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これからはリアルとECのコラボが不可欠に! 「これからのEC×ファッションを考える」イベントレポート【後編】

ファッション業界で働く楽しさや、自己実現の可能性を再認識してもらいたいというコンセプトで開催されている、クリーデンス主催のイベント「Fashion People+LIVE」の第6弾。マガシークベイクルーズの各取締役が登壇し「これからのEC×ファッションを考える」と題したトークイベントが2015年3月25日(水)に開催されました。前回に続き、イベントレポートの後編をお届けします。(前編はこちら

これからはリアルとECのコラボが不可欠に! 「これからのEC×ファッションを考える」イベントレポート【後編】

顧客の視点に立ったサービスを提供するために、思い切った施策で成長を続ける株式会社ベイクルーズの取締役ICT統括 村田昭彦さんに、「EC×ファッション」の今、そして未来について、お話を伺いました。

司会:第2部では、株式会社ベイクルーズの取締役ICT統括 村田昭彦さんにお話を伺います。それではまず最初に、ベイクルーズの事業内容をご紹介いただけますでしょうか。

村田(以下敬称略):こんばんは。ベイクルーズの村田です。弊社はファッションを中心に、飲食、家具・インテリア、フィットネスと4つの事業ドメインを展開しています。主力のアパレルは、だいたい30くらいのマルチな世界観を持つブランドがあります。飲食については、パリのゴントランシェリエであったり、パリで一番おいしいと言われているクチュームというコーヒーであったり、ブルックリンのゴリラカフェのコーヒーなども取り扱っています。売上に関しては、2011年からの直近2年で見ると、EC全体では58億から120億とだいたい2倍に、自社ECについては、14億から42億と約3倍になっています。今年は160億から170億の辺りで着地するというような状態です。

司会:ありがとうございます。本題に入る前に村田さんのご経歴を簡単に教えていただけますか。

村田:ベイクルーズに入社したのは2007年です。元々はオンワード樫山というアパレルにいまして、99年にインターネットにかかわる仕事がしたいとサイバーエージェントグループに入社し、ネットプライスという企業の立ち上げにかかわりました。その後は、女性向けのメディアを運営するカフェグローブというネットベンチャーで7、8年経験をしたのち、2007年に再びアパレル業界に戻ってきました。

司会:ありがとうございます。先ほど、お話をいただいたようにベイクルーズのECの売り上げは順調に伸びているという印象を受けるのですが、どのような施策を行っているのでしょうか。

村田:実は、社内では伸びているというより、本来は取れるマーケットのシェアが取れていないよね、という認識があります。行った施策のひとつめは、組織変革です。グループとしては7つの会社に分かれていて、それぞれのベクトルを合わせるのはとても難しく感じていました。そこで、3年前にすべてのデジタル、ECにかかわる人は1つの部門に集結して、横断的に業務を行うことができる、また、そこに意思決定権を持たせることで、2年で売り上げが伸びました
2点目としては、お客様の視点で何をすべきかということに優先順位をつけて解決してきました。最適な品揃えをできていなかったという問題がありましたので、社内のルールを変えて商品供給体制を見直しました

司会:ECをやることについて、店舗からの反発はありませんでしたか?

村田:店舗は「ネットで買うことが普通」な若い担当者が多いので、そんなに反発はありませんでした。社内では一部「ネットをやると実店舗の売り上げが下がる」というような意見もありました。実際、一部のブランドではECをやることで実店舗の売り上げが減ったところもありましたが、そこは「グロスで伸ばしていくべきですよね、店舗とEコマースのシェアが0:10であろうが、10:0であろうがどちらでもよくて、あらゆるチャネルを使ってお客様に価値を提供していくことが大事ですよね」ということをしっかり伝えていくことで、その辺りの理解は進んできているのかなという感じがします。

これからはリアルとECのコラボが不可欠に! 「これからのEC×ファッションを考える」イベントレポート【後編】

司会:先ほど伺った「顧客視点に立った改善」については、具体的にどのように進めていらっしゃいますか。

村田:欠品でお客様が欲しい時に欲しいものを届けることができない、機会損失ができるだけ起こらないよう、在庫は一元化してデータ統合していくために自社でシステムを開発しています。あと細かい運用面の話になりますが、例えば、5つのモールを出店していたら、5つの管理画面を開いて、同じ内容を登録して行かなければならなかった作業を、データ連携で1つの管理画面に入れた情報が他のモールにも反映されるようにするなどして作業の効率化をはかりましたそれによって、スタッフのリソースをお客様へのサービスに振り向けるようにしています

―ECか実店舗かにかぎらず、あらゆるチャネルを使ってお客様に価値を提供し、売り上げを増やしていくためには、お客様に欲しい時に欲しいものを届けることが最優先。そのために、在庫などをデータで管理すること、また、各ブランドサイトの担当者の作業を効率化して、空いたリソースをお客様へのサービスに向けるようにしていくことが、結果として、よい結果を生み出しているというのが印象的でした。(編集部)

店舗とECをクロスユースしてもらうための成長戦略

司会:自社ECサイトのスタイルクルーズでは、どんな成長戦略を立てていらっしゃったのでしょうか。

村田:商品供給を見なおしたことと、店舗とECをいかにクロスユースしてもらうかを考えてやってきました。どこもやっていることだとは思うのですが、例えば、ポイントを共通化していく、店頭在庫を表示する機能をつけるなどをしてきました。

司会:スマホに特化して対応されたことはありますか。

村田:現在、スタイルクルーズでのスマホユーザー率は、アクセスベースで7割、売り上げベースで6割強くらいです。スマホからのアクセスが5%を超えたところで、スマホ対応をしようと決めていたので、比較的早めに取り組んでいました。ただ当時は作れる制作会社が少なくコスト高だったので、徐々に進めてきたという状況です。ECサイトのアプリは以前作ったままなので、現在、新しいアプリを開発しているところです。スマホが中心になっていった場合、Webビューベースでやっていくのか、フルネイティブ(※WEBに接続せずサーバーと通信が発生しない、アプリ内に配置された要素を活用するタイプ)のアプリがいいのか、正直わからないので、両方を検討し、対応していきたいです。

司会:サイトへの集客の施策で注力されていることはありますか。また、SNSの利用などはいかがでしょうか。

村田:そうですね。一般的な施策が多いのですが、直近ですと「Tableau(タブロー)」というDMP(データマネージメントプラットフォーム)ツールを使っての集客や売り上げ貢献が高いと考えています。DMPを使った施策としては、売り上げの3割くらいを占めるメールマーケティングです。SNSに関しては、お客様との接点が多様化しているので、多様なチャネルに情報を流していく必要があります。FacebookやTwitter、Instagramなどを活用しながら、手間と手数を増やすという感じですね社内には、他の仕事と兼務ですが1、2名がSNSを担当しています

自社ECサイトを運営するにあたって、いち早くスマホ対応を行ったというベイクルーズ。また、データマネージメントプラットフォームを導入したり、自社でアプリを開発したりとお客様の多様化する接点に対応すべく、時代に合わせて、手間と手数を増やしているのだそうです。その中でも現在のところ、メールマーケティングが成功のカギを握っているんですね(編集部)

自社ECはコミュニケーションのハブとなる

司会:これからのEC×ファッションの未来ということで、これからベイクルーズのEC部門をどのように成長させていきたいとお考えですか。

村田:弊社のECに関しては「お客様のファッションライフをより身近なものにしていく」というのを目的にしていて、ネットプロモータースコア、簡単に言うと「このサービスを友人などに勧める可能性がありますか」というような簡単なアンケートを指標にしています。お客様のファッションライフをより身近にするという価値を提供できているのかというのを、その指標を使って判断しているので、目的に向かってより体験価値を高めていくことに注力していきたいなと思っています。その流れの中で、生活者の消費行動の変化に企業側がついていっていないという認識、危機感を持っているので、できて当たり前のことをやっていかなくてはいけないと考えています

2点目は、お客様とブランド、お客様と企業を繋ぐために、自社ECはコミュニケーションのハブとなる重要なチャネルだと思っています。今後、ビッグデータの活用を含めて、自社EC自体をマーケティングのプラットフォームにしていくために、現場の意見を取り入れながら、会員や商品のデータを統合していくなどインフラを整えていきたいと考えています。並行して、半年ごとにお客様にアンケートやニーズの聞き取りをしているので、顕在化されたニーズに関しては、先行して対応していきたいと思っています。

司会:「自社ECはコミュニケーションのハブとなる」という部分について、もう少し具体的にお話いただけますか。

村田:コミュニケーションのハブがスマホになっていきますので、接点をしっかり作っていかなくちゃいけないということです。それと、お客様が今どんなことをしていてどんなニーズがあるか、という行動ログが取れるようになるので、そのデータを使って、お客様一人ひとりの文脈に合ったマーケティングをしていく必要がある。そうするとWebや自社ECがマーケティングの中核になり、広報、マーケティング、雑誌の広告などでも、そこから得られたデータからお客様との関係を深めていくという行動に移っていかなくてはいけないと考えています。

司会:なるほど。これから注目していらっしゃるWebサービスやこういうことやれたらいいなという野望はありますか。

村田:たくさんあるのですが、普通のECではなく新しいビジネスモデルにチャレンジしていきたいですね。個人的に注目しているのは、シェアリングエコノミー関連ですね。わかりやすいところでいうと、アプリでハイヤーを配車できるサービス「Uber」のような、スマホ×リアルのようなもの。弊社としてはファッション以外の業態もあるので、色々なビジネスモデルの可能性があるのかなと思っています。

デジタルネイティブ世代、インターネットがあって当たり前の世代の人たちが、これからのEC×ファッションを作っていく

司会:村田さんのご経歴は、アパレルの会社に入って、その後、ITの会社に入って、またアパレルに戻ってきたということですが、ファッション×ECの仕事をする面白みを感じていらっしゃるところがあれば、教えてください。

村田:個人的には、ファッションの世界にはイノベーションがないということを、ファッションから離れてITにいるときに感じていたんです。ところが、ECの場合、ファッション×IT、ファッション×デジタルとなると一挙にファッションにイノベーションを起こせる可能性があるというのが最大の面白味かなと思います。新しいものを生み出すことができる、自分たちの出番がまさに今あるという楽しさはあると思います。

20代や30代のデジタルネイティブの方、インターネットがあって当たり前の世代の人たちが、これからのEC×ファッションを作っていくと考えています。そういった方の参画を待っているし、新しいビジネスを興していくと思っていますので、関心のある方は、是非、門をたたいていただきたいなと思います。

司会:お話を伺っていても、村田さんもデジタルネイティブと言われる世代に負けないくらいの情報や視点をお持ちだと思うのですが、どのように情報収集されているのでしょうか。

村田:村田:そうですね。80年代のパソコン通信の頃から使ったりはしていましたが、就職活動などもインターネットでという時代ではないですし、インターネットを活用したのは社会人になってからという感じなので、(デジタルネイティブ世代とは)やはり違いますよね。でも、お客様への理解を深めるために、色々なアプリをダウンロードするだとか、海外の新しいサービスが出たら使ってみるだとか、誰も知らないサービスを見つけるなどはやっています。

司会:なるほど。貴重なお話ありがとうございました!

―ファッション×IT、ファッション×デジタルはイノベーションを起こす可能性が広がる。そのために、行動分析によって得られたデータを基に広報やマーケティングなどを行い、お客様との関係を深めていくことが大切とのこと。また、村田さんご自身は「スマホ×リアル」に注目されているそうで、ベイクルーズはファッション以外の業態もあり、色々なビジネスモデルの可能性も考えられるということで今後が楽しみですね。(編集部)

今回は、「マガシーク」と「スタイルクルーズ」という「ファッション×EC」の最先端に携わるお二人のお話を前編、後編に分けて、お届けしました。

ファッション業界におけるECの未来。それは、リアルの世界でお客様と対話するのと同じように、WEB上でもお客様の動向や趣味嗜好、現在の希望などをキャッチすることに注力することが重要であり、また、現場にお客様のために積極的に提案をすることができるような人材を割けるかどうかが売り上げにも繋がってくるということでした。

さて、それぞれのサイトが、そして、これからのファッション業界のECはどのように変化をしていくのでしょうか。

 

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