「今、話題のファッションECに迫る」と題してお送りしている連載企画の第三回。
「Vol.1」でアパレル業界におけるECとは、「Vol.2」でECの仕事内容とどのようなスキルが求められるのかを紹介してきました。締めくくりとなる今回は、新しいビジネスモデルとして注目の「D2C」について解説します。
【目次】
・D2Cとは
・SPAとD2Cは何が違う?
・D2Cの仕事内容
・D2Cで求められるスキルとは
D2Cとは
D2Cとは「Direct to Consumer」の略です。具体的には、メーカーやブランドが流通ルートを介することなく、ECサイトで直接消費者に販売をするビジネスモデルを指します。企画・製造から受注・発送・返品までのすべてを自社で完結することで、顧客との関係性の構築やデータ収集などのメリットがあります。
ここ数年で注目度が増している理由はSNSの普及です。Twitter、Instagram、YouTubeなどで企業と消費者が直接コミュニケーションをとることができるようになったため、メーカーやブランドが打ち出すコンセプトを拡散しやすく、“このブランドの”商品が欲しい、と選んでもらいやすくなりました。ただ、顧客に認知してもらうまでの難易度は高いと言えます。
メリット
・製造から販売までを一貫して行うので、顧客との関係性の構築が可能
・顧客のデータを収集できるため、ニーズを捉えた商品開発ができる
・ブランドの思想をダイレクトに伝えられる
・人件費やテナント料が削減でき、品質の良い商品を低価格で提供できる
SPAとD2Cは何が違う?
SPAとは「specialty store retailer of private label apparel」の略で小売業態を差します。自社で商品の企画・製造から販売までを一貫して行う業態のことです。あれ?D2Cとどこが違うの?となりますよね。大きく違うのは、販売形態です。SPAは実店舗での販売を軸とし、D2Cは実店舗を持たずECサイトでの販売を主としています。
D2Cの強みは、顧客の情報や購入履歴などをECサイトで明確に知ることができること。実店舗の販売では、実際に売れた商品の把握はできますが、気になったが購入しなかった、などの情報は手に入りません。顧客の心情により近い情報を蓄積できることは、生産管理や新商品の開発にも役立ちます。
具体例
SPA:ユニクロ、GAP など
D2C:FABRIC TOKYO、foufou など
また、「BAYCREW’S STORE」や「WORLD ONLINE STORE」などの大手アパレル企業は、自社のECサイトで、EC限定ブランドを展開したりもしています。
D2Cの仕事内容
D2CのEC担当の仕事内容は、「Vol.2 ~ECの仕事内容と身につけておきたいスキル」で挙げたものとほぼ同じです。ただし実店舗を持たないため、ブランドをいかに認知してもらえるかが重要となってきます。「Vol.1 ~アパレル業界におけるECとは」で紹介した“モール型”で商品を見つけてもらうのではなく、ブランド名を覚えてECサイトを直接訪問してもらえるような工夫が必要です。
また、在庫のリスクを低減させる生産管理や、スピーディーな商品開発、SNSにおけるマーケティングがより重視されるでしょう。さらに店舗イベント(ポップアップストア)を展開する場合もあります。
「今、話題のファッションECに迫る Vol.2
~ECの仕事内容と身につけておきたいスキル」 は こちら
D2Cで求められるスキルとは
D2C市場は少数精鋭で運営されている場合が多く、自由裁量のため、自由度の高い発想力と企画力が求められます。ブランドを認知してもらえるように、商品の魅力やイメージを効果的に伝えてブランド力をUPさせることはもちろん、WEBマーケティングも重要となります。キーワードで自社サイトを上位に表示させるSEO対策も必要です。また、SNSを顧客との対話の場として重視しているので、SNSの特徴をつかんでうまく運用できるかどうかもポイント。リピート購入へつなげるための工夫や、スタイリング写真・動画の投稿、レビュー投稿を促すシステムなどで、ブランドのファンになってもらえるような、双方向のコミュニケーションをとることが大切となりそうです。