ユニクロを運営するファーストリテイリングが過酷な労働を強いたとして、「残業ゼロ」に向けた取り組みを明らかにしたことは未だに記憶に新しく、2015年10月には週休3日制度を導入するなど、そのオリジナリティ溢れる労働環境は、ファッション業界内外から注目が集まっています。
近年盛んに耳にするようになった、“コンプライアンス”。この意味皆さんはご存知ですか?
コンプライアンスって知ってる?
この言葉が重要視されることとなった背景には、企業が不祥事により大きな信用を失い経営破綻を起こす事件などから企業のリスクマネジメントとして、法令尊守に対する取り組みの重要性が高まってきたことがあげられます。
この“コンプライアンス”とはどういうことを意味するのか?そして、企業はどのような対応をすればよいのか。ファッション業界のみならず、社会人なら誰しもが必ず知っておくべき“コンプライアンス”の内容についてご紹介します。
社内規定やマニュアル、 社会常識や倫理観に基づき行動すること
“コンプライアンス”の意味とは?
コンプライアンス(=compliance)の語源は、“comply”という「(何かに)応じる・従う・守る」。 もともとは1960年代、アメリカで発生した「独占禁止法違反」や「インサイダー取引」が発生した際に使われた法務関連用語で、日本では「法令順守」と直訳されました。
コンプライアンスの言葉には「法令を守る」意味よりも「要求に応じる、方針にしたがう」などの意味を強く持っている事から、企業では社内規定やマニュアル、 社会常識や倫理観に基づき行動することとして考えられています。ここ数年で、企業が発展するための考え方として掲げられている「CSR(=Corporate Social Responsibility)=企業の社会的責任」と並び、多くの企業で重要視されています。
就業規則の決まり。守るべき規則、必要な基礎知識
・未加入はNG! 社会保険(健康保険・年金)への加入
法人の社会保険加入は強制であり、たとえ従業員が一人の会社でも報酬が発生している場合は必ず加入しなければなりません。加入するべき事業所が未加入の場合や、加入していても保険料未納の場合は、ペナルティとして追徴や罰金、延滞金が発生します。
近年は未加入や未納に対しての調査や罰則が強化されていますが、この問題は企業側だけでなく 将来年金を受け取る側である従業員もしっかり自身の未来に関わる重要な規則としての理解が必要です。
・法定労働時間を死守すること
労働基準法によって、使用者は労働者に対して少なくとも毎週1回の休日または、4週間で4日の休日を与えなければならないと決められています。その一方で1日8時間・1週40時間を法定労働時間としていることから、1日に7-8時間働く会社の場合は週休2日と設定している会社が多くあります。
休日や時間外に社員を労働させる場合は、「労働基準法36条に基づく労使協定(通称サブロク協定)」を結び、労働基準監督署長へ届け出をしなければなりません。この協定書を提出していれば法定休日に労働があっても違法ではないですが、出さずに労働をさせた場合は労働基準法違反として 会社に罰金などが課せられます。
・サービス残業は×。未報酬で残業をさせない
労働基準法は、定められた時間を超える労働について25%の割増賃金を支払う事を求めており、法定休日労働や月60時間を超える時間外労働においては別途の割増賃金の規約が設けられている。平成22年度の改正労働基準法の施行により、大企業には原則50%の割増賃金の支払いが求められ、これらの未払い賃金の請求は企業にとって大きな痛手となるケースも見られています。
問題になっている職場での様々なハラスメント
企業が実施するコンプライアンスの取り組みのひとつ、職場におけるハラスメントの防止策を重要視する企業は増加傾向にあります。職場で起きているパワハラやマタハラ、セクハラなどのいわゆる“ハラスメント”について、厚生労働省がまとめた2013年度の民事上の個別労働紛争相談の内訳では、「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と最多、前年に比べて14.6%も増加しており、社会にとって非常に深刻な問題となっています。
加害者の責任だけではなく企業責任が問われる今、職場での立ち振る舞いには大いに気をつけなければなりません。知っておくべきハラスメントについての知識、それぞれの定義を確認してみましょう。
パワーハラスメントの6タイプ
2012年に厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の定義を、パワハラの対象者は上司から部下への行為だけではなく、同僚同士によるものや部下から上司への行為も含むもの、としています。
さらにパワハラにあたる行為を具体的な6つのタイプに分けて掲げました。また、加害者と被害者の受け止め方に大きな違いがあることなどから、相手がどう受け止めるかというマネジメント能力の問題も重要視されています。
- 1.暴行・傷害などの身体的攻撃
- 2.脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃
- 3.隔離・仲間外し・無視で人間関係からの切り離し
- 4.業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 5.業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 6.私的なことに過度に立ち入ること
潜在的なマタニティーハラスメント
マタニティーハラスメント(マタハラ)は、働く女性が妊娠や出産などをきっかけに受ける職場で精神的・肉体的な嫌がらせ、解雇や雇い止めや自主退職の強要などの不当な扱いと定義付けられます。
日本労働組合総連合会が2013年に発表した調査では、25.6%(4人に1 人の割合)が被害を受けたとの結果でした。しかし、その水面下にまだ露見されていないことも多く、妊娠の報告をしたら正社員からパートに降格させられた、産休で休むことはできないと退職を迫られた、産休後に復帰しようとしたら戻る先がないと断られた、など多くの問題が存在しています。このような経営難や能力不足を口実に理不尽な扱いをすることは違法です。
勘違いが起こりやすい、セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは性的嫌がらせのことで“受け取る側が不快に感じるか否か”が基準となるため、同じ発言をしたとしても相手によってセクハラとして受け取られたり、受け取られなかったりと、結論が変わる可能性があります。
セクハラには性的発言やしつこい誘いをするなどの言葉によるセクハラと、わいせつな本や雑誌などを意図的に見えるようにするなどの視覚的なもの、そして直接的に身体に行うセクハラ行動などがあります。仕事上の関係として、相手が感じの良い対応をしていることを自分に好意を持っている、と勘違いしてしまうケースも少なくないようです。
コンプライアンスを守ってリスクのない働き方を!
今では多くの企業でコンプライアンスについて指針を掲げていますが、その多くは法令や規則を守るだけではなく社会的な倫理を守って消費者や市民、従業員の信頼を失う不正行為を行わないことと理解されています。
企業側はもちろん従業員にとって働きやすい、リスクのない職場をつくるためには、コンプライアンスについての認識を一人一人がより深めていくことが必要になります。この機会に、コンプライアンスについておさらいしてみましょう!