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ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.5 赤堀君

ファッションに関する仕事というと、ショップの販売員など各ブランドで働くスタッフをイメージする人が多いと思いますが、世の中には様々なファッションに関わる仕事が存在します。そんな中から、イラストとストーリーでファッションの魅力を伝えることができる「漫画家」にインタビューをする企画をスタート。漫画家から見たファッションや「好きを仕事にすること」についてお話をうかがいます。

第5回は、2012年に第62回ちばてつや賞奨励賞を受賞。2013年『月刊モーニングtwo』にて『ドーナツ父さん』で漫画家デビューを果たし、現在『good!アフタヌーン』にて『ビンテイジ』を連載中の赤堀君先生にお話しいただきました。


ファッションでなら、イケメンに下剋上できる

――ファッションに目覚めたのはいつですか?

高校は部活ばかりしていてジャージしか着ていなかったので、大学生になったらおしゃれをしないと!と、興味を持ち始めました。古着屋でバイトをしていたのですが、お客さんの中には『TUNE』や『FRUiTS』※1のストリートスナップに取り上げられているような人たちもいて、店長から「あの人たちに負けない出で立ちでお店に立ってほしい」と言われたんです。雑誌を読んだり気になる服を買ってみたり、ファッションについて勉強していくうちにどんどんハマっていきました。

――赤堀君先生が考えるファッションの魅力とは。

学校ではイケメンポジションだった男の子が、制服を脱いで私服になると普通の人に見えるという現象ってあるじゃないですか。ファッションは違う自分になれたり、学生時代に勝てなかったイケメンにも下剋上ができるという…夢がありますよね。ファッションは自由だし、人を自由にさせてくれる存在でもあると思うんです。人になんと言われようが自分が一番好きだと思う服を着ていれば関係ない。それよりも自分が選んだ服を、夕方頃に「なんか今日の服装いまいちかも…」と思う方が落ち込みますね。

「あんたに会社勤めは難しそうだね」と言われて

――ファッションに関する漫画は『ビンテイジ』が初めてですよね。

そうですね。古着屋で働いていましたが、当時はまだそんなに知識がなかったので、漫画にしようという発想はなかったんです。編集部に持ち込みをした時、古着屋でバイトをしていた話をしたら編集さんに「面白そうじゃん!」と言ってもらったのがきっかけで『ビンテイジ』を描きはじめました。ファッションは好きなものを着るのが一番だと思っているので、あまりファッション指南のような漫画にはならないように心がけています。古着はその世界を突き詰めていく”オタク趣味”のようなところも魅力のひとつ。古着に対する知識がなくても楽しめるようにあえてマニアックな部分を描いています。とはいえ、読みやすさを考えて1話ごとにあまり古着の知識を入れすぎないというのも意識している部分ですね。

――漫画を描き始めたきっかけは?

絵は小学生の頃から描いていましたが、漫画を描き始めたのは大学生になってからですね。たまたま本屋で加藤伸吉さん※2の作品に出会い、「こんな漫画が描きたい!」と思ったのがきっかけでした。まずは家にある漫画を模写することから始めて、見様見真似で漫画っぽいものを描くことはできるようになったんですが、なんせ話が面白くなくて…。それでも賞に出したり持ち込みをしたり積極的に行動して、編集の方からいただいたアドバイスを参考にしながらブラッシュアップしていきました。僕が漫画家になれたのは諦めずに描き続けていたからだと思います。

――コミックス1巻の帯には「古着と恋で男は変わる!!」とありますが、古着を好きになって何か変わったことがあれば教えてください。

古着を着てもモテなかったし彼女もできなかったので、僕は特に変わりませんでした…(笑)。ただ、古着屋でバイトを始めたことで普段の生活では出会えない人たちと出会うことができ、世界は広がりましたね。それまで自分が世間から浮いているような気がしていたんですが、古着屋で個性的な人たちと出会ったことで「なんだ仲間がいたじゃん」と気持ちが楽になりました。

――漫画家以外になりたい職業はありましたか?

アパレル業界で働くか、漫画家になるか、どちらかになれたらいいなと思っていました。就職活動の時期になっても就活をするのが面倒で、古着屋でバイトをしながら漫画を描いていましたね。バイト先にすごくファッションに詳しい先輩がいて「この人には勝てないな」と感じていたことや、描いた作品が少しずつ賞をもらえるようになっていたタイミングだったこともあり、アパレル業界で働くよりも漫画家になる方に可能性を見出しました。親からも「あんたに会社勤めは難しそうだね。社会に適合できなさそうだから無理せずにやりたいことをやってみたら?」と言われていましたし…(笑)。

本当に好きなものは2つあるといい

――実際に漫画家になってみていかがですか。

最初はかなり鬱々としていましたね。でも、そうじゃないと描けないものもあると思っていたので、ノートに鬱屈とした気持ちを書き殴りながら、それを原動力に漫画を描いていました。漫画を描き始めてすぐ、持ち込んだ先の編集部でボロクソに言われた時が一番辛かったです。帰り道は心の中で何度も街に唾を吐きました。でも最終的には良い漫画を描いて納得させるしか反撃の方法はないのでやるしかないですね。何が腹立たしいって、相手が言っていることが正しいくて反論の余地がないこと。僕自身も自分の漫画を読み返す度に「下手だな」と思うので、現状に満足せずに頑張れるのかもしれません。

――自分自身に対する評価がすごく俯瞰的だと感じました。苦しい想いをしてまで漫画を描かれる理由はなんなのでしょう?

漫画を上達させるためには、俯瞰的に見て違和感や間違いを自分自身で直せるようにならないといけないと思っています。もちろん担当編集さんはアドバイスをくれますが、その前に自分で気付けないと漫画家として続けて行くことは厳しいような気がして。最初は面白い漫画に出会って、自分も面白い漫画を描きたくて始めましたが、今は「この世に生きた証を残したい」という想いが強いです。『ビンテイジ』の1巻が発売された時に掲載された駅広告を見た時は「証を残せた!」と嬉しかったですね。

――今後の展望と、読者の方にアドバイスをお願いします!

もちろん今後も漫画を描き続けていきたいと思っていますが、もし続けるのが難しくなったらアパレル業界で一から頑張ろうかなと思うこともあります。それは決してアパレル業界を舐めているということではなくて、僕が本業である”漫画を描く”ということと同じくらい好きなものをもう一つ持っているということ。もし僕が漫画以外に好きなものがなかったら、挫折した時にかなり苦しむと思うんですよね。でも同じくらい好きなものを持っていれば、そっちの道が拓ける。僕の場合だと、漫画と古着が繋がって『ビンテイジ』連載に至ったので、本当に好きなものはどこかで繋がって新しいものが生まれることもあると思っています。本当に好きなものを2つ持つこと、これが大切なのかなと思いますね。

※1…レンズ(ストリート編集室)のファッション誌。1996年に”原宿フリースタイル”をコンセプトとした『FRUiTS』が創刊された後、FRUiTSのメンズ版『TUNE』が発行された。

※2…漫画家・イラストレーター。 長編代表作に『バカとゴッホ』『惑星スタコラ』『流浪青年シシオ』『惑星デッサン』などやArt『国民クイズ』などがある。


『ファッションの魅力を描く漫画家たち』
ファッションの魅力を描く漫画家たちvol.1 常喜寝太郎

ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.2 坂本拓

ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.3 猪ノ谷言葉

ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.4 矢島光


赤堀君 あかぼりくん

2012年に『お父さんは○○』で第62回ちばてつや賞奨励賞を受賞。2013年「月刊モーニングtwo」にて『お父さんは○○』を改題した『ドーナツ父さん』で漫画家デビュー。著作に『ガカバッカ』『にこめっこ』など。2021年8月から「good!アフタヌーン」にて『ビンテイジ』を連載開始。

『ビンテイジ』(アフタヌーンKC)

「どうして…どうしてオレはなんでモテないんだ!?」
主人公・エイジは、オシャレに無頓着なイケてない大学1年生。
童貞卒業を目標に合コンに挑むも惨敗続きの彼は、古着フリークだった父親の形見のGパンと、愛想はないけどめちゃくちゃ可愛い古着屋の女の子・アヤメと出会う!
「古着」と「恋」で動き始めるキャンパスライフコメディー、開幕!!

https://afternoon.kodansha.co.jp/c/vintage.html#:~:text=2021%E5%B9%B48%E6%9C%88%E3%82%88%E3%82%8A,%E3%80%8E%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%80%8F%E3%82%92%E9%80%A3%E8%BC%89%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%80%82


TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)

PHOTO:坂野 則幸

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