個性的かつ新鋭ブランドが豊富にラインナップしていると評判の、大阪の北堀江にあるアイウエアのセレクトショップ、「èpice」。オーナーである進藤貴通さんにお話を伺う後編の今回は、アイウエアのトレンドや選び方、アイウエア業界で働くために必要なことや、進藤さんのこれからのビジョンなどをお届けします。
トレンドを押さえつつ自分らしさを演出
―― ファッションと同様にアイウエアにもトレンドはありますか?
「そうですね、トレンドの移り変わりは速いです。ファッションと同じで最近だとインスタグラマーさんが愛用しているメガネを探しに来る方も増えましたね。もちろん仕事柄トレンドは必ず頭に入れていますが、トレンドに合わせて買い付けをすることはありません。ただ、大きな流行があるとデザイナーも自然とそれを意識したデザインになるので、気にせず買い付けても大きく流行から外れることもないように思います。最近はオーバーサイズの太めのセルフレームが流行していますが、それがどれだけ個性的なデザインでも自分が気に入ったものを堂々と掛けこなすのが一番かっこいいんじゃないかな。
うちの場合はトレンドに乗るというより、意識はしていないけれど次に流行るものを仕入れてくる傾向にあります。モスコットのアイウエアを置いたのも早かったし、「èpice」発信が意外に多いんですよ。買い付けの際に気に入って選んだものが結果的にその後のトレンドになるんですが、無意識にそういうものを選ぶのは海外の街中ですてきな人を観察し、知らず知らずのうちに感覚が磨かれているのかもしれません。アイウエアもファッションの一部なので、オシャレな人はやっぱり目につく。そういうことも含め、ファッションに興味を持つことはアイウエア業界を志す人にとっても大切だと思います」
―― アイウエア選びはメガネ初心者にとってハードルが高く感じますが、選び方のコツはありますか?
「小さめのメガネよりはややオーバーサイズの方が誰にでも似合いやすいですね。あと、女性の場合だとメイクの有無でも印象が変わります。メタルやクリアカラーだとノーメイクで掛けると印象がぼやけるし、ヘアカラーと似た色のフレームを選ぶとあまり映えません。メガネが欲しいけどどう選んだらいいのかわからない方は、やっぱり信頼できそうなお店に行くこと。スタッフのファッションを見て自分の好みと似ているとか、客層が自分に合っているとかも店選びのポイントになりますね。僕はお客さまの顔を見るときに鼻のラインと顔の横幅、どんなファッションなのかを見て似合いそうなメガネを提案しますが、迷ったらプロに聞く、これが一番です」
―― 日本人に似合わないメガネもあるのでしょうか?
「似合わない、というよりは立体的な骨格でないとフィットしないものはあります。代表的なのがスポーツサングラスなどに多いカーブしたフォルム。これはフィッティング(調節)をするにも限界があるので、平面的な顔の人が多い日本人には難しいですが、ある程度はフィッティングで調節できます。たとえば女性だとまつ毛がレンズに当たるという相談をよく受けますが、これはノーズパッドの調節で当たらないようにできます。こういったフィッティング技術はメガネを扱ううえで非常に重要だと感じます」
―― フィッティング技術はどうやって磨くのですか?
「これはもう、経験と性格ですね。僕は最初に勤めたメガネ店でみっちり練習をしましたが、やっぱりコツがあるんです。うちのスタッフにはこのコツをしっかりと伝えますが、お客様の掛け心地を追求しよう、掛け心地の良さにもこだわりたいと思う気持ちや、細部にまで神経が行き届く性格も大事。メガネは実用品でもあるので、使い心地の良さは絶対的なポイントなんです」
働きたい店に合わせて知識を磨く
―― これからアイウエア業界で働きたい人にアドバイスをお願いします。
「メガネ店といっても、うちのようなセレクト系なのか、実用系なのかに分かれます。どちらにも共通するのはフィッティングなどの正確な技術ですが、これは働き出してから経験を積むなかで身につくもの。それ以前にできることだと、セレクト系のお店を希望する場合はファッションの勉強をしておくといいのではないでしょうか。なかにはメガネの知識に関してとても詳しい人もいますが、プロダクトとしてのメガネが好きというよりは、お客様の好みのファッションも含めてのトータルで似合うかどうかを提案できることが大事。センスを磨く、そのためには街に出て人の着こなしやアイウエアの取り入れ方などを見ることです」
―― 進藤さんがスタッフを雇う際に重視する点とは?
「これが好き、と感じる感覚を共有できる人かどうかです。僕と好みがある程度似ていることはすごく大事。ただ、大まかな好みは一致しているけれど、その中でも異なる方向性やセンスを持っていて、お互いに刺激し合えるような感性の人。面接などの際は、私服で来てもらいます。スーツだとその人の好みやセンスがわからないので、私服って大切なんですよ。ファッションに興味があるかどうかもわかりますしね。もちろん接客業なのでコミュニケーション能力は大切ですが、相手に失礼にならない程度に自分の意見を提案できるスキルを磨いていける人がいいですね」
今後も『èpice』らしさを追いかけ続ける
―― これからのビジョンなどはありますか?
「以前は店舗を増やすことも考えましたが、僕がどの店にも同時にいられる訳ではないので、誰かに店を任せるとなるとやっぱり人ありき。今は多店舗展開というのは考えておらず、今後はより「èpice」の個性を出していきたいなと考えています。ここだから見つかる、出合えるというアイウエアをセレクトし、変わらずに自分が自信を持っておすすめできるものだけを取り扱っていきたい。今はメガネの専門店でなくてもアイウエアが買えますが、やはり良いものを信頼できる店で買う。そういう店として選ばれる店作りをこれからもしていきたいと思っています」
個性的なものから知る人ぞ知るブランドまで、多数のアイウエアを扱う「èpice」。そのどれもが進藤さんが気に入って買い付けたもので、どのメガネにも共通しているのが、アイウエアとしてのデザインの良さはもちろん、掛けた時にその人のパーソナリティを表し、掛ける人の魅力を引き出すデザイン。そんなセレクトができるのは、やはり自分の感性を信じてブレずにやってきたからこそ。最後に、進藤さんにどうやったらメガネが似合うのかを尋ねると、「たとえそれがかなり個性的なデザインでも、堂々と掛けこなす姿勢」と答えてくださいました。
『èpice(エピス)』
インポートを中心に約30ブランドをあつかうアイウエアのセレクトショップ。リュクスなものから個性的なブランド、クリエイティブなデザインなど多彩なアイウエアが揃い、フィッティング技術の高さにも定評がある。
https://www.instagram.com/epice_pr_horie_osaka_japan/
TEXT:横田愛子
PHOTO:大久保啓二