昨今はアパレルブランドが展開する別業態が高い注目を集めています。2022年12月15日には期間限定ながら、パリのルイ・ヴィトン本社ビルにもギャラリーやカフェ&チョコレートショップが誕生したニュースも記憶に新しいところ。この流れはラグジュアリーブランドにとどまらず、ストリートブランドやファストファッションにいたるまで浸透中です。飲食店からライフスタイルショップなど様々な業態がありますが、特にコロナ禍で「衣食住」の中でも特に「住」は大きな関心を集めています。前編ではアパレルブランドが手掛ける飲食店にスポットを当てました。後編となる今回はインテリア＆ライフスタイルショップをピックアップしてご紹介します。
【目次】
・JOURNAL STANDARD FURNITURE（JOURNAL STANDARD）
・DIESEL LIVING（DIESEL）
・H&M HOME（H&M）
・B:MING LIFE STORE by BEAMS（BEAMS）
・ZARA HOME（ZARA）
・SALON adam et rope’（ADAM ET ROPE’）
コロナ禍で生まれた「住」への意識改革
世界に蔓延した新型コロナウイルス感染症。このウイルスは人々の生活を大きく変えましたが、中でも変化したのはライフスタイルの在り方です。自宅で過ごす時間が格段に増え、部屋を心地よく整えたい、リモート会議で背後に映る自室をすっきりさせたい…などインテリアを意識する人が多くなりました。また、SNSではコロナの流行と共に自宅を紹介するルームツアーが話題のコンテンツとなり、その人気は今も継続中。こうして「住」にスポットがあたり、暮らしの拠点である家をより自分らしく、美しく整えるという意識が高まってきています。アパレルブランドはデザイナーのセンスや世界観をカタチにして販売する業種だけに、より広いキャンバスに世界観を描けるインテリアやライフスタイルデザインとの親和性は抜群。アパレルブランドが手掛けるインテリアやライフスタイルショップは、そのブランドらしいエッセンスが扱う商品の隅々にまで感じられるのが魅力です。
JOURNAL STANDARD FURNITURE 【JOURNAL STANDARD（ジャーナルスタンダード）】
インテリアのみならずリノベーションや注文住宅のプロデュースまでを手掛けるJOURNAL STANDARDのインテリアブランドは、JOURNAL STANDARDらしいミックス感が幅広い層に人気です。ナチュラルな天然素材の椅子やテーブル、ヴィンテージ感漂うソファーなど、こだわりをのぞかせながらも気取らずに自然体。これはブランドの顧客層と一致し、シーズン毎にアーティストやクリエーターとのコラボを行うのも特徴的です。店舗は東京を中心に大阪、福岡など全国にあり、オンラインでも小物から大型家具までを購入可能です。
DIESEL LIVING 【DIESEL（ディーゼル）】
イタリア発のDIESELが2008年から展開するインテリアブランド。ホームテキスタイル、照明、家具の3ラインからスタートし、日本には2010年に家具コレクションが上陸しています。「人生を楽しむ」というコンセプトを基にデニムを活かしたロックテイスト溢れるホームコレクションを発表し、過去にはイタリアを代表するインテリアメーカーMOROSOとのコラボレーションを行なったことも。ファッションブランドらしいエッジーなセンスを大手家具メーカーの高品質に落とし込んでいることから、プロダクトデザインやインテリア好きからの評価も高いそう。
H&M HOME 【H&M（エイチアンドエム）】
ファストファッションブランドとして一時代を築いたH&Mですが、実は本国スウェーデンで人気を集めているのがホームライン。キャンドルやファブリック、テーブルウエア、雑貨といった小物類が中心で、服同様に購入しやすい手頃な価格とバリエーション豊かな色が持ち味です。デザインはシンプルなものが多いためインテリアを選ばず、キッズアイテムも多数ラインナップ。日本国内に店舗はないもののオンラインで購入できるほか、ホームラインアイテムの一部を期間限定で国内のショップで扱う取り組みも。センスの良い生活雑貨がプチプライスで購入できるので、若い層にも手が届きやすいのがH&Mらしいところです。
B:MING LIFE STORE by BEAMS 【BEAMS（ビームス）】
セレクトショップの草分けとして知られるBEAMSは、以前からファッションのみならず雑貨など幅広い分野のアイテムをセレクトしてきた経緯が。2012年には満を持してファミリー3世代へ向け、ライフスタイル&ファッションを提案するショップをオープン。現在はファミリー向けからスタイリッシュな男女へと軸足をうつしてはいるものの、トレンドを程よく取り入れたカジュアルな服と雑貨のラインナップは健在です。全国に展開している店舗もファッションビルよりはファミリー向けのモールへの出店が多く、おしゃれなアイテムに気軽に触れられるのも大きな特色。
ZARA HOME 【ZARA（ザラ）】
ZARAが展開するホームラインは、洋服同様に豊富なバリエーションと手に取りやすいプライスが評判。特筆すべきはそのアイテム数の豊富さで、バス・キッチン・テーブル用のファブリックやベッドリネン、カトラリーにルームフレグランスなどがずらりと並びます。価格も数百円のものからあり、モダンからロマンティック、シックなものまでとデザインも充実。品質の良さにも定評があるため、ギフトを探しに来る人も多いそう。現在国内に10店舗あり、洋服と同じく人気の品はすぐに売り切れてしまうので見つけたら即買いが鉄則。
SALON adam et rope’ 【ADAM ET ROPE’（アダム エ ロペ）】
ADAM ET ROPE’から派生したライフスタイルショップとして女性の支持を集めるSALON adam et rope’は、衣食住をバランスよくエディットした品揃えに注目。ファッションやアート、食事、インテリアやカルチャーの要素をリンクさせた「暮らし」の提案をするほか、店内にはカフェも併設。扱うアパレルも通常のADAM ET ROPE’と比べるとリラックス感の強いものが中心で、日常を素敵に彩る雑貨がラインナップ。現在はカフェのみならず、ワインと肉、米食堂など多彩な飲食業も展開中。
ブランドの世界観とリンクするものをセレクトしたりデザインしたりと、いずれのショップもアパレルが持つ魅力をそのままライフスタイルシーンへと投影しています。また、同じライフスタイルという切り口では、ユニクロが一部の店舗で生花の販売をスタートしたことも印象的でしょう。花は暮らしに彩りを与え豊かにしてくれることから「服を選ぶように花を選んでほしい」と花の販売をスタートしたそうですが、今後もこうした生活のエッセンスになる商品を展開するブランドが増えるのではないでしょうか。これからのアパレルは服、家具、雑貨、飲食といった垣根を越えてよりボーダレスにブランドの世界観を広め、次世代のファン獲得につなげることが重視されているのかもしれません。
TEXT：横田愛子
