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「東京のデザイナー、ブランドに求められる役割とは」SOLEIL TOKYO主催、ビームス 南馬越一義氏トークショーレポート

日本ブランドの海外進出サポートなどを行う(有)カシュ・カシュ主催の合同展示会「SOLEIL TOKYO(ソレイユトーキョー)」では、ファッションに関わる人に役立つ場の提供を考え、著名な業界人をお呼びしたイベントを開催しています。

今回は、ビームス執行役員・ビームス創造研究所シニアクリエイティブディレクター南馬越一義さんが登壇し、ナビゲーター役の久保雅裕・「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長の進行のもと行われたトークショーの模様をレポートします。

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すぐ買えるコレクションがもたらす影響

久保雅裕さん(以下、久保):帰国早々ありがとうございます。NYファッションウィークから戻って来られたばかりなんですよね。

南馬越一義さん(以下南馬越):はい、戻ってまいりました。

久保:この2シーズンくらいのトピックスと言うと、「すぐ買えるコレクション」という、コレクション自体の位置付けを変えてきたブランドが出てきたかと思いますが、今シーズンも増えていると感じましたか?

南馬越:今回のNYコレクションはそういう意味でターニングポイントでした。「レベッカミンコフ」がオンシーズンである春物を出しましたが、多分ここまでやったショーってこれまでで初めてだと思いますよ。顧客の人たちも呼んでいたようです。

「ダイアン ファン フォステンバーグ」は、3月に行われるオスカー(アカデミー賞授賞式)に向けて、オスカーに来ていくためのドレスという提案をしていました。そのほかグラマラスなイベントにすぐ着られそうなドレスの提案などしていましたが、ショーではなく、ミートパッキングの店舗を改装して、モデルや本人も出てきて、パーティのような演出にしていましたね。

久保:見せるシーズンの位置付けが変わってくると、買い付けという先を読む仕事への向き合い方もといろいろ変わってきてしまいますよね。

南馬越:今はeコマースがどんどん伸びてきていたり、SNSですぐ情報が発信される中で、ブランドやデザイナーとお客さんとの距離がすごく近くなってきている。展示会でオーダーをとって、数をまとめて生産するというブランドにとっては厳しいですね。半年後にはお客さんがもう飽きてしまっている状態に直面することになります。

久保:IT化が進んで、すぐコレクションが見られて、ファストファッションがすぐにオンシーズンで類似したデザインの商品を売ってしまう。本当のシーズンになった時には飽きちゃう。この影響は大きいですよね。

南馬越:いろんなことが変わってきているんですよね。こうやってテクノロジーが変化したり、イノベーティブなことが起きると、買い方も売り方も変わってくるのは当たり前。

もしかしたらクリエイターが発信してきた価値観って今のユーザーには必要なのかもしれない。大きなマーケットの中で、この流れは止めようがない気もしています。

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過渡期を迎えるファッション業界。今後はどうなる?

久保:コレクションのシーズンとしては、秋冬を見せる2月〜3月と、春夏を見せる9月〜10月とあるわけですが、実際はプレコレクションが1月と、7月にあって、そちらの方が重要視されている面もありますよね。

プレコレの時期にショーもやってしまうところも出てきて、そうするとメンズコレクションの時期とも被るから、一緒にやってしまおう、などそういう別の動きも出てきていますよね。

南馬越:どちらかというとメインのコレクションのショーピース的なものより、プレコレクションの方が売りやすいというのはありますね。実際そういうものをバイヤーが買うようになって売り上げも伸びています。でも、「レベッカミンコフ」のようにドラスティックにショーの位置付けを変えるブランドが出てくると、そういうことすら吹っ飛んでしまうのではないでしょうか。

久保:間違いなく、過渡期というか、コレクションの意味合いがガラッと変わってしまうかもしれませんね。

南馬越:NYブランドがまずはそういう動きを始めているんですよね。やはりアメリカはイノベーティブなものへの興味があるのと、取り入れやすい環境があるんですよね。パリはもう少しコンサバですが。今後もっと変わるんじゃないかと思っています。

久保:そんな中で東京コレクションはどうなるのでしょうか。ここ何年か日本のブランドがコレクションに出たり、展示会に出展してもなかなかバイイングに繋がらないという話をよく聞きますが。

南馬越:国内の展示会を見ていても思うのですが、必ず売れるブランドはあるわけですよ。だから何かしら気が利いているブランドは売れるし、そうではないものはやはり売れないというのが現状。

ここ何年かは服も買わなくなった時代だと言いつつ、自分がやっていることでいうと、インディペンデントで頑張って服を作っていたり、何か面白いことをやっている個人に興味はあります。そういうブランドをどうにかしたいなと思っています。以前は名も知れないものでも、店頭出したら意外と売れて盛り上がったりしましたけど、今はそういうのが少ないですよね。

久保:「コスミックワンダー」はそういったブランドの象徴的存在でしたね。

南馬越:そう!まさに「コスミックワンダー」は展示会すらやっていなかったですからね。デザイナーの前田君からアプローチがあって、偶然的な感じで、火がつきましたね。でも、いろんなコネクションや背景を持っているデザイナーが作ったものが広まっていくというのは昔も今も強いんじゃないですかね。

久保:バイイングをしていた時は、どういう視点でブランドをピックアップしていましたか。以前、「人を見て買っています」ということをお聞きしましたが。

南馬越:本当に?そんなこと言ったかな(笑)。

でもやっぱりストーリー的なものを求めていたんですよ。ブランドの背景というか、思想みたいなものを。作っている人の人となりみたいなものを見ていたんでしょうね。

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でも基本的には、服から入りますよ。ちょっと面白そうだなって思ったものの中に、作っている人の引き出しみたいなものが見えた方が良かったし、お客さんやメディアにプッシュするときの語りになったんだよね。でも今はそういうのはあまり必要なくなってきているんじゃないかな。

久保:もう見た目さえよければという感じなのでしょうか。ビームスではMEGさんというインフルエンサーを立てた「カロリナグレイサー」という業態もありますよね。これは、まさに人が軸となっていますよね。

南馬越:やってみてだんだんわかってきたのは、一人の影響力には限界はあるということですね。インフルエンサーとして、インスタグラムのフォロワーが60万いる彼女が選んだものだとしても、売れるものとそうでないものがある。やっぱり万能ではないんですよね。SNSのインフルエンサーも過渡期に来ている気がします。

久保:潮目が変わってきているんですね。いろんな意味で。それにしても変わるペースが速いですね。

インディペンデントなブランドが進むべき方向とは?

久保:今のクリエイターたちはどういうことやっていくべきと考えていますか?

南馬越:たとえば服以外のもので、アメリカのブルックリンやポートランドなどでは、インディペンデントな人たちがローカルでモノを作っていてそれが盛り上がっているじゃないですか。

今はモノが作りやすい時代。技術革新もあるから、そういうブランドが増えてきました。リーマンショックで仕事がなくなったから、好きだった革小物を自分で作り始めました、というような。それをネットで売り始めたら、地元で人気出て、それが日本にも伝わってきました、というような流れが起きている。

そういうところに次のヒントがあるのではと思っています。既存のチャネルじゃないところで、いろんなお客さんと繋がっていくことができるような気がします。

久保:東コレ含め、今、ブランドに足りないものがあるとすれば何でしょうか。

南馬越:大きな流れでは、洋服のプライオリティが下がっています。けれども、ニッチというか、マーケットは必ずあるはず。そこに向けて既存のチャネルじゃなくても、インディペンデントなモノや人に興味のある人に直接やり取りできる仕組みがあってもいいと思う。

手作りの革小物を作るブランドが、その資金をクラウドファンディングでお金集めてスタートさせたり、昔ながらの機械をネットで購入し、レストアしてモノを作ったり。伝統的なものと新しいテクノロジーがミックスされて、新しい価値を生むというやり方はある。それがすごいマスになるかというのはさておいてですが、小さいブランドの新しいやり方としては一つの方法だと思います。そうしたニーズをマッチングさせるようなことができないかと思っています。

久保:最後になりますが、南馬越さんが今後やってみたいプロジェクトなどお聞かせください。

南馬越:その時の今というところのモノや人と何かしら関わりたい。ほかの人がやっていないことをやりたい、というのはありますね。90年代、女の子に向けたストリートウェアなんてなかったんですよ。だから一気に拡大したんです。そういう“何か”に、これからも携わりたいと思っています。

 

ちょうどNYで数々のショーを見てこられた後のタイミングとなった今回、まさに“いま”、ファッション界で起こっている変化を南馬越さん流に解析してくださいました。長年ビームスのバイヤーとして多くのコレクションを見た経験による切り口は、ファッション業界で働く人々にとって大きなヒントになるでしょう。

 

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