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性別の壁を超える ジェンダー・ニュートラル・ファッションとは

数年前から「LGBT」という言葉が注目を集め始め、最近では性自認や性的指向は4つに留まらないということで「LGBTQ+」と表現されるようになりました。このようにジェンダーへの関心は日々大きくなり、主張や解釈も多様化し続けています。まだまだ世界のジェンダー問題に対する取り組みは過渡期ではありますが、特に性差が表れやすいファッション業界でのジェンダー問題への取り組みは目覚ましいものがあります。今回はジェンダー・ニュートラル・ファッションと、ファッションを通したジェンダー問題への取り組みを紹介したいと思います。

 

【目次】
まだまだ根深いジェンダー問題
ジェンダー・ニュートラルとは?
注目されるファッションブランド
ジェンダー・ニュートラルに対する様々な試み

 

まだまだ根深いジェンダー問題

「LGBTQ+」への認知や「SDGs」の考え方が普及する中で、より一層の注目を集めているジェンダー問題。ジェンダーの不平等が発生する原因は、主に宗教上の理由、伝統的な社会構造や風習、教育の欠如、生物的役割の違いなどが挙げられます。男性と女性では身体的構造が根本的に異なるため男女平等の難しさは常に議論されていますが、ジェンダー不平等は単なる「身体的な性差」だけでなく、政治など重要な社会的意思決定の女性の参加率の低さや、賃金格差、偏見やセクハラ・モラハラ問題など「社会的な差別」を助長します。また、近年では女性に限らず男性へのセクハラ・モラハラ問題、女性優遇制度などへの問題意識も強まってきました。

ジェンダー・ニュートラルとは?

少し前まではジェンダー問題というと「男女間の性差」という認識でしたが、性自認や性的指向は男女だけに限らない上、後天的に変化する可能性もある流動的なものだという認識に変わってきています。これまでも「ジェンダー・フルイディティ(性的流動性)」や「ジェンダー・レス(性別を無いものとして考えること)」などの定義がありましたが、最近ではすべてまとめて「ジェンダー・ニュートラル(男女という二分された性別と、それに基づいた性的指向に囚われない)」と表現されることもあります。ファッション業界においてもジェンダー・ニュートラルの考え方は大きな注目を集め、ランウェイでも数年前から性差を感じさせないコレクションが多く見られるようになりました。

注目されるファッションブランド

性自認は流動的でグラデーションと言われ、LGBTQ+には該当しなくてもレディースの服を着ることに違和感のある女性や、性自認も肉体も男性だけどかわいいものが好き、という場合もあります。特に性差が表れやすいファッションですが、最近ではジェンダー・ニュートラルなアイテム展開のブランドも増えてきており、ありのままの自分や理想の自分をファッションで実現することもできるようになりました。

 

PALOMO SPAIN
カテゴリーとしてはメンズウェアとされながらも、シルクのイブニングガウンやサテンのノースリーブジャンプスーツなどメンズウェアにはあまり使われない素材や装飾、シルエットを採用し、既存のジェンダーのアイデンティティにとらわれないアイテムを展開している「PALOMO SPAIN」。しかしデザイナーのアレハンドロ・ゴメス・パロモはジェンダーを意識して服作りをしたことは一度もないと言います。彼にとってファッションとは自由であり、男性であろうが女性であろうが何でも好きなものを着ることは当たり前なのです。

 

Paul Stuart advance
CUTE、SWEET、SEXYをコンセプトとしたブランド「JILLSTUART」でクリエイティブディレクターを務めていた佐藤三佳をディレクターに起用し、2019年にローンチしたブランド「Paul Stuart advance」。NEW YORK、CLEAN CASUAL、ATHLEISURE、ARTをキーワードに掲げ、性差や国境、人種を超えたボーダレスマインドを持つ人に向けたモードカジュアルスタイルのブランドです。Tシャツ・スウェット・アウター・パンツはS~Lサイズで展開し、性別を問わず着用できるようになっています。

Ground Y
アシンメトリックなカッティングやシルエットが特徴のヨウジヤマモトから展開される「Ground Y」。元々、伝統的なメンズウェアのスタイルをレディースウェアに取り入れるなど、ジェンダーの固定概念に捕らわれることなくコレクションを展開してきたヨウジヤマモトですが、Ground Yが持つのはよりエイジレス・ジェンダーレスな世界観。パンツとスカートをレイヤードし、さらに上からシャツを巻き付けたかのようなボトムスや、多数のボタンとボタンホールがあしらわれたビッグシルエットのポンチョは、着方によって全く異なる表情に変わり、「服の着用方法」という根本さえも覆す斬新なアイテムが並びます。Ground Yの「正解のないファッション」は、年齢や性別を超越した自由を私たちに提供してくれます。

ジェンダー・ニュートラルに対する様々な試み

ファッションデザイナーたち以外にも様々な著名人や企業がジェンダー・ニュートラルに対する試みを行っています。影響力のある著名人や企業が行動を起こすことで少しずつ世論が変わってきているのです。ジェンダー問題に対して大々的に行動を起こすことは最初は勇気が必要かもしれませんが、こうして世界中で上げられている声に注目することもジェンダー・ニュートラルな世界を作るための重要な一歩だと言えるでしょう。

 

バービーの製造元、Mattel社による「Creatable World」シリーズ(2019)
児童向け玩具としてだけでなくそのファッション性の高さから大人からも絶大な人気を誇るバービー人形。製造元であるMattel社は、2019年に性的な区別のないジェンダー・ニュートラルな「Creatable World」シリーズを発売しました。「Creatable World」シリーズの人形はいずれもニュートラルな顔立ちで、髪の長さや色を自由に変えることが可能。セットアイテムはスカートからデニム、ワークブーツなど様々なファッションアイテムが入っており、思い思いのスタイリングが楽しめます。

 

アカデミー賞のビリー・ポーター(2019)
舞台「キンキーブーツ」でトニー賞ミュージカル主演男優賞、ドラマ「POSE/ポーズ」でエミー賞主演男優賞を受賞したビリー・ポーター。2019年のアカデミー賞授賞式にタキシードレス姿で登場し、周囲を驚かせました。彼はゲイであることをカミングアウトしており2017年にはアダム・スミスと同性婚をし、授賞式にも彼と共に出席しました。ビリー・ポーターはその他のパーティーや授賞式にもジェンダー・ニュートラルなファッションで登場し、ジェンダーとファッションの多様性についてのメッセージを発信しています。

 

VOGUEのハリー・スタイルズ(2020)
大人気ボーイズグループOne Directionのメンバーとして一世を風靡し、ソロアーティストとしても活躍するハリー・スタイルズ。2020年にアメリカ版「VOGUE」誌で表紙を飾ると、創刊して以来初となる男性単独表紙だったことはもちろん、彼がウエディングドレス姿だったことで大きな話題を呼びました。強い男性像を求める保守派などからは批判的な声も多数寄せられましたが、グッチのクリエイティブディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが手掛けたモードなドレスを身に纏い、堂々とカメラを見つめるハリー・スタイルズは「人としての強さと美しさ」を感じさせます。「性別という垣根を除いてしまえば、遊び場が開ける」という彼の言葉は多くの人の心を動かしました。

 

ファッション誌「mini」の「ジェンダーレス宣言♥」(2021)
男性ファッション誌「smart」のガールフレンド版として創刊したファッション誌「mini」。ガールフレンド版とは言え、当初からデニムやTシャツ、スニーカーなどストリートでユニセックスなコーディネートが人気だったminiが、2021年5月号から「ジェンダーレス宣言♥」をキャッチコピーとして打ち出しました。男女で洋服をシェアしたり同じアイテムを入れ替えたコーディネート企画や、男性のメイク・ネイルページが追加され、モデルも男女ほぼ半数ずつに。「女性誌」とカテゴライズするのではなく、誰でもが楽しめる「ストリートファッション誌」に育てていきたいという想いから今回の宣言に至ったそうです。世界の中でも日本はまだまだジェンダー後進国ですが、日本国内でもこういったジェンダー・ニュートラルへの取り組みが見られるようになり、大きな進歩を遂げています。

 

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