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キャリアの扉は自分からノックした人に開かれる。ユナイテッドアローズ執行役員・山崎万里子さん登壇「装談・第10回」レポート

ファッションに関するさまざまな事柄を学ぶ場を企画するFashion Studiesが主催する、ファッション業界のキーパーソンがキャリアの軌跡についてじっくり語るトークイベント「装談」。シリーズは早くも10回目を迎え、2015年5月17日(日)には、ユナイテッドアローズにおいて女性初の、さらに最年少で執行役員に就任した山崎万里子さんを招き、「装談 第10回」が開催されました。当日の模様をレポートします。

キャリアの扉は自分からノックした人に開かれる。ユナイテッドアローズ執行役員・山崎万里子さん登壇「装談・第10回」レポート

1993年、学生アルバイトとしてユナイテッドアローズに参画した山崎さんは、販売促進部からキャリアをスタート。経験を積み、広報宣伝部にて第一線で活躍していたさなか、マネジメントへの転向という大きな転機を迎えます。現在は執行役員として経営戦略を担う山崎さんのユナイテッドアローズでの約20年、女性の働き方やキャリアップについての考え、今後の展望などについて、お話を伺ってきました。

司会:山崎さんは大学生の時、アルバイトとしてユナイテッドアローズに参画されたんですよね。

山崎さん(以下、敬称略):私は高校生まで福岡にいて、当時からファッションが大好きでした。1989年に創業したユナイテッドアローズは、91年に福岡に初の地方店を出店したのですが、初めてそのお店に行った時にすごく衝撃を受けたんです。働いているスタッフがかっこよくて親切で、お店の作りも私が知っていた洋服屋さんとは全然違っていて、商品と空間と人の力から放たれるパワーを受け取り、漠然と将来は私もこういうところに行きたいと思いましたね。ファッションの世界に触れたくて東京の大学に進学し、ユナイテッドアローズ原宿店に足しげく通っていたある日、レジでアルバイトを募集していることを知り、その場でスタッフに「ぜひやらせてください」と声をかけました。それが93年のことです。

キャリアの扉は自分からノックした人に開かれる。ユナイテッドアローズ執行役員・山崎万里子さん登壇「装談・第10回」レポート

司会:アルバイトとしてはどんな仕事をしていたのですか?

山崎:配属されたのはマーケティングの部署だったのですが、まだ会社の規模も小さかったので、実際には何でも屋でしたね。お茶を出したり、お店を手伝ったりもしながら、自分から探して取り組んでいた仕事は、たとえばFedexとの法人契約や、顧客管理のデータベースの作成です。特殊能力を持って集まってきた創業メンバーたちはクリエイティビティには長けていたものの、業務を効率化するのは不得意だったので(笑)、みんなが力技でやっていることをいかに簡単にするか、というのを提案させてもらっていました。

司会:創業メンバーといえば、著書『仕事の不安を一つひとつツブしていくやり方』にも上司として登場する、現・上級顧問の栗野宏文さんは山崎さんにとってどんな存在でしたか?

山崎:栗野さんは私を採用してくれた創業メンバーの一人で、彼がマーケティングの部署にいたので私もそこの所属になったんです。会社が大きくなるにつれて業務の内容や領域は変わっていきましたが、10年くらいは上司・部下の関係でした。栗野さんのすごいところは、絶対に威張らないんです。相手が40歳でも20歳でも変わらずに接するのと、それから家庭をすごく大事にされていて、夜の飲みにはまず行かない。基本的にはさっと仕事を切り上げて、お家で家族と過ごすんです。私が初めて管理職になった時、いろいろな人が声をかけてくれましたが、栗野さんから、「僕があなたにしてあげられなかったことの全てを、あなたは部下にしてあげて」と言われたのをはっきり覚えています。仕事ができるだけではなく、いいボス、いい人間にならなくてはいけない、というのを教えてもらった気がします。

一流のプレイヤーから一流のマネージャーへ

司会:栗野さん同様、山崎さんご自身も重要なプレイヤーになっていくわけですが、その後大きな転機が訪れましたよね。

山崎:はい。私は30歳くらいまではブランディング・PRの領域での一流プレイヤーを目指して一所懸命でしたが、ある時、一流のプレイヤーになることを諦め、マネージャーになろうと決意しました。きっかけは、部下の中に将来は私を超えるであろうプレイヤーが現れたこと。彼らは販売など他の部署から移ってきた若手にもかかわらず、私の10年間の知見やノウハウを吹き飛ばすくらいの力を持っていると感じて。エースの4番に固執するより、自分がもっと成長するために次のステージに行くべきではないかと思い始めました。そこで自分にできることは何かと考えた時、スケジュールを作ったり、バジェットを組んだり、全体を見ながら物事を組み立てていくのが得意だったので、部署のマネジメントをしていくことにしました。それまでは私がいちばん面白い仕事をしていたのに、すべてを後輩に譲ってお金の管理をするなんて、最初は面白くはなかったです(笑)。慣れない部下たちは当然ミスもしますし、そのたびにイライラしていたのですが、ここは堪えどころだと思って、自分が出ていかないよう心がけました。そのうちに彼らも経験を積み、チャンスに感謝してくれることに手応えを感じ始め、マネジメントの仕事への成功体験を積み上げられるようになりました。キャリアの扉って、向こうから手招きしてくれるわけではなく、いったん自分をゼロにしてノックした人だけに開かれるもののような気がします。

司会:山崎さんは自分を客観的に見られていた、ということですよね。

山崎:そうかもしれませんね。一流のプレイヤー、それから一流のマネジメントに求められる能力って、実は全然違うんです。プレイヤーはベストエフォートを尽くすというか、とにかく一所懸命であることだと思っているのですが、マネジメントの場合は、複雑化した状況をシンプルにすることや、ピンチの時もチャンスの時も平常心を保ってコンスタントに結果を出すことなんです。また、マネジメントのレベルが上がるほどに、専門知識ではなく全体を知ることが重要になってきます。私は人事、財務、物流に関することは何も知らなかったので、2年ほどビジネススクールにも通ってアカウンティング、コーポレートファイナンスと戦略の勉強をしました。マネージャーには得意分野を磨くことより、苦手分野を克服することが必要なんです。

キャリアの扉は自分からノックした人に開かれる。ユナイテッドアローズ執行役員・山崎万里子さん登壇「装談・第10回」レポート

女性のキャリアアップに必要な3つの条件

司会:ここからは皆さんの質問にもお答えいただけたらと思います。まず、「組織の中で女性が活躍するために必要なこととは?」

山崎:女性が活躍するための条件は3つあると思っていて、一つめは、女性の意識を変えることです。女性は自分に自信がなくていつも不安を抱えているので、まずは意識をタフにしていくことが必要です。あとの二つは、実は本人ではなく男性や周囲の意識を変えること。私は会社で「あなたに続く人を育てなさい」とずっと言われてきたので、男性のマネージャーに女性社員を推薦する機会があるのですが、残念ながらいちばん多い回答は、「彼女は責任のある仕事をしたいと思ってないと思うよ」なんです。女性が責任ある仕事をしたいと思っていない、という思い込みを変えることがとても大事なのと、残りの一つは任命です。どんなに勉強してもマネジメントの仕事って身に付かないんですよ。やってみない限り。だから小さくてもチームを任せて、いちばん責任ある立場として部下から文句を言われたり、味方がゼロになっても業務を遂行するという経験を積ませない限り、絶対に成長できません。

司会:次に、「どうしたら働く女性全体の底上げをすることができるのでしょうか?」

山崎:正直に言って、女性がもっと仕事を頑張って全体力を上げていくために必要なのは、男性が家事をシェアすることだと思います。やはり女性が仕事を続けられない理由って、ほとんどは家庭の事情が理由なんです。男性たちが女性に頑張ってもらうために自分がやらなければいけないことを考え、働き方を変えることも大切ですね。

「人生イコール仕事」からさらに次のステップへ

司会:続いては、「ワークライフバランスをキープしながら、成功することは可能だと思われますか?」

山崎:全然できると思いますよ。できなかったら、日本の社会はマズいのではないでしょうか。私は良くも悪くも「人生イコール仕事」で働いてきて、今もそういう部分はあるのですが、誰かが自分の人生を紐解いた時に、仕事しか残らない人生は悲しいと思うんですよね。私が栗野さんから学んだのも、仕事ができるだけではなく素敵な人になろう、ということなので。ただ、自分の適性を見極めたり、ファッション業界だけでなくどこでも通用する人材になるためにも、若い時にがむしゃらに働くことは大事だと思います。

司会:最後に、山崎さんの夢を教えてください。

山崎:実は8月に子供を産むので、これから仕事を中断するんです。その後についてはまったく読めませんが、やはり次のステージに行くためには、一度すべて手放さなければ、と思っていて。子供を持つ女性は仕事か子育てか、という選択を迫られますが、私は子供を持つことが仕事に、逆に仕事が家庭や子供にプラスに影響するような循環を作ろうと思っています。一定期間休んだ後はもちろん仕事に戻るつもりなので、これまでとまったく同じ働き方はできないとしても、そういった自分を見せることで同じ業界で働く女性に、仕事と家庭は二者択一ではない、子供を産むことはキャリアを諦めることではない、と感じてもらえたらいいですね。それがこの1、2年で私がやりたいことであり、使命だとも思っています。

キャリアの扉は自分からノックした人に開かれる。ユナイテッドアローズ執行役員・山崎万里子さん登壇「装談・第10回」レポート

ユナイテッドアローズという大きな組織において、いくつものチームを率いながら、今も日々挑戦を続ける山崎さん。彼女が自らのキャリアや女性の働き方について語る一つ一つの言葉には、やはり強い説得力がありました。また、一人のキャリアウーマンとして努力してきたことや、どんな思いで仕事をしてきたかをオープンにすることで、ファッション業界を刺激し、変えていこうとする情熱も感じられました。「ワークライフバランスを取りながら成功することはできる」と断言する彼女の言葉に、励まされる人もきっとたくさんいることでしょう。産休・育休後にはスーパーママとしてさらなるパワーアップを遂げるであろう山崎さんのご活躍に、今後も注目していきたいですね。

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