「転職先も決まったけど、現職が退職届を受け取ってもらえない」
「引き止められていて、なかなか退職することができなさそう」……
そんな時に役立つ退職届の効力をご存じですか?今回はそんな退職交渉のお悩みに、ファッションと法律を考えるWEBサイト「FASHIONLAW.JP」メンバーである弁護士の河瀬季さんとニシムラミカさんのお二人にお答えいただきました。
実は退職届には法律的な意味は無く、退職したいという意思を伝えるだけでOK、という目鱗なお話も。法の専門家ならではの専門的なアドバイスは必見です。
「正社員(期間が特に定まっていない社員)」か「契約社員など(期間の定めがある社員)」かによって微妙に異なりますが、いずれにせよ、退職届を受理されなくても、(仮にドラマのように破られてしまっても)退職は可能なのです。
「退職届」の一般論から、正社員/契約社員などの場合の効力までを解説します。
実は退職届を受理されなくても退職は可能!?退職届の効力とは
退職届が受理されなくても「退職の意思」を伝えるだけでOK
まず、退職届を「受理」されることには、法律的な意味はありません。「退職したい」という意思を伝えるだけでOKです。しかし「意思を伝えるだけでOK」とはいっても、口頭で「辞めさせて貰います」と言っただけでは、もし後からトラブルになった場合、結局「言った言わない」の言い争いになってしまいます。そして、受理してくれない会社であれば、後でトラブルになる可能性も、ないとは言い切れないでしょう。
そこで「自分は間違いなく退職の意思を伝えた」という証拠が残る方法で「退職したい」と伝えましょう。「内容証明郵便」というものを使うのが一般的です。
……と、ここまでが、正社員でも契約社員などでも共通の話。
正社員の場合の効力と退職日の問題
正社員は、自分の側からはいつでも自由に仕事を辞めることができます。だから、「入社した際の契約書」に何が書いてあったとしても、退職したいと伝えればOKです。
ただ今後、職務経歴書などを書く上で「いつ退職したことになるか」を考える必要があるでしょう。法律の原則から言うと、退職意思を伝えると、その2週間後に退職の効力が生じます。ご質問にある「30日後には離職ができる」というのが「退職届を出すと30日後に離職ができる」という意味であれば、上記の法律原則と異なる契約が交わされていることになります。
この場合に法律と契約のどちらが勝つのか……というのは、実は法律的に少しややこしい問題です。特にこの点を争う実益がなければ、今後の経歴書などには、意思を伝えた30日後を退職日と書いておくのが無難でしょう。
契約社員などの場合の効力と退職日の問題
法律の原則から言うと、契約社員などは、契約で決められた期間は原則的に働き続ける必要があります。
したがって、ご質問にある「30日後には離職ができる」というのが「退職届を出すと30日後に離職ができる」という意味であれば、上記の法律原則と異なる契約が交わされていることになります。そしてこの場合は、契約が勝ちます。
つまり、退職は可能であり、今後の経歴書などには、意思を伝えた30日後を退職日と書いておけばOKです。
今回お話を聞かせてくれた方
※2014年4月23日に公開
関連記事
損害賠償を求められることも!?「雇用契約書にサインをしたが、辞退したい」
内定合意後、企業側からの一方的な内定取り消し……責任を問うことは可能?
試用期間中に退職した経歴は職歴に記載しなくても大丈夫?履歴書への虚偽記載にあたるケースとは
競合他社への転職を禁止される……そんなのアリ?「競業避止義務契約」の有効性
雇用条件が聞いていたものと違いすぎる…波風を立てずに改善してもらう方法はある?労働契約とその条件を示すこととは