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パタンナーからデザイナーへ 鈴木ゆうみ(YuumiARIA)の「ファッションライフ」

文化服装学院でパターンを学び、メンズブランドのデザイナーアシスタントを経験。デザイナーとして独立後、古着のリメイクとコレクションの2つを軸にブランドを立ち上げられた鈴木ゆうみさん。思わず一目惚れしてしまうようなデザインと高い機能性で多くのファンを魅了しています。パタンナーからデザイナーへ転身され、様々なハプニングをいつでも明るく乗り越えてきた鈴木さんにキャリアと服作りについてのお話を伺いました。


経験したことは絶対に無駄ならない

――ファッションに興味を持ったきっかけは?

小さい頃に母が着せてくれていた服が少し個性的だったんです。私が映画の「アニー」が好きだと言ったら、80年代の黄色いニットを着せてくれて、髪型まであのクリクリヘアーにされたりして…(笑)。中学生になって友達と初めてお出かけした時に、皆が自分と違う格好をしていることにとても驚き、自分で服を選ぶようになりました。15歳の頃に友達の紹介で近所のショッピングセンターに入っている服屋さんでアルバイトを始たことで、将来スタイリストになりたいと思うように。それと同時に古着とも出会い、服作りに興味を持ち始めました。古着はデザインが好みでも、サイズが少し大きかったりすることも多いので、自分でお直しをして着ていたんです。理想のアイテムが見つからない時は古着をリメイクして自分で作ってしまうことが多かったですね。

――服作りは独学で?

知識は一切なかったので型紙も起こさず、ジャキジャキとハサミで切っちゃって…もちろん失敗もたくさんしました。でも、「切りすぎちゃったからこっちの布を足して…」という風に、アイディア次第で可愛いく仕上げることができるようになって、失敗を重ねる度にハサミの入れ方にためらいがなくなりましたね(笑)。一度しっかり服作りについて学びたいと思ったので、高校卒業後は文化服装学院へ進学しました。スタイリストになりたいという夢は変わらず持っていましたが、基礎を学んでからでも遅くはないと思い、スタイリスト科ではなく基礎科に進み、その後パタンナー科へ。スタイリストになる前に、服作りの全体を見渡せる規模のブランドで働いてみたかったので、とあるメンズブランドのコレクションラインにパタンナーとして就職しました。

――お仕事としてファッションに携わる経験はいかがでしたか。

大変でしたが、学校では学べなかったことを教えていただき、真っ新だった自分がどんどん埋まっていくような感覚でした。でも、2年ほどパタンナーを経験して、自分には決まったデザインを起こすパタンナーの仕事が向いていないと限界を感じて…。もちろん働く中で高度な技術を学ばせていただいたのですが、周囲に本当に素晴らしいパタンナーの同僚や先輩がいたので、近くで見ていたからこそ、これ以上は自分には難しいのかなと。ただ、経験したことは絶対に無駄ならないという確信があったので落ち込むことはありませんでした。技術だけでなく本当に沢山のことを学び、素晴らしい方々と出会えた2年間でしたから、卑屈な意味じゃなくて前向きな「私じゃない方がいい」。自分に向いていることと向いていないことを知る機会を与えていただきました。

お客様からの一通の手紙に支えられて

――そこからデザイナーに?

転職活動を始めようとした時に、部署移動の内部辞令がありデザイナーアシスタントをすることになったんです。パタンナーの仕事をしているうちに、「基本的なデザインはこれだけど、いくつか違うバージョンも作ってくれる?」と言われることが多くなっていたんですよね。それが楽しくて楽しくて、もう1個と言わず6個くらい出したりして。恐らくそういうことがきっかけで「この子…パタンナーじゃないな…」となったのか(笑)、ありがたいタイミングで辞令をいただきました。この頃には、スタイリストになりたいという想いよりも、ファッションに関わる仕事をしていることへの喜びが大きくなっていました。デザイナーアシスタントになったのが22歳、デザイナーへの一歩を踏み出したのは24歳。当時アシスタントをしていたデザイナーに「僕は24歳で初めてデザインをしたから、君も24歳という若いうちからデザインをやるべきだ」と言っていただけたことがきっかけでした。勤めていたのはメンズブランドだったのですが、新しくレディースブランドの立ち上げを任せていただくことになったんです。

――なぜ大好きだった会社を辞めることに?

一番大きかったのは家庭の事情ですね。当時はほとんどの時間を仕事に費やしていたので、仕事の傍らで家庭に時間を割くということは無理だと思い、会社に退職の旨を伝えたところ、契約社員としてレディースブランドのデザインを任せていただけることになったんです。とにかく感謝の気持ちでいっぱいで、いただいた仕事を全力でやっていたのですが、半年経った頃にブランド自体が休止することに。もちろん不安もありましたが、働いている皆さんが人生のすべてを懸けて仕事に取り組んでいる中で、私だけが家庭の事情を考慮してもらっていたことにずっと罪悪感があったので、この機会に私も一旦リセットして一から頑張ることにしました。会社を辞めてからは友達のブランドのデザインや古着屋さんのお手伝いなど、色々な仕事を経験させていただきました。

――鈴木さんは辛いことやハプニングにもいつもポジティブに向き合われていますね。

周囲の皆さんに助けがあってこそですね。当然産みの苦しみはありますが、世の中に向けては明るい部分だけを見せたいという想いがあるので、ある程度のことはガッツで乗り越えてきました(笑)。それでも、デザインをしていた友達のブランドを離れることになった時は、自分が空っぽで何もなくなったような気持ちになって…初めて服作りを辞めようと思いました。そんな時、お客様から一通のお手紙をいただいたんです。「あなたの作る服がすごく好きだから、どんな形でも服を作り続けてくれたら嬉しいな」と。そういう方が一人でもいてくださるなら、作ろう、残そう、と腹を括り、28歳で自分のブランドを立ち上げるに至りました。私は今でもその手紙に支えられながら服作りをしています。

子供たちとの時間も、仕事に向き合える時間も、永遠じゃない

――リメイク服を選ばれたのはなぜですか?

お手伝いしていた古着屋さんでは、店頭に並ばない大量の服を仕分けるという仕事もしていました。その時に「こんなに世に出てない古着があるんだ」と衝撃を受けたんです。その古着たちを世に出してあげたいという気持ちから一台のミシンと手縫いでリメイクを始めました。リメイクなので最初は一型からでしたが、同じデザインでも使う生地や素材が違うので1着として同じ服にはならないんですよね。バイヤーさんが、そこに面白さを感じて服を買ってくださって。3年くらいリメイク服一本でやっていましたが、既製服という新しい服があることで、それぞれに相乗効果があるんじゃないかと既製服のラインも始めることにしたんです。リメイク服も既製服も”ファーストインプレッションのときめき”と”機能性”の両立を大切にしています。大事なお金を払って買うものですから、「可愛い!」という高揚感は欠かせませんし、着てみたらこんなところにポケットがあって便利…という風に、着た人だけがわかる幸福感として機能性も大切だと思っています。メンズ服は機能性を兼ね備えた服が多いので、メンズブランドで働いていた経験が活きていますね。

――ブランドコンセプトの「本当の意味でのリアルクローズ」ですね!アイディアが枯渇することはないのでしょうか

デザイナーとして映画やアートからインスピレーションを受けることももちろんありますが、待ちゆく人を見て「あの人はこういう服が似合うな」とか、「あの服はもっとこうしたら可愛くなるな」とか、そんな風に考えながら見ることでアイディアが生まれることが多いですね。自分自身も、“お買い物体験”を大切にしていて、今でも古着・既製服問わずショッピングをするようにしています。良いものを、お客様が納得いく価格で自信を持って販売したいので、自分が欲しいものが世にあるのか、その金額を払ってでも欲しいと思えるものかどうかを常に意識するようにしているんです。

――今後の展望は?

私は大切な人を亡くした経験から、人生は意外と長くないなと思っているんです。小さな子供が2人いるので、家庭と仕事の両立はもちろん大変…でも、子供たちとの時間も、仕事に向き合える時間も永遠じゃないんですよね。だから1日1日を全力でやるしかない。もちろん「今日は料理ができませんでした!はい、お茶漬けね!」なんて日もありますが(笑)。本当に苦しい時、家族や周囲の人はもちろん、人生をかけて没頭できる服作りが私を支えてくれました。だから、お客様が思う以上のもっと素晴らしいものを作ると心に決めているんです。これからも理想の服作りに向けて日々邁進していきたいと思います。


鈴木 ゆうみ すずき・ゆうみ

文化服装学院でパターンを学び、メンズブランドのデザイナーアシスタントを経験。

デザイナーとして独立後、古着のリメイクとコレクションの2つを軸にしたブランド「YuumiARIA」を展開。

2008 S/Sから古着をベースとした1点物のリメイクラインをスタートし、2011 S/Sよりコレクションラインをスタート。
UNUSUALをコンセプトに、ベーシックな女性らしさの中にメンズウェアにある機能性を取り入れた、
デザイナーが日常必要だと考える、本当の意味でのリアルクローズを提案している。

https://www.instagram.com/yuumiaria_official/

http://yuumiaria.com/


TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)

PHOTO:坂野 則幸

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