PR業務を行うPR01.などを擁する株式会社ワンオー(2017年3月1日業務開始)代表取締役、松井智則さんへのインタビュー第二弾。
前編に続き後編では、飄々とした表情とは裏腹に、胸に熱いものを秘めた松井さん率いるワンオーの事業内容や海外戦略の狙いなどについてお聞きしました。
アジア進出することで見えた日本のファッション業界
−株式会社ワンオーの現在の従業員数は?
45人。さらに「東京ガールズコレクション」のチーフプロデューサーなどを務めた永谷亜矢子さん、roomsプロデューサーの佐藤美加さんという方々が後ろ盾としていることも心強い。さらに「リーバイス ヴィンテージ クロージング」ほかプレミアムデニムブランドの日本での販売契約などを手がけてきた大坪洋介さんのショールーム、「OH!ショールーム」を新設。ヨーロッパ、アメリカの新しいブランドを、日本、アジアで卸販売していきたい。
−海外での展開も積極的に行っていますよね。
6年くらい前からかな。クールジャパンのプロデュースをやらせてもらったことがきっかけで、今、ソウルと上海、バンコクにプレスルームがある。それからパリとニューヨークにショールームがあって、台北には現地パートナーもいる。台北では年に一回「PR01.トレードショー」をやっている。
月に一度は必ず海外に行くようにしていて、自分は旅人だと思ってる。日本にいるとルーティンにはまってしまって、同じことやっていると自分が腐っていくような感覚になってしまうから。
−現在は特にアジア方面での活動を活発に行っていますが、そのきっかけは?
これまではずっとヨーロッパに行くことが多かったけれど、ヨーロッパから見える日本の角度ってすごく一方的。パリがモードという言葉をつくって、ファッションショーというものをつくった。日本はそれに憧れて、パリに行くのが勝ちっていう考えがずっとみんなにあって、それをずっと見てきた。
アジアに行き出したことで分かったのは、日本のブランドがいいっていう人が沢山いること、ヨーロッパの新しいブランドは最初からアジアで発表するっていうところも出てきていること。ファッションってパリなのかってずっと思っていたけれど、違うのかもって思えた。
アジアはやっぱり大量消費の国っていう欧米ブランドの見方もあるけれど、逆にアジアで買ってもらわなければブランドとして成り立たないっていう側面もある。だからアジアという固まりで欧米に立ち向かっていけるPR会社にしたらどうだろうって。そんな仮定が7年くらい前に生まれて、アジアを回ったけれど、どこにもアタッシェドプレスがないっていう現状を知って、アジア中にプレスルームをつくりたいと思った。
「ファッションという共通言語で世界とつながりたい」
−海外に出たからこそ、日本のファッション業界への見方も変わったのですね。海外進出の核となる目的は、日本のファッションを盛り上げたいという気持ちですか?
というより、ファッションというのは共通言語だから、“ライフスタイル”として確立していきたいという思いがずっとある。
例えばこういう格好していると、言語が通じ合わなくても「あ、それクールだね」みたいな感じで話が勝手に進んでいく。それってクリエイティブという共通言語があるからだと思う。「松井さんそういう服好きなら、こういう料理好きでしょ?今バンコクに美味しいお店あるから今度行こうよ」というように、ライフスタイルにつながっていく。これって普通なことのようで、意外とある程度文化度的に、美意識高い人たち同士だからこそ成り立つ会話だと思う。
こういった共感度やそれぞれのコミュニティをもっと広げていけば、戦争もなくなるかな、とか考えているんだよね。それはずーっと思っているところ。
−仕事についての考え方などは、どのように学んでこられたのですか?また今後の展望についてお聞かせください。
やっぱり一緒に働いてきた女性たちの愛情の持ち方が一番勉強になったかな。女性たちは好きになるまで多少時間かかるけど、好きになったらすごく愛情を注ぐ。そういう姿勢を見て仕事をしてきて、変な意味じゃなく俺はクライアントが恋人だと思っている。お金が発生しているから恋愛とかっていうとちょっと違うかもだけれど。
PRコミュニケーションってクライアントといかに恋できるか、どれくらいいいところを、自分というフィルターを通していかに伝えられるか。そこに尽きると思うんだよね。
──PR業務を中心としながら、多角的な事業を通してファッション企業と深く関係を築いている株式会社ワンオー。「クライアントは恋人」と語るように、愛情を持って一つひとつのブランドと向き合う姿勢が印象的でした。
Interview&Text:Etsuko Soeda
Edit&Photo:Mio Takahashi(Fashion HR)