販売職に携わるみなさんの仕事成果の指針として、一番にあげられるのが“売上”。その一方で、なかなか思うように売上が伸びない…と売上が悩みのタネになっている人も多いのでは。
今回は、某ラグジュアリーブランドでリテール営業として長年ご活躍、現在は営業部長として販売員の育成にもあたっている方に、販売職の中でもトップセールスと呼ばれる、最強販売員の「売上をつくる秘訣」についてお話を伺いました。
販売員の10%、1人で店舗売上の30%を売り上げる「トップセールス」の存在
―まず、御社には何名くらい「トップセールス」と呼ばれるような販売員がいらっしゃいますか??
ブランドによって異なりますが、弊社の販売員の約10%がトップセールスです。年間売上でいうと約6~8千万円、店舗売上の30%を超えることのできる販売員をトップセールスと位置づけています。
―どんな販売員も、入社当初は「なかなか売上がとれない…」と悩まれると思います。やはりトップセールスと呼ばれるような方たちは、入社後すぐに売上を作ることができるのでしょうか?
さすがに、入社後すぐに売れる方は稀ですね。現在のトップセールスとして活躍している販売員も、実際それ相応の売上が作れるようになるまで5~10年位の年月を費やす場合が多いです。弊社のようなラグジュアリーブランドは、顧客を中心としたビジネスであることもあり、いくら個人が売る力を持っていたとしても長期的に大きな売上を立て続けることは難しく、時間をかけて顧客をつくることが非常に大切です。販売員は、顧客との長年の関係性の中で育てられていく部分が大いにあると考えています。
普通の販売員と「トップセールス」と呼ばれる販売員は何が違う?
―5年、10年在籍している方でも、トップセールスの方のように売上が作れない場合もあると思うのですが、そういった方とトップセールスの違いはどこにあるのでしょう?
一言で表現をするのは難しいのですが、トップセールスは売上を作るための考えがしっかりしてると感じます。これはセンスとも言えるのかもしれませんが、売上を作るためのフローを自分なりに組み立てて、準備し、それを実行する能力を持っています。例えば「今月はフリーのお客様で雑貨を売上の◯◯円、顧客様にRTWで◯◯円、外商へのアプローチで◯◯円」といったように、個人レベルで緻密な計画を立て、実行に移し達成する。数字に対する意欲が他のスタッフよりも強いですね。
―数字に対する意識のほかには、売上を上げるスキルとして必要なことはありますか?
トップセールス個人で共通しているスキルを見出すことは難しいのですが、商品知識、カスタマーサービスなど、接客に関する知識ベースがしっかりしていることは間違いありません。全員が持っているわけではありませんが、近年はインバウンド需要が高いので英語、中国語などの語学力があることや、RTWのフィッティングやリペアの技術を持っていることなど、高いレベルの接客にプラスアルファできる何らかのスキルを持っていることも、売上を上げることにつながっているのだと感じます。
―トップセールスが努力していることは何でしょうか?
お客様に快適なショッピングを楽しんで頂けるよう、有益な情報収集は日々行っているようですね。それは社会情勢からレストランやお客様の趣味まで、多岐にわたります。商品に関する知識は会社からトレーニングを受けるので提供できて当然ですが、商品以外の会話を楽しんでもらうことが信頼関係の構築に繋がるのではないでしょうか。
通常の販売員はDMやメールでコミュニケーションをとることが多いですが、トップセールスはお客様と友人関係のように電話で会話できる人が多いと思います。これはお客様との信頼関係が構築できている証ですよね。
販売員不足と言われる今、優秀な「販売員=トップセールス」は引く手あまた
―最後に企業にとって「販売員=トップセールス」とはなんでしょうか?
トップセールスは、私たちにとって欠かせない存在であり、会社の大切な財産です。私たちオフィスのスタッフがいくら頑張っても、販売員が居なければ店舗で売上を作ることはできません。優秀な販売員には年齢関係なく、長年働いて欲しいと考えています。実際に弊社では定年後でも双方合意の上で雇用延長をして、働き続けてもらっているスタッフもいます。
特に近年、販売職の人材が不足しているという状況もあり、優秀な販売員はまさに引く手あまた。今までは販売職というと、年収が低い、休みが少ないなどというマイナスイメージもあったかと思いますが、待遇の見直しを行っている企業が増えているようですし、実際に弊社でもトップセールスの販売スタッフはオフィススタッフのディレクターレベルの待遇を得ているスタッフもいます。
もしかすると、ファッション・アパレル業界では、長期的に雇用が確約されるのは、トップセールスの方たちかもしれないですね。現在、販売職として活躍されている方々にも、将来的にはトップセールスを目指す販売員が増えてほしいなと思います。
―ブランドの第一線で活躍する優秀な販売員を目指す人が今後も増えると良いですね。本日はありがとうございました!
(Interview&Text : Fashion HR)