クライアントの意図を可視化し、ブランドイメージを作り上げるグラフィックデザイナー。世間の流れを敏感に察知するマーケティング能力、そして目にする人にダイレクトに訴えかける創造センスが必要とされるこの職業は、社会のあらゆるところで私たちの視覚に印象を残します。広告やチラシ、看板など平面のイメージが強いグラフィックデザインですが、実はアパレル業界でも必要不可欠な存在として企業の戦略を支えています。
【目次】
・グラフィックデザイナーとは?
・アパレル業界におけるグラフィックデザイナー
・仕事の流れと具体例
・アパレル業界でグラフィックデザイナーになるためのスキルや経験
グラフィックデザイナーとは?
グラフィックデザイナーの仕事は、一般的に出版社、広告代理店の依頼を受け、雑誌広告やポスター、SPツールなどのデザインを行うことが主とされています。商品に込められた意図をインパクトのあるヴィジュアルに変換して伝えることが重要で、クライアントのメディア戦略においては非常に重要なポジションを担っています。
これまでは雑誌や新聞など印刷物の平面デザインが主戦場とされてきましたが、出版不況による雑誌の売上低下に伴い、近年はWebに移行するデザイナーが急増。企業によるオウンドメディアやSNSでの広告展開が活発になり、クリエイティブの重要性が注目されている状況から、今後は既存のデザインに動画やマーケティング、プログラミングなど、多様な方向性を組み合わせた表現ができる人材が需要を伸ばすと予想されます。
アパレル業界におけるグラフィックデザイナー
アパレル業界におけるデザイナーといえば、ファッションデザイナーが真っ先に思い浮かぶところ。それでは、グラフィックデザイナーは、この業界において、どのような立ち位置で仕事を行っているのでしょうか。
グラフィックデザインの業務では、作家性よりもクライアントの意図を的確に表現することが優先されます。特にアパレル業界では、企業の戦略がハイペースで更新され、シーズンごとの商品展開、ブランドの方向性などをダイレクトにアウトプットできる環境が必要とされるため、グラフィックデザイナーはインハウスで雇用するのが通例となっています。
トレンドを常に意識し、マーケティングを正確に分析する能力が求められることから、ディレクターやマーチャンダイザーといった社内スタッフとのチームワークも重要になってきます。
仕事の流れと具体例
アパレル業界におけるグラフィックデザイナーの仕事には、広告制作も含まれますが、専門的なところでは、Tシャツなどにプリントする図案のデザイン、外部アーティストとコラボレート商品を展開する場合は、アートディレクションの担当といった業務が代表的なところとなり、本項ではこちらの内容について紹介します。
職種的にテキスタイルデザイナーも近いように感じられますが、テキスタイルデザインが生地の素材や色、染め方や織り方などを請け負うのに対し、グラフィックデザインは、商品のボディを最大限に活かすデザイン作成に注力します。
広告におけるグラフィックデザインでは、カメラマンやコピーライターなど、制作段階においてさまざまな技術者との連携作業が発生します。対してアパレル業界のグラフィックデザインは、企業により若干違いはありますが、一般的には前項で述べたトレンドやマーケティングの分析を社内スタッフと共有した後、デザイナー単独による作業でアイデアを作成、経営陣など上層部へのプレゼンテーションを行うという流れになっています。
ブランドによっては、グラフィックだけでなくボディそのもののデザインに触れることもあるため、ファッションデザイナー的な感性も求められます。
アパレル業界でグラフィックデザイナーになるためのスキルや経験
プロとして第一線で活躍するデザイナーは、美術大学や専門学校の出身者が多い傾向にありますが、そういった経歴を持たず、別業種からの転身で活躍している人も少なくありません。
業務を行うに当たって特別な資格を要しませんが、広告業界、もしくはアパレル業界でのデザイナー経験は重要な選考ポイントとなってきます。
また、illustratorやphotoshopといったデザインソフトのスキルは必須となるため、未経験の場合はAdobe CCのクラウドサービスを契約して、技術習得と作品制作に励みましょう。現在ではオンラインでの自宅学習や週2日のカリキュラムを実施している専門学校も増えているので、働きながら学ぶことも可能です。
TEXT:伊東孝晃