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目指すはネクストセレクトショップ 『CENTO TRENTA』のスタッフ・坪川博導に聞く“イキる”スーツの話【後編】

大阪の南船場に本店を構え、ファッションにこだわりを持つ男性を中心に支持を集める『CENTO TRENTA(チェント トレンタ)』。今回は南船場店の顔として活躍する坪川博導さんにお話を伺っています。前編ではアパレル業界に進んだきっかけや『CENTO TRENTA』との出合い、接客についてを中心に伺いましたが、後編となる今回はオーダースーツやメンズのトレンド、お店で扱っている商品や販促ツールにもなっているSNSなどを取り入れる意味についても聞きました。

それぞれの良さを知ることと、スーツの今後

―― 既製服(プレタ)とオーダーのどちらも扱われていますが、それぞれの魅力とは?

「まずオーダーは、やはり思い描いたものが出来上がることですね。“こんなジャケットが欲しい”と思ってイメージと同じものを探すのは大変ですが、オーダーならそれが可能。しかも自分の体型にぴったりの、まさに唯一無二の服が作れます。次にプレタですが、僕自身はサイズが合うのならベストだと感じます。プレタの場合、その服はデザイナーが思い描く完成形なわけですから、デザイナーの世界観と好みが一致するのならとても良い選択。オーダーにはオーダーの、プレタにはプレタの良さがあるので、一概にどちらが良いということはありません」

―― ビジネスシーンでもカジュアル化が進んでいますが、スーツ人口をこれから増やすには?

「当店だけで言えば、スーツの売り上げは伸びているんです。その理由には、数よりも質を重視するお客様が増えたことがあります。あと、小売とは別に企業からの依頼を受けて制服としてのスーツも作っていて、企業によっては会社が制服としてスーツを支給する時代。中には社員それぞれのオーダー採寸を依頼されるケースもあるので、オーダースーツに慣れ、体にフィットしたお洋服の良さを体験することで、今後、自分でスーツを作ろうと思っていただける第一歩になれば嬉しいです」

―― スーツや紳士服のトレンドについてお教えください

「スーツやジャケットにももちろんトレンドはありますが、そんなに頻繁に移り変わらないと思います。一度トレンドになると長年それが続くのと、着る人の好みもあるため何かが流行ればみんながそれを着る、という感じではない。今だとツイードなどを使ったカントリーが人気ですし、モードも復活の兆し。元々メンズはレディースと比べてトレンドの流れは穏やかですが、当店ではスーツのようにセットアップにもでき、単品でも着られるジャケットやパンツをよくご提案しています。トレンドは知りつつも、着回しやその人の着用シーン、好みに合わせることを一番に考えています。あと、スーツスタイルの場合、スーツよりもシャツの方がトレンドが顕著ですね。もしトレンドを取り入れたい場合は、シャツやネクタイでプラスするのが良いのではないでしょうか」

―― ずばり、スーツを着こなすコツはありますか?

「着慣れることですね。新入社員の方は一目で新入社員だとわかりますが、それはスーツを着慣れていないせい。どれだけスーツを着てきたか、かつ、上質のものであればなお良いですが、そうでなくとも手入れをして大事に扱っているかは見ればわかります。着てきた回数と手入れの仕方は見え方にすごく影響するんですよ。もちろんスーツが似合う体型もあるけれど、痩せすぎていたり胸が薄いなどのコンプレックスをカバーできるのがオーダーの魅力です。服で形を作れるのがスーツの良さでもあるので、いまいちスーツが着こなせないと感じるのならまずサイズを見直したり、思い切ってオーダーするのもひとつの方法です」

若い人にもっと魅力を伝えたい

―― スタッフさんのInstagramをはじめ、YouTubeにもさまざまな動画をアップされていますね

「当店は、なんとなく敷居が高そうだと言われるんです。そもそもオーダースーツ自体にハードルの高さを感じる方も多くいらっしゃるので、そこを打破するためにSNSや動画サイトを利用しています。動画にはスーツのNGな着こなしやスーツの選び方、オーダースーツが完成するまでの様子を紹介するものもあり、SNSでは時々コミカルな動画を上げることも。若い人にもオーダーの良さを知ってもらい、オーダースーツってそんなに敷居が高くないんだと伝われば良いなと思っています。また、初めてのオーダーだと緊張されるお客様も多いですが、その緊張の糸を切るのも僕たちの仕事。動画を見て興味を持ってもらい、気軽にご来店いただくきっかけになると良いですね」

―― 坪川さんにとってオーダースーツとは?

「自分で初めてオーダーしたスーツは今も覚えています。本当に何もわからない状態だったので、生地やシルエット、ボタンなども全部提案してもらいました。オーダースーツは完成まで1、2ヶ月かかるのですが、出来上がりを待つ楽しさも初めて味わったし、何より完成したスーツに袖を通した時の感動は今も鮮明です。待つ時間や仕立て上がったスーツとの対面は、やはりオーダーならではの醍醐味ですね。それに、どんな自分に見せたいか、いかに体型をカッコ良く見せるかにこだわれるのもオーダーの利点。ほとんどの人はどこかしら体型にコンプレックスがあると思いますが、それを上手に隠せるうえ、着ていると気分が上がる、それが僕にとってのベストなスーツです」

―― 最後に、アパレルの接客業を目指す方にアドバイスをお願いします

「接客業はお客様と対面して商品を提案する仕事です。そのため扱う商品に対する知識は必要ですが、正直なところ、知識は後からついてくる部分も多々あります。それ以上に、お客さまにとってどれだけ楽しい時間を作れるかが大事。オーダーの場合はどんなシーンで着用するのかといったライフスタイル込みでのご提案をするため、服以外の話をすることもあります。なので話題の引き出しを多く持つことも意識していますね。実は僕はとても人見知りで、今も初めてのお客様を前にすると緊張します。けれどせっかく時間を使ってここに来てくださっているので、お客様の時間を無駄にせず楽しい時間だったと思ってもらえるよう、常に心掛けています。服が好きなのはもちろんですが、それ以上にお客様に楽しんでもらうこと。こういう姿勢も接客業にとっては欠かせないのではないでしょうか」


『CENTO TRENTA(チェント トレンタ)』南船場店

国内外で買い付けたカジュアルウエアからオーダースーツまで揃えるセレクトショップ。靴やネクタイ、小物の取り扱いも充実し、ビジネスシーン以外でのスーツスタイルも提案。正統派のスタイルから遊び心を感じさせるスタイリングまで、提案力とセレクトセンスに定評がある。

https://centotrenta.jp/


TEXT:橫田愛子

PHOTO:西木義和

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