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大阪農林会館のショップオーナーが語る「足を運んで買うということ」vol.3

大阪・南船場にある1930年に建設されたアンティークビル「大阪農林会館」。昭和レトロな雰囲気香るモダン建築として知られるこのビルは、個性的なショップが軒を連ねることから関西のファッション好きにとっては特別な場所。そんなビルに店を構えるショップオーナーにお話を伺うシリーズ企画の最終となる第三回は、長年有名セレクトショップで勤めた山口拓治さんがディレクションをする、その名も「山口ストアー」です。自らのセレクトで集めた品々が並ぶ店内は、まさに服好きが夢見る魅惑的な“マイクローゼット”。「着る人が幸せになれる服」をセレクト基準に据えたという店作りについて、山口さんに伺いました。

 


 

ファッションへの憧れは身近に

Q. 「山口ストアー」という店名をつけた理由やファッションに興味を持ったきっかけをお聞かせください。

実家が九州でスーパーを経営していて、その屋号が山口ストアーでした。扱うモノは異なるけれど屋号を引き継ごうと思い店名にしました。
服に興味を持ったきっかけは、実家のスーパーにテナントで入っていた魚屋のお兄さん。当時はアイビーやサーファー全盛期で、まだ小5だった僕は12才年上のその兄さんのセンスに憧れて服に興味を持ちました。
僕は福岡の大牟田市出身ですが、熊本に「ブレイズ」というショップがあり、その後「パーマネントモダン」という店名となってセレクトショップの原型と言われるようになった伝説的な店で、高校生の頃はここに通いつめましたね。その頃は将来アパレルの仕事に就こうとは全く考えておらず、ただ服が好きな青年でした。
その後、京都の大学に進学し、始めたアルバイトが「ビームス」です。在学中の4年間お世話になり、いざ卒業、就職という段階になって、セレクトショップでのアルバイト経験を生かして「ユナイテッドアローズ」を受け入社しました。

大手セレクトショップで培った経験

Q. 就職先である「ユナイテッドアローズ」では12年間勤務なさっていますが、そこでの経験を、現在どう生かされているのでしょう?

とても魅力的な会社で学ぶことが多かったです。何より身になったのは接客に対する姿勢で、直属の上司にも恵まれ多大な影響を受けたと感じています。僕が働いたのはいわゆる日本を代表するセレクトショップばかりですが、大手となり得る理由のようなものを体感として学びました。
ただ、自分が経験を重ねて店長となると今度は部下の育成もしなくてはなりません。最初は戸惑ったり疑問を持つことが多く、自分のやり方に自信が持てるようになったのは辞める1年前くらいでしょうか。自信がついたから自分で何か始めようと思い、当初はあまり深く考えず、辞めて1年後くらいに自分の店が持てたらいいな、という程度に考えていたんです。

Q. 独立にあたってどうして大阪農林会館を選んだのでしょうか。

以前からビル内にあるヘアサロンに通っていたご縁で、ここを紹介していただきました。まだ迷っているときに、この物件を扱う不動産屋さんに街で偶然に会い、空きが出たと聞いて決めました。
大阪農林会館の良さは和洋折衷感や、古いけれどどこか新しさを感じる温故知新さ。実は3年前までは現在の半分のスペースで営業していて、隣が空いたので拡張して今の形になりました。都心にありながらも一歩中に入ると時間の流れがゆっくりになるというか、なんだか自由な空気感がとても気に入っているんです。

ベーシックだけれど古臭くない服たち

Q. 国内外からセレクトされている服はどれも品がよくベーシックなものが中心ですが、バイイングの際に何を意識されているのでしょう。

トラッドが軸にあります。ベーシックでありトラッドであることがセレクト基準ですが、あくまでも現代的なデザインであることを意識していますね。トラッドとひと口に言っても様々ですが、古臭さを感じるスタイルではなく今のニュアンスや空気感を纏った“ベーシックさ”が基準。展示会に足を運んでは新鮮なものを探しますが、もちろん自分が着てみたいと思えるってことも大切。
僕自身は機能よりも見た目の美しさを服に求めるタイプなので、一見して美的な完成度が高い洋服に惹かれます。素材や機能といった蘊蓄はその次で、まずは袖を通してかっこいいかどうか。かっこいいと自信が湧いて前向きになれますよね。だから「着る人が幸せになれる服」をこれからもセレクトの基準にしていくつもりです。

Q. ご自身のスタイリングやショッピングでのこだわりをお聞かせください。

僕にとってのファッションは着るとテンションが上がって楽しくなる服。そしてモテる服(笑)。着ていて自信が持てたり自分が心地良かったりするのって、お気に入りの服を纏う醍醐味だと思うんです。だから今でも欲しいものを見つけると、ドキドキワクワクしますよ。
個人的には色々な国のブランドをミックスするのが好みで、色ならネイビーやグレー。基本にフレンチアイビーがあるのですが、他のセレクトショップや古着屋にも頻繁に足を運びます。そこから刺激を受けることも多く、常に流行は意識していますね。

より精度を上げたワクワクできる店づくりへ。

Q. コロナ禍の今、お店の状況はいかがでしょう。

当店でもオンラインショップの需要は増えましたが、以前と変わらずお客様のほとんどが足を運んでくださいます。次世代へのアプローチ手段のひとつとしてInstagramなどもやっており、ホームページをきっかけにご来店くださる方も増えてはいますが、現状は対面での販売が主流ですね。
会話をしながらコーディネート提案をしたり、服の話で盛り上がるなど、やっぱり対面での接客が楽しいんです。お客様が試着されて似合っていたときや、街中で偶然、ご購入いただいた服を着ている顧客様を目にした瞬間にこの商売の喜びを感じます。
だから現状を維持しつつも、今後はさらに店舗空間をブラッシュアップするなど、店そのものの精度を上げていきたいなと考えています。
ワクワクできる店づくり、これが今のテーマですね。

山口さんご自身のトラッドながらシックなスタイルは、そのままこの店の顔のようなもの。「着ていて美しく楽しい」そんな洋服を纏うことの魅力を伝えるとともに、上質なトラッドの良さを教えてくれるのが醍醐味。ベーシックやスタンダードを時代とともにアップデートして常に新鮮な定番スタイルを提案するからこそ、若い世代のファンをも巻き込むニュー・クラシックが「山口ストアー」で生まれるのだと取材を通して深く実感しました。

店舗情報

山口ストアー
〒542-0081 大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館410号室
http://www.yamaguchistore.com/


 

TEXT:横田愛子
PHOTO:大久保啓二

 

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