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2024AWでブランドクローズを発表 稲葉賀惠のクリエイション

1970年に株式会社ビギを設立した創業メンバーの1人である稲葉賀惠。1981年以降は自身の名を冠したブランド「yoshie inaba」を展開していましたが、2024年8月にブランドのクローズを発表。43年にわたって洗練されたデザインを提供してきた稲葉賀惠の活動や服作りに対するこだわりを紹介します。

【目次】
稲葉賀惠とは
個々の内面の美しさを引き出す洋服作り
「MOGA」から「ヨシエイナバ」へ
企業ユニフォームのデザインも多数手掛ける
2024AWでブランドをクローズ

稲葉賀惠とは

原のぶ子アカデミー洋裁学園で服飾を学んだ稲葉賀惠は、卒業後に自身でオートクチュールの創作アトリエを開いて活動し、1970年に菊池武夫、大楠祐二らと株式会社ビギを設立。ブランド「BIGI」「MOGA」を発足させ、1981年には自身のブランドである「yoshie inaba」を創業します。時代の流れに呼応しながらも着る人の価値観や着心地を大切にするスタンスが多くの女性に受け入れられました。また、航空会社や鉄道会社など企業の制服デザインも多数手がけ、結城紬のアドバイザーを務めるなど多方面にわたる活動を展開してきました。2024年8月、同年の秋冬コレクションをもって「yoshie inaba」のブランド展開を終了させることを発表しました。


個々の内面の美しさを引き出す洋服作り

「yoshie inaba」では、ブランドのコンセプトを「”美しさ”と”心地よさ”にこだわり、トレンドを意識しながらもそれに流されない“定番の服”」と提唱しており、着ることによって内面の美しさを引き出すことがコレクションの役割であると述べています。この“美しさ”は、美的感覚だけではなく、自分自身の価値観をもって社会と繋がり、『自身に心地よく生きる美しさ』を大切にすることであるとされ、クワイエット・ラグジュアリーかつ究極のミニマリズムというデザインの根幹をなしています。


「MOGA」から「ヨシエイナバ」へ

「BIGI」の発足当初、60年代ポップアートなどの“カウンターカルチャー”に影響を受けていたという稲葉は、80年代はビアズリーの絵画など、エキセントリックな物にも影響された洋服作りを目指していたといい、シックな色調に独創的なスタイリングを合わせることで個性を確立しました。「MOGA」ではベーシックな中にも知性を感じさせるデザインで着る人の個性やセンスを引き立たせることに重点が置かれました。「yoshie inaba」では、最高級の素材を使用し、計算しつくされたカッティングで機能的かつ洗練されたデザインを打ち出しています。トレンドを意識しながらも時代に流されない、シンプルで定番であることにこだわったアイテムは、着るだけで大人の女性らしさをしっかりと演出。ビジネスから日常まで、さまざまなシーンに対応し、当時の女性の社会進出を後押ししています。


企業ユニフォームのデザインも多数手掛ける

稲葉は長いデザイナー生活の中で企業の制服も数多くデザインしています。最もよく知られているのが日本航空(JAL)との仕事で、1996~2004年の8代目、2004~2013年の9代目のキャビンアテンダントの制服を担当しています。初めて帽子を廃止するなど、それまでの格調高いイメージから転換し、親しみやすさを感じさせる路線がここで確立されました。2017年に営業を開始したJR西日本の高級寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」では、社内クルーの制服を監修。瑞風のイメージカラーのグリーンに黒の糸を入れて織り込んだオリジナル生地を使用し、女性用にはプリーツスカートやVネックシャツを導入するなど、エレガントかつ機能的な制服となりました。他にも東急電鉄の乗務員やサントリーホールのレセプショニスト、出身校である横浜雙葉学園の制服なども手掛けており、企業や学校のイメージアップに貢献しています。


2024AWでブランドをクローズ

1981年の発足以来、女性の内面の美しさを引き出す洋服にこだわってきた「yoshie inaba」ですが、2024年8月、稲葉自身のコメントでブランド展開の終了が発表されました。43年にわたってファッション業界を走り続けてきた稲葉は、コメントの中で同年12月に85歳を迎えることについて触れ、創作における満足なパフォーマンスを望めない場面が見られるようになったことがブランド終了の要因であると述べています。全国各地の店舗も2025年1〜2月で閉店することが伝えられています。最後の新作発表となる2024秋冬コレクションでは、「いつまでも輝く女性たちへ贈る 素材に拘り、少しだけ流行を意識した定番服」をテーマに、これまでの路線と今季のエッセンスを絡めたアイテムを展開。上質なカシミヤやツイード、160/2コットンなど、厳選された素材を使用し、ニットやトップス、コート、カーディガンなど、随所に稲葉らしさが感じられるアイテムを見ることができます。


TEXT:伊東孝晃

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