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接客販売の仕事をする上で大切な「二つのそうぞう力と瞬発力」

そうぞう力、と聞くと皆さんはどちらの「そうぞう力」を思い浮かべますか?
何かをイメージする「想像力」ですか?それとも何かを創り出す「創造力」でしょうか?この二つの“そうぞう力”は、実は接客販売をする上でとても大事な力なのです。

例えば店頭に立っている時に、「これとこちら、どちらが私に似合いますか?」「30代後半の男性に喜んでもらえますか?」などの質問をされたことはないでしょうか?こんな質問に答える時、皆さんは無意識に二つの「そうぞう力」を駆使しているのです。

今回はもう一つの大事な力「瞬発力」と合わせて、接客販売で大事なスキルについてお話ししたいと思います。

今回のコラム執筆者

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合同会社NOBuコンサルティング|青栁 伸子さん

東京都生まれ。人事・総務・ITを専門分野とするコンサルタント。日系企業、日系ベンチャー企業での人事経験を経て、1999年にラグジュアリー・リテール業界へ転身。エルメスジャポン、ボッテガ・ヴェネタジャパン、フォリフォリジャパンの各社で人事・総務部門の責任者として、人材育成・組織開発・制度設計などにあたる。同時にビジネスパートナーとして、経営陣に対して人事的な側面からのサポートを行い、会社の業績向上にも寄与。特に接客販売職の「専門職」としての地位確立、処遇の改善、女性が無理なく永く働ける環境づくりなどに注力。2015年にコンサルタントとして独立。

接客販売の仕事をする上で大切なスキル①<瞬発力:瞬時に反応する力>

瞬発力と聞くと、「瞬間的に持てる力を発揮する」という意味でのスポーツの場面でのことを考えてしまいそうですが、接客販売での瞬発力は「瞬間的に力を出す」ことよりも「瞬時に反応する力」という意味合いが強くなります。

接客販売の仕事は「お客様との会話」から全てのことが始まり、そしてほとんどの場合、お客様とは初対面です。目の前のお客様がどんな方で、今日はどんな目的で店舗を訪問されているのかは、お話を伺ってみなければ何一つわかりません。まさかいきなり「今日はどんなご用件ですか?」とお尋ねする訳にもいきませんので、「こんにちは、ようこそ」から始めることになりますね。

皆さんが何かをお尋ねする→お客様がそれに答える→また次のお尋ねをする→答えが返る。あるいはお客さまから何かお尋ねがあって、皆さんがお答えするという状況もあるかもしれません。いずれにしてもこの会話のキャッチボールがテンポよくスムーズに進めば、お客様も次第に心を開いてくださいますし、皆さんが受け取れる情報も多くなります。

会話のキャッチボールがスムーズに進むかどうかは、皆さんの瞬発力にかかっています。成功の鍵を握っているもの、と言っても良いと思います。何故ならば、会話のキャッチボールを始めたとはいえ、まだ皆さんも、そしてお客様も相手のことが良くわかってはいません。いわゆる手探り状態です。そんな中で、お客さまから答えが返るテンポから、そのお客様が好む会話のペースを知り(比較的ゆっくりと会話をされるのか、ポンポンとボールが行き来するのを好まれるのか)、お客様の答えから次の質問を考え出す。これらのことを本当に瞬間的に判断して、次の行動に移していくには「瞬発力」つまり「瞬時に反応する力」が大事なのです

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例えばお客様にお目当ての商品(昨日見た雑誌に広告が載っていた)がある場合、その商品が自分の店舗にあるのか、あるとすればどこにストックされているか、無い場合には入荷の予定があるのか、などがすぐに思い出せて、お客様に「○○という雑誌に広告が掲載されていた、こんな感じの商品ですね。その商品はまだこちらには入荷していませんが、今週の金曜日に入荷予定です。」とすんなり答えられれば、「ただいま調べてまいりますので、少しお待ちいただけますか?」とお客さまをお待たせするよりは、ずっと感じが良いと思いませんか?時間のない忙しいお客様の場合「あ、今わからないならばいいわ」とお帰りになってしまわれるかもしれません。

「今週金曜日に入荷の予定」とお伝えして「広告に掲載されて人気が出ると思われますので、お客様のお名前で一点、取置きをしておきましょうか?(取置きが会社のルールでOKの場合)」と付け加えられれば、お客様にとってもそれはありがたい提案だと思います。もし、会社のルールで取置きができなかったとしても、「入荷しましたらご連絡をさしあげましょうか?」とご提案すれば、そこからまた新しい会話が展開していくはずです。

「時間がないので……」。お客様のお断りの言葉の裏にあるメッセージ

このようにお客様との会話を作っていく、関係を築いていく(心理学の用語ではラポールと言います)には、次にお話しする二つの「そうぞう力」も、ですが、「相手の言葉や動作、視線などに瞬時に反応する」瞬発力が本当に大切です。最初の2~3回のキャッチボールがうまくいけば良いのですが、この会話がうまくいかないと、お客様の側で「何だかこの人とは会話が弾まないから、今日は買い物はやめにして別の日に来ようかしら……」と思われて「今日は時間がないので、また来ますね。」ということになってしまうかもしれません。

この「今日は時間がないので……」という言葉は、お客様がよく口にされるフレーズですが、本当に時間が無い場合と「あなたじゃない人から買いたい」「この商品を買うのはやめた」などの若干否定的な感情の言い訳として使う場合とがあります。私自身も時々口にしますが、本当に時間が無いならば、そもそもその店舗には立ち寄らない訳ですから、言い訳がましいなぁと思いながら使っています。

お客様が「時間が無いので、また今度」とおっしゃった場合、よほど接客が盛り上がってお客様の時間を想定外に使ってしまった時以外は、ご自身の接客に何か不手際がなかったか一度振り返ってみることをお勧めします。お客様との会話がテンポよく進まなかった、お客様の求めるようなご提案ではなかった、などの原因があるかもしれません。ただ、そうは言っても「相性」というものがありますので、悩みすぎるのも問題ですが。
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接客販売の仕事をする上で大切なスキル②<そうぞうする力>

もう一つの大事なスキル「そうぞう力」です。次の場面を想像してみてください。

店頭にいたあなたがお声がけをしたお客様は「今年一年頑張った自分へのご褒美に、大好きなこのブランドで何か買いたい」と思っていらっしゃいます。ここまではわかりました。「今年は頑張った」「自分へのご褒美」「このブランドが大好き」などがキーワードですね。さて、次の会話はどうやって始めますか?

「今年、頑張られたのはお仕事でですか?お疲れ様でした」ですか?
「ご自分へのギフト、何かお目当てのものはありますか?」ですか?
それとも「私どものブランドがお好きでいらっしゃるんですね、ありがとうございます」ですか?

皆さんは、この場合の3つのキーワード(「今年は頑張った」「自分へのご褒美」「このブランドが大好き」)がわかった時点で、どのキーワードから次の会話を始めるかを考え始めているはずです。考えていてくださいネ。

ここでいきなり「ご自分へのご褒美をお探しなんですね。こちらが今年の一押しの商品で……」などと商品紹介を始めてしまうと、お客様のモチベーションは一気に下がってしまいます。「あぁ、そうなの、ありがとう。少し考えてまた来ますね。」とお帰りになるお客様の姿が見えるようです。これが「そうぞう力」の無い接客の典型例です。

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<そうぞうする事の大切さ>

何がいけないのか皆さんはおわかりになると思いますが、上の接客ではお客様が考えていらっしゃること、あるいは漠然と持っていらっしゃるイメージなどに“響く”会話がなされていません。「ご褒美だったらブランドの一押しの商品が良い」というのは販売する側の勝手な意見の押し付けでしかないからです。ブランドの売りたい商品の押売りと言ってもいいかもしれません。

お客様に喜んでいただけるご提案をするには、最初にいただいたキーワードをもう少し発展させて、日頃からどんなファッションがお好きなのか(この時期お客様はコートをお召しのことが多いので、その下のファッションはわかりませんよね)、何か「こんなもの」というお目当てがあるのか(ファッション雑誌がクリスマスギフト特集をしますので)、実際にはいつ頃までに購入されたいのか(冬のボーナスが出るから、とかクリスマスまでにとか)、などなど、お尋ねしたいことは沢山あります。

お客さまから答えを引き出したら次の質問を考え、情報を集めながらご提案する商品をイメージしていく。この一連の作業(実際には皆さんの頭の中でのことですが)には「そうぞう力」が欠かせません。

例えばお客様から
「普段は仕事柄カッチリした黒とかグレーのスーツが多い」
「お休みの日はジーンズ中心のカジュアルなスタイル」
「どうしてもファッションが地味になるので、何かポイントになる華やかなものがあるといいなぁ?と思っている」
「クリスマス前に女子会があって、この時にはオフホワイトのドレスで行くので、その時に持ちたい」

というヒントをいただけたとしましょう。
このお客様にどんな提案ができそうですか?ご自分のブランドに良い候補の商品がない場合は、架空の商品を考えてみてください

いただいたヒントでは十分ではない部分(情報が足りない部分:お客様の身長とか、全体の雰囲気とか、お話をされる様子から伺えるお仕事の内容など)は、ご自分の中で作り上げてください。大事なことは「情報が足りない場合には、重ねてお尋ねすること」と「お尋ねできない場合には、ある程度自分の中で想像(妄想)してしまう」ことです。

<そうぞうした事を伝えましょう>

何かをイメージ(想像)する、イメージを作り上げる(創造する)ことは、お客様に良いご提案をするために大事な作業です。もう一つ大切な事は、ご自分の作り上げたイメージを、なるべく具体意的に、つまりお客さまにもその同じイメージを持っていただけるようにお伝えする、ということです。自分の頭のなかで「これは良い!完璧だわ」というイメージ(ご提案)ができたとしても、それだけではお客様を動かすことはできません。

『お客さまから伺ったお話をもとに、私なりに考えてみたのですが、こんな商品はいかがでしょうか?これならば、女子会でお召しになるご予定のドレスにも会いますし、それ以外にも、お仕事帰りにご友人とのお食事に行かれるような場合でもお使いいただけます。』

というようなご提案をすれば、お客様の中にも「女子会に行く自分とその商品」「会社帰りに友人と食事に行く際の自分とその商品」がイメージされると思います。このように具体的なイメージをお客さまと共有できれば、お客さまからも「もう少しこんな感じのものが良い」とか「こんなシチュエーション(場面)でも使えますか?」というような、より具体的なご質問があるはずです。

お客さまと皆さんの間でイメージの共有ができれば、会話は楽しいものになり、どんどん新しいアイデアが沸いてくると思います。お客様がその商品を身につけることが「楽しい」「嬉しい」「素敵」とイメージできれば、お買上につながる可能性は高くなります。

このパートの最初にご紹介した「ご自分へのご褒美をお探しなんですね。こちらが今年の一押しの商品で……」という接客トークからは、楽しい会話も新しいアイデアも生まれそうもないことは、おわかりいただけたでしょうか?「そうぞう力」が大事です、とお伝えしたい理由はここにあります。

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<瞬発力とそうぞう力を駆使した後は>

瞬発力とそうぞう力を駆使してご提案の商品が決まり、お客様にもそれをお伝えしたとしましょう。時々、ここで急に「押しが弱く」なってしまう方がいます。私自身、何度もそんな経験をしていますが、もったいない、とその度に感じています。

接客の最後の場面で必要なことは「お客様の背中を押す」一言です。拙著の中でもお伝えしましたが、お客様は「これを買おう」と心が決まると同時に、急に『買わない理由』を探し始め、悩みを口にされるようになります。その状況で接客をしている皆さんまでも「押しが弱く」なってしまうと、せっかくお客様の中に作り上げた「楽しくて、嬉しくて、素敵」なイメージが萎んでしまいます。

お客様が『買わない理由』を探されて、色々と悩みを口にされるのは、「買わない」とおっしゃっているのではありません。買いたいけれど、あれもこれも不安、と口にされているだけなので、一つ一つ丁寧にその不安を消していきましょう。皆さんがするべきは「自信を持った根拠のあるご提案」で「これを買ってください」というお願いではありません。皆さんが「そうぞう力」を駆使しているように、お客さまも不安でネガティブなイメージを「そうぞう」していらっしゃるのです。それをきちんと受け止めて、最初にお伝えした「楽しくて、嬉しくて、素敵」なイメージに引き戻していくのが、最後の詰めともいえるクロージングの醍醐味です。腕の見せ所と言ってもいいでしょう。

クロージングの場面で大事なことは、お客様が「そうぞう」された『買わない理由』を否定しないことです。
「なにか少しイメージが違うような気がするけど・・・」
「え、そんな事ありませんよ、お似合いですよ~」
と言われても、そうかしら、とは思えません。

否定的なコメントを否定すればポジティブに変わりそうですが、実はそうではありません。ネガティブなものの方が力が強いので、そうそう簡単にはポジティブには変わりません。お客様の中にある「不安要素」をきちんと伺って、一つ一つポジティブなものに変えていく、ここでも皆さんの「瞬発力とそうぞう力」が大活躍します。上のコメントのような根拠のない“お似合いですよ~”は、残念ながらお客様のモチベーションを下げる効果しかありません。「お似合い」「素敵」には理由(訳)が必要です。「これこれこうだからお似合いです。素敵です」と言えるように、根拠のあるコメントを言う訓練をしておきましょう。

先ほどご紹介した『お客さまから伺ったお話をもとに、私なりに考えてみたのですが、こんな商品はいかがでしょうか?これならば、女子会でお召しになるご予定のドレスにも会いますし、それ以外にも、お仕事帰りにご友人とのお食事に行かれるような場合でもお使いいただけます。いかがでしょうか?』という根拠のある、明確なイメージの沸くご提案は、お客様の『買わない理由』を「これを買うことで味わえるワクワク感」に変えて、「これに決めます」という一言にできるはずです。

自信をもって「私はこう思います。いかがでしょうか?」と提案し、お客様の背中を押してください。もちろん、笑顔で。

接客販売は本当に難しい仕事です。それでも、人を幸せにできる稀有な仕事です。瞬発力とそうぞう力を駆使して、皆さんの周りに幸せな人を増やしてください。その事実が皆さん自身も幸せにしてくれますから。

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