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コンサルタティブ・セールス(=接客販売)という仕事の素晴らしさ|元ラグジュアリーブランド人事責任者・青栁伸子

前回のコラムで、今でも記憶に残るエルメスの接客についてお話しました。今回は、まさにこの接客体験を与えてくれた職業、接客販売職=『Consultative Sales(コンサルタティブ・セールス)』という仕事について書いてみようと思います。

今回のコラム執筆者

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合同会社NOBuコンサルティング|青栁 伸子さん

東京都生まれ。人事・総務・ITを専門分野とするコンサルタント。日系企業、日系ベンチャー企業での人事経験を経て、1999年にラグジュアリー・リテール業界へ転身。エルメスジャポン、ボッテガ・ヴェネタジャパン、フォリフォリジャパンの各社で人事・総務部門の責任者として、人材育成・組織開発・制度設計などにあたる。同時にビジネスパートナーとして、経営陣に対して人事的な側面からのサポートを行い、会社の業績向上にも寄与。特に接客販売職の「専門職」としての地位確立、処遇の改善、女性が無理なく永く働ける環境づくりなどに注力。2015年にコンサルタントとして独立。

『Consultative Sales(コンサルタティブ・セールス)』という仕事について

『コンサルタティブ・セールス』、初めて目にされる方も多いかもしれません。「接客販売」という意味の英語で、私の著書の英語版でこの単語を使用しています。(著書と英語版についてはコラムの末尾参照)

2016年8月に出版した私の本は、様々なご縁から2017年5月に英語版(Amazon Kindle:電子書籍のみ)でも世の中に出ることになりました。翻訳は友人の会社のプロの翻訳家(Brianさん:男性)に頼みましたが(彼のプロフェッショナルぶりは、また別のコラムに書きますね)、顔合わせの時に彼に頼んだのは、「接客販売という日本語を『セールス』という単語で表現しないで欲しい」ということでした

コンサルタティブセールス5

『セールス』と『コンサルタティブ・セールス』の違い

“おもてなし”に該当する英単語(おもてなしを一語で表現できる単語)が無いように、“接客販売”に相当する英単語も無いだろうと思っていましたので、Brianさんが接客販売をどう訳してくるのか、期待半分、不安半分で翻訳原稿の完成を待っていました。

私の中では『セールス』というのは、コミュニケーションも提案もアドバイスもなく「単に売る」という行為、というイメージでした。ファストファッション(身近なところではユニクロやザラなど)やコンビニのレジなどが近い感じです。商品を選ぶのも、購入することを決めるのもお客様自身。店舗にいるスタッフは主に「お会計」の担当で、サイズや在庫のお尋ねがあった場合に対応する、という「お客さまが主体」の購入/販売行為です

それに比べて、私が本の中で繰り返し伝えていた「接客販売」という仕事は、お客さまとの関係づくりやコミュニケーション、提案、アドバイスなどが含まれた、言ってみれば「総合芸術のような販売業務」というものです。お客さまとスタッフが信頼関係に基づいてコミュニケーションをとり、協力して、例えばお互いにアイデアを出し合って、ベストなお買い物をしていただく、という「お客さまとスタッフの協働」での購入/販売行為と言えます

この複雑でエキサイティングで楽しい仕事を『セールス』で片づけたくない、という思いを打合せの時に熱く語りましたので、Brianさんも私の思い入れは十分にわかってくださったのだと思います。そして、英訳原稿で使われていたのが『コンサルタティブ・セールス』という言葉です。

この単語を目にした時には、“そう、そう、そうなの!”と思わず一人で興奮してしまいましたが、まさしく私が言いたかった「接客販売」は『Consultative Sales(コンサルタティブ・セールス)』なのです。

『コンサルタティブ』な『セールス』とは

「Consultative(コンサルタティブ)」を辞書で確認すると、こんな表現になります。

Consultative(英英辞書)
1. of or relating to consultation; advisory.
(出典:Dictionary.com)

Consultative(英和辞書)
音節con・sul・ta・tive 発音記号/kənsˈʌltəṭɪv/
[形容詞] 相談[協議,諮問,審議]の;忠告[助言,顧問]の
(出典:goo 辞書)

相談とか助言、忠告などの言葉が並んでいますが、まさしく「お客様とお話をしながら、商品のご提案やアドバイスをする」という「接客販売」を表すのにふさわしい英単語と言えると思います。考えようによっては日本語の「接客販売」よりも、仕事の中身や特徴をより正しく表現しているのではないでしょうか。

確かに「販売(=セールス)」という感覚の方が多いと思いますし、決して間違いではありません。何かを「売る」仕事ですからセールスです。それでも、『セールス』と『コンサルタティブ・セールス』は違う仕事なので、接客販売をお仕事にされている皆さんには、是非これからは「どんなお仕事をされているのですか?」と聞かれた時には「コンサルタティブ・セールスです」と答えていただきたいと思います。もちろん世の中の大多数の方は『コンサルタティブ・セールス』という単語はご存知ないでしょうから、「え?それって何ですか?」という疑問を持たれるでしょう。それを会話のきっかけにして、「接客販売」という仕事の素晴らしさや難しさを語ってください。

コンサルタティブセールス3

『コンサルタティブ・セールス(=接客販売)』の仕事は難しいから楽しい

『コンサルタティブ・セールス(=接客販売)』という仕事は、長い間様々な誤解にさらされ続けてきました。今ではほとんど言われなくなりましたが、「売り子」という蔑称がまかり通っていた時代もありました。

曰く「誰でもできる」とか「誰が売っても同じ」とか、特にアイコンともいえるような有名な商品を持っているブランドでは「有名で皆が欲しがる商品だから売るのは簡単」とか……。最近では「ネットで買っても一緒でしょう?」なんて意見も

「いえいえ、そうではないんです。こんなに独創性があって、臨機応変な対応が必要で、人間力が問われる仕事は無いんです。世界中で一番素晴らしい仕事だと私は確信しているんです」という事を大きな声で世の中に言いたくて本を書いてしまった私ですから、『コンサルタティブ・セールス』の素晴らしさを語り始めたら、何時間でも何日でも語り続けられる自信があります。

その一方で本を書こうと思ったもう一つの動機には「世の中の誤解もあるけれど、実は今このお仕事をしている方の中に、ご自分の仕事の価値を見失なっている方がいるのでは?」という疑問がありました。

世の中の誤解(例えば「誰でもできる仕事でしょ?」など)に押しつぶされて、ご自分の仕事に誇りや自信がもて持てず、「どんなお仕事をしているんですか?」と聞かれた時に「接客販売です」と言えない。自分の仕事の話をする時に、なんとなく下を向いてしまう。あるいは「いつまでこの仕事を続けられるかわからないから」とキャリアを中断しようとする……

接客販売業応援団としては「もったいないから、辞めるのはやめて。もっと自信を持ってください!」と、これも声を大にして言いたいのです。

確かに『コンサルタティブ・セールス』は難しい仕事です。良い接客をしてもお買上に繋がらない事も多くモチベーションを保つのが難しいこともあります。でも「難しい」からこそ「誰にでもできる仕事ではない」のではありませんか?「商品1点をご購入いただくことの大変さ」は「有名で皆が欲しがる商品」でも同じではありませんか?ひょっとしたら、お客様の期待値が高い分、他の商品よりもご購入いただくことは難しいかもしれませんね。

「あなたに担当してもらって良かったわ」と直接お客様に言っていただける幸せは、「難しい仕事を頑張った自分への何よりのご褒美」ではないでしょうか。

お買上いただいた商品を身に着けたお客様が「この間いただいたこれ、とても気に入っているし、周りの評判も良いのよ!」などと店頭に来てくださる、そんな素敵な関係を築けるのも『コンサルタティブ・セールス』ならではだと思います。

私自身もラグジュアリーリテールの業界に入ってすぐに1週間の店頭研修を経験し、この仕事の難しさは身に染みて感じましたし、同時に「楽しさ」「素晴らしさ」も強く心に残りました。難しいからこそ楽しいのだと思います。私自身は山に登ることはあまり好きでも得意でもないのですが、身近にいる“山登り好き”に言わせると、「高い山に登ることが(難しいけれど)楽しいし、頂上に到達した時の満足感や達成感は何物にも替えがたい」のだそうです。

この“難しいからこそ楽しい”という感覚を持てると、仕事がDuty(義務)では無くなります。私たちは「楽しいことは自発的に考えて動く」「楽しい事には最大限の工夫をする」「楽しいことを考えている時は、頭も体もコンディションが良い」という動物(?)だそうですから。ことわざにもあるように「好きこそものの上手なれ」なのですから。

コンサルタティブセールス2

『コンサルタティブ・セールス』の素晴らしさやそのために必要な“自分磨き”などは、このコラムで語っていきますが、今、なんとなくモヤモヤしている方は、まずはご自分の仕事に自信を持って、同時に「この仕事は楽しい」「難しいけれど、難しいからこそ楽しい」と考えてみてください

そして、「私、この仕事好きですよ」と言える方は、ますますその「好き」に磨きをかけてください。

『コンサルタティブ・セールス』に限らず、ご自分の仕事が「好き」と思えれば、必ず成果や結果はついてきます。

私自身、こんなに長く人事の仕事をするとは(大昔には)思ってもいませんでしたが、続いた理由の一つは「この仕事が好きだったから」です。「好き」をパワーに頑張っていきましょう。

《青栁 伸子さんの著書》

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『人を幸せにするMétier お客さまを虜にする最強の接客サービス』
エルメスやボッテガ・ヴェネタなど、憧れのラグジュアリーブランド。それぞれのブランドでスタッフ育成を手がけた人事コンサルタントが、顧客の心をつかむコツを伝授する。人事のプロが贈る接客販売職への賛歌。

 

 

 

 

 

 

English Ver.

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『No job lets you make people happy like Consultative Sales』
A human resources consultant with experience training sales professionals at luxury brands like Hermès and Bottega Veneta reveals how to win over customers’ hearts and minds! Salespeople are first-rate entertainers!

 

 

 

 

 

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