋服を買いに行くという楽しさの原体験をもう一度味わえる場所であること。それがこのビルを選んだ理由です。
ただ、歴史あるビルなので当初僕ひとりの力では諸々難しい部分もあり、その時に支援し背中を押してくださったのが以前勤めていたアパレルの社長でした。「君がやりたいことを見てみたい」と仰ってくださり、そういったご縁にも支えられて理想の場所に店を構えることができたのです。

Q.ビルの趣はもとより、店内もとても素敵です。デコレーションや内装のこだわりは?

服と同じで今これが流行っているからこういう感じにしよう、というのは全くなかったです。ただ、5年後、その先もいいな、居心地良いなと思える空間にしたくて、その時々の気分を落とし込んでいますね。ミクスチャー精神で無骨だったり繊細なものを混ぜ合わせ、結果今の空間になっています。

オンラインとリアル、それぞれの良さ

Q. コロナ禍でショッピングのあり方は大きく変わったと思いますが、お店の状況に変化はありましたか?また、今後の展望もお聞かせください。

コロナが話題になり始めた頃からオンラインでお買い求めくださるお客様がとても増えました。
実際にオンライン販売をさせていただき、距離だったり時間的な理由で店に足を運べないお客様にもお品物を届けられることが嬉しくて。全国から問い合わせがあり、普通なら遠方でなかなかお越しいただけない方が気に入ってリピートしてくださっているのは、やはりオンラインの強みです。
一方で変わらず来店くださるお客様もいて、本当に顧客の方々に支えられているとも感じます。
ただ、コロナで一旦世の中がストップした感もあり、服を買っても着ていく場所がないというジレンマも感じています。だからもうひとつの職業である音楽とリンクさせたりして、着ていく場所も作って行きたいと考えている最中。服って着るだけじゃなく、着てどこに行くか、何をするかまで含んでいると思うんです。

一筋縄ではいかない格好良さ。それを体感できるのがodd numbersの魅力です。末廣さんのトレードマークともいえる帽子はインパクト抜群で、聞けば「楽しさを頭に乗っけている」とのこと。あ、ファッションって楽しいんだ。そうだった、装うって楽しいことなんだと再確認させてくれる「モノ・人・空間」。その全部が詰まったオリジナル・イン・ザ・オリジナルな世界観は、まさに唯一無二です。

店舗情報

odd numbers <オッド ナンバーズ>
〒542-0081 大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館300号室
http://www.oddnumbers-project.com/


 

TEXT:横田愛子
PHOTO:大久保啓二

 

Fashion HRはファッション・アパレル業界に特化した求人情報サイトです!

FHR_top

ショップスタッフや店長などの販売職から、PR、MD、VMD、営業、総務/経理、秘書、ロジスティックスなどのバックオフィス職まで、外資系ラグジュアリーブランドから国内有名ブランドまで求人情報を多数掲載中。早速、会員登録をして求人をチェック!

   
無料会員登録する

記事一覧