香りでその人を印象付けることもできる香水。“理想の自分”を演出するためにも、香水のことを知り上手な使い方をマスターしたいところ。そこで今回は『香水の基礎知識』として香水の種類をはじめ、香りが時間の経過と共に変化していくこと、香水の付け方などを紹介。季節やTPOに合わせたつけ方で香水ライフを楽しみましょう。
【目次】
・香水の種類
・時間で香りが変わる
・香水をつけるのにおすすめの部位
・つけ方のコツ
香水の種類
主に香料とアルコール、蒸留水で作られる香水は、その中に含まれる香料の割合、賦香率(ふこうりつ / 物質が酸化する際に生じる香りの強さを表す指標)によって種類が分かれています。長く香りが持続するパルファムをはじめ、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オーデサントゥールまで、その特徴を紹介します。
パルファム
パルファム(P)の賦香率は15~30%と言われ、最も香料の濃度が高く、深く芳醇な香りが楽しめます。約5~7時間ほど持続し、香りの立ちもよく1滴でも十分に香るため、長く香りを楽しめるのも魅力。ただ香りが強い分、上級者向きの香水ともいえるかもしれません。使用する際は周りの迷惑にならないためにも、香りが広がりにくい下半身、例えば腰や足首、膝裏などにほんの少し付けるようにしましょう。使用シーンは、パーティーやデートなど、特別な日がおすすめです。ゲランの『シャリマー』、シャネルの『N°5』、ディオールの『ミスディオール』のラインナップにパルファムはありますが、近年は香水を日常使いすることも増えているため減少傾向にあります。
オードパルファム
オードパルファム(EDP)の賦香率は8~15%と言われています。パルファムより濃度は低いものの、こちらも深い香りを楽しめます。香りも約5時間前後と持続するため、付け直す必要がありません。イヴ・サンローランの『ブラック オピウム』、トム・フォードの『ブラック オーキッド』、クロエの『クロエ オードパルファム』など、パルファムに比べて種類が多く、手に入れやすい価格なのも嬉しい点。これらを踏まえても使いやすい香水といえますが、香りは強いほうなので付け過ぎは禁物。パルファム同様に香りが広がりにくい下半身、例えば腰や足首、膝裏などに1プッシュ程度つけることをおすすめします。
オードトワレ
オードトワレ(EDT)の賦香率は5~8%と香りが強すぎないため、シーンや季節を問わず日常使いしやすいことから、初心者の方にもおすすめの香水になります。つける量は1~2プッシュ程度が一般的でほどよく香りますが、持続時間は約3~4時間。1日中、香りを楽しみたい方は、例えば朝、昼、晩と付け直す必要があります。ただ、付け過ぎると香りが強くなるので気を付けましょう。ブルガリの『ブルガリ プールオム』、エルメスの『ナイルの庭』、ドルチェ&ガッバーナの『ライトブルー』など、軽やかでさわやかな香りが多いかもしれません。
オーデコロン
オーデコロン(EDC)は賦香率が3~5%と低めで、気軽に使える濃度になっています。持続時間は約1~2時間と短く香りが飛びやすいことから小まめにつけ直す必要がありますが、オードトワレよりも香りが控えめで柔らかいため、シーンを選ばず日常的に使えるほか、気分転換やリフレッシュ目的に使うのもおすすめ。また、強い香りはちょっと苦手……という方にも使いやすいかもしれません。商品や香調にもよりますが、比較的優しく香るため、上半身や手首、肘の内側に2~3プッシュ程度付けて楽しむことができます。
オーデサントゥール
日本ではあまり見かけることのないオーデサントゥール(EDS)。賦香率1~3%と香水の中でも最も濃度が低く、香りの持続時間も1時間ほどですが、アルコールを使用していないものが多いため、肌に優しいという点が魅力のひとつになっています。そのため、敏感肌の方も試しやすく、子どもに使うことができるようで、フランス発の子ども服ブランド『ジャカディ』では大人と6歳以上の子どもを対象にしたオーデサントゥールが発売されています。
※各ブランドによって賦香率と持続時間は異なるため、あくまでも目安となります。
時間で香りが変わる
複数の原料を組み合わせて作られる香水は、時間の経過とともに香りが変化していきます。これには香料の揮発する速さが関係し、“香りのピラミッド”と呼ばれる3段階、トップノート、ミドルノート、ラストノートの順に香るようになっています。これ以外にも、同一の香りが持続するシングルノート、さらに複雑に香りが変化するものもありますが、今回はこの3段階について紹介します。
トップノート
“香りのピラミッド”の最上段に位置するトップノートは、香水の第一印象。肌に付けてすぐに感じる最初の香りになります。主にオレンジやレモン、グレープフルーツなどの柑橘系、ピーチやアップルなどのフルーティー系、植物やハーブなどのグリーン系といった爽やかで軽い香りが使われていることが多いです。これらの香りは揮発性が高いため、持続時間は付けてから約5~30分程度と短めになります。
ミドルノート
“香りのピラミッド”の真ん中に位置するミドルノートは、複数の香りが調合される香水においての核、メインの香りになります。調香師が一番表現したい香り、特徴が現れることから香りの心臓部 “ハートノート”と呼ばれることも。この部分は揮発速度が遅い香料で構成されるため、付けてから30分~2時間くらいになり、トップノートと比べて持続時間は長めです。主に、ローズやジャスミンといったフローラル系や、ジンジャーやカルダモン、ブラックペッパーといったスパイシー系などが使われます。
ラストノート
“香りのピラミッド”の一番下にあり、ベースノートとも言われるのがラストノートです。最も揮発の遅い香料が使われているため持続性が高く、香水をつけてから2時間以降、香りが消えるまでの残り香になります。サンダルウッドやシダーウッドなどのウッディ系、ムスクやアンバーといった動物系、バニラやチョコレート、コーヒーなどのグルマン系など、深い香りの香料が使われることが多くなっています。これらは最後まで肌に残ることが多く、付けた人自身の体臭と混ざり合って独自の香りになっていきます。そのため、香水を買う際はムエット(試香紙)で嗅ぐだけではなく、自分の肌に乗せて香りの変化をチェックすることをおすすめします。
香水をつけるのにおすすめの部位
香水は体温で温められることで揮発し、香りが拡散。さらに、下から上へと立ち上る性質を持っています。これらを踏まえ、香水を付ける部分は素肌で太い血管が通っている場所が良いとされています。その中でも強く香らせたい場合は、手首やひじの内側、うなじがおすすめ。ただ、鼻に近い顔やうなじを含む首回りなどは香りを強く感じるため、香り酔いすることも。さりげなく上品に香らせたい場合は、ウエストやおなか、足首やひざの裏など胸より下に付けるといいでしょう。特にウエストやお腹は服に覆われるため、ほんのり香りを楽しめるだけでなく、周囲に対して香害になりにくい点もいいところです。ちなみに、香水で汗の臭いは消せないため、汗をかきやすい場所に付けるのは避けましょう。
つけ方のコツ
香水が持つ本来のいい香りを引き出すためには、清潔な肌に付けましょう。近年は香り付きの洗濯洗剤や柔軟剤が多いですが、香りが混ざるのを避けるために、なるべく無香料を使うことをおすすめします。付けるタイミングは、ミドルノートが香る頃、出かける30分前くらいが最適。そして付け方のコツですが、スプレータイプは付ける部位から20~30cmほど離してプッシュ。適量はワンプッシュと言われていますが、香りの強さによって調整しましょう。付ける際、手首に付けてこすり合わせる人がいますが、香りのバランスが崩れるため、これはNGです。また、空中にプッシュしてその下をくぐるという方法もありますが、香水にはアルコールが入っているため、量が多すぎると髪や衣服を傷める可能性もあるため、あまりおすすめできません。付けすぎたときは、水で洗ったり、無香料のアルコールを染み込ませたコットンやアルコール入りのウェットティッシュで拭き落とすと香りが軽減されます。
体温や季節、香料のタイプによっても香りの強さは変わってくるため、その日の過ごし方や使う香水の種類によって付ける部位や量を変えることも重要なポイントのひとつ。これらを押さえ、香水を上品にまといながらいい香りを楽しみましょう。
TEXT:金子 裕希
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