ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』

世界的なファッションデザイナーとして知られるジャンポール・ゴルチエの生い立ちからデザイナーとしての生涯を描くランウェイミュージカル『ファッション・フリーク・ショー』。2018年のパリでの初演以来、“ありのままの自分を愛する”ゴルチエの多様なメッセージが現代社会の共感を呼び、世界中からのラブコールを受けて、ワールドツアーの開催が決定。2022年7月のロンドン公演を皮切りにワールドツアーをスタートさせ、今年ついに日本に上陸。5月19日(金)～6月4日(日)に東京・東急シアターオーブ、6月7日(水)～11日(日)に大阪・フェスティバルホールで上演されます。

伝説的ファッションアイコンを生み出した“アヴァンギャルドの旗手”

マドンナの最もアイコニックなルックである円錐形の“コーンブラ”など、伝説的ファッションアイコンを生み出してきたジャンポール・ゴルチエは1952年にパリ郊外で生まれ、1970年の18歳の誕生日に、デザイナーで初めてライセンスビジネスを興したピエール・カルダンのもとでキャリアをスタートさせました。その後、エステレル、パトゥ、カルダンを経て、1976年に自身のメゾンを立ち上げ、パリで初のショーを開催。瞬く間に批評的、商業的な成功をおさめ、80年代初頭には注目の若手デザイナーのひとりに。マリンボーダー柄、メンズスカートなどのアンドロジナスルック、コルセットなどの下着をアウターウェア化する下着ルック、ボンテージ・ファッション、香水のパッケージにブリキ缶を使用するなど、前衛的かつ挑発的なコレクションを発表し続け、“アヴァンギャルドの旗手”としてファッション業界をけん引。2020年にコレクションからの引退を発表しましたが、2004年から2011年まで、エルメスのレディース・デザイナーも務めています。また、日本との結び付きも深く、1981年にはオンワード堅山とライセンス契約を締結(2007年に輸入・販売契約を切り替え)。デザイン性が高く、目を惹くアイテムの数々は日本でも高い人気を誇り、日本の伝説的バンド、BOØWYの衣裳を手掛けたり、宝塚歌劇団の舞台衣裳を提供したこともありました。

ジャンポール・ゴルチエの半生を描く、ランウェイミュージカル

そんな彼の半生、幼少期からトップデザイナーとして躍進していく激動を描いた自叙伝エンタテインメントとなるこの『ファッション・フリーク・ショー』。これまでのキャリアの中でマドンナのツアー衣裳をはじめ、ピーター・グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』、リュック・ベッソンの『フィフスエレメント』など映画の衣裳デザインも手掛けるなど、ダンス、音楽、映画の分野でも活躍してきた彼自身が、演出・デザインを担当するだけに、このミュージカルも実に豪華絢爛！ファッション×音楽×ダンスを融合させ、真の「美」を追求し躍進を遂げたゴルチエならではの、性別も人種も体形も、あらゆるものを超越した真の美しさが映し出されるステージになっています。

注目すべき点は、やはり衣裳！実際にパリコレを飾った貴重なオートクチュールコレクションが200点以上も登場します。代表作や人気作だけでなく、ショーのために書き下ろされた新作デザインの数々なども目にすることができるとのこと。それだけに、ゴルチエが手掛けた派手な衣装を身にまとったウォーキングシーンは絶対に見逃せません。もちろん、ファッションだけではなく、ダンスパフォーマンスも必見。本作は、マドンナ、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズらのダンスも手掛けた振付師のマリオン・モタンが振付を担当。コンテンポラリーからストリート、ジャズなど多岐にわたるダンスが作品を彩ります。奇抜で美しい衣裳と共に、世界を魅了するトップクラスのキャストたちによる圧巻かつ繊細でダイナミックなダンスによって、一瞬でその世界観に引き込まれることでしょう。

　そして、劇中の音楽にも注目。マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、デヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」など、世界的なヒット曲が多数登場するほか、ナイル・ロジャース「Le Freak」をフィーチャーした音楽が登場。キャッチーな音楽と圧巻の歌唱に、心も体も揺さぶられることでしょう。加えて、日本オリジナル演出として水原希子ら、スペシャルゲストも登場するとのこと。見応え十分なランウェイミュージカルになっています。

パリで約25万人を動員し、今回がアジア初上陸となる豪華絢爛なファッション×音楽×ダンスの祭典。なかなか見ることのできない豪華な衣裳はもちろん、ゴルチエが生み出した刺激的なエンタテインメントショーに触れてみてください。

TEXT：金子裕希